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石に夜中、花が咲いた

―学校 朝―

(まさか……)


 真っ黒なライオンが、街で暴れるなど普通ありえない。そもそも、真っ黒なライオンなどこの世に存在するはずもない。普通のライオンだって、こんな所にはいない。いたとしても、動物園とかいう場所に数頭だ。

 しかし、現実として真っ黒なライオンが街で暴れるという事件が起こった。僕が否定した全ての非現実が、夜中の街にあったのだ。


「どうして夜中だったんだろう~? 俺、ぐっすり眠ってたよ~! ショックだなぁ」

「そ、その……ライオンはどうなったの?」

「それが、突然姿を消してしまったらしいんだよ~。でも、暴れた痕跡はちゃんと残ってた! 家が崩れたりしてたから」

「つまり……そのライオンは捕まっていないってことだね?」

「うん! 怖いねぇ、スリリングだよね! ワクワクするね」


 リアムは目を輝かせる。怖いという言葉の意味を分かって使ってるのだろうか。リアムの顔からは、怖いという感情は一切伝わってこない。


「ワクワクするって……正気?」

「正気も正気、超正気だよ! 恐怖とワクワクは、紙一重だから。どちらかが出てくれば、それと一緒についてくる! その感情を俺は是非味わいたい!」

「は、はぁ……」

「そ・こ・で! タミ!」

「え? 何?」


 何となく嫌な予感がして、僕は身構える。


「俺と一緒に、そのライオンが現れたっていう所に行かないかい!? 授業終わりにさ!」

「はぁ!?」


 彼は一体、何を言っているのだろう。そんな物騒なことが起こった場所には、本来近付くべきではないだろう。というか、入ることが出来ないようにされているかもしれないし。


「いいよね? 行こう!」

「駄目だよ! そんな……何かが起こったような場所に行ったら……」


 すると、リアムは突然立ち上がった。


「タミ! 君は好奇心というものはないのかい!? 自分の知らない所で、とても興味深い出来事が起こっているんだよ!? そんなことがあって許されると思うのかい? 自分の目で確かめたいとは思わないのかい!? 君が生きているこの国で、夢のような出来事が起こっているというのにそれを何事もなかったかのようにスルー出来るというのかい!? ありえない!」


 身振り手振りを交えながら大きな声で、力の入った演説をするかのようにリアムは言った。それによって教室中の注目が、僕らに集まる。


「俺は友達である君と、是非その場所に行ってそのワクワクを共有したい! したいんだ!」

「で、でも……今日は僕授業は午後まであるし。その後バイトの予定が……」

「じゃあ、バイト終わりだ! うん、そうしよう! 俺はいつまでも待つよ!」

「よ、夜中だよ? ぐっすり眠る時間じゃないの?」

「今日は遅寝する! うん! そうする!」


 結局、僕は彼の熱意に負けてしまった。嫌な時は、嫌だとはっきり言える大人にならなくてはいけないと思った瞬間だった。

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