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終話

 数日後──


 リゼットは『赤星の剣』のギルド長室に呼び出されていた。


「つーわけでぇ、一連の騒動はおしまいだなぁ。……なんていうか、本当に巻き込まれただけだよなお前ぇ……」


 同情的なサミュエルの視線を受けて、彼は大きなため息をつく。巻き込まれたくて巻き込まれたわけではないのだから、同情を受けるのはなんかモヤモヤするのだ。

 それに、結局騒ぎの中心にいながらすべてが蚊帳の外。気がつけば始まり、気がつけば終わっていた感じである。


 リゼットからすれば、これほど不幸な出来事はないだろう。結局のところ、自分は足手まといにしかならない。


「それでぇ──」


 そんなリゼットの心内を見透かしたのか見透かしていないのか、サミュエルは話を切り替える。


「『赤星の剣』にはいる決心はついたかぁ?」

「どこからどうなってそうなったんですか!?」


 さすがの急展開に、リゼットもびっくりである。


「大体、僕は何の役にも立たない人間ですよ!?」

「そう思ってるのは、お前だけだがなぁ……。むしろ、『赤星の剣』に入れまであるぅ」

「命令系!?」


 胡散臭い笑顔を見せるサミュエルから視線をそらす。部屋の端にいるローセントに助けを求めるが──


「ジュリアが消えたことで欠員が出ました。僕としても入って貰えるとありがたいですね」


 彼は懐中時計の蓋を閉めながらそういった。

 

 そう言われると、何も言い返せなくなる。この騒動がなければ、ジュリアはそのままだった。そして、よくよくあとを辿れば、自分のせいでジュリアは生まれた。

 ルベリアとジュリアが元々一人の人間だったことは、自分も覚えていなかった衝撃の事実だ。しかし、今思い起こしてみれば、小さい頃はルベリアのことをルージュベリアと呼んでいた。


 記憶の混濁は呪術の暴走によって引き起こされたもの。そう説明されたが、納得できるものではない。

 事実、今の人間たちも呪術の全容を把握しているのかと言われればそうではないのだ。


「……本当に僕なんかでいいんですか?」

「いつ爆発するか分からない爆弾を放っておくよりかは手元で管理しておくほうが有用です。それに、今回の事件はあなたが特別過ぎるから起きたようなものです」

 

 例え、その始まりが不慮の事故であっても。ローセントはそう付け加えた。

 彼曰く、今回の事件でリゼットの力を本格的に認めたらしい。しかし、いくら言われてもリゼットにはピンと来ない。


 やはりルベリア──ルージュベリアの言う通り、自分は役立たずだと──


 響き渡ったのは、ドアが勢いよく開く音だった。部屋中にいる人間たちの注目が、その人に集まる。

 開けたのはルージュベリアだ。彼女の表情は怒りに染まっている。


「ちょっと、ちょっとちょっと! 後処理の聞き取りだけするって言うから、面談を認めたのになんで勝手に引き抜こうとしてるの!? 常識ないの!? 常識ないのね!?」


 ルージュベリアの声は以前よりも大きくなっていた。まるで感情をそのまま言葉に乗せているかのようだ。

 彼女は大股でサミュエルに近づくと、彼の執務机を思いっきり手で打った。


「喧嘩なら買うけど!? 今すぐ買うけど!?」

「まぁまぁ落ち着けよぉ。もちろん、ルージュベリアも一緒にこのギルドに入れてやるよぉ」

「そんな上から目線の要求、こっちからお断りよ! お断りだから!」


 彼女はプイッと顔を背けると、そのままリゼットの隣にやってくる。

 そして、改めてサミュエルを見据えて彼に向かって指を差した。


「私とリゼットは、このギルドにも負けないくらい強くなるんだから、覚悟しておいて! 覚悟しておいてね!」


 その彼女の宣言に、リゼットは愕然とする。一方、壁にもたれていたローセントがククッと笑った気がした。


「ちょ、ちょっと何言ってんのルージュベリア!」

「これで、私たちは一歩も引けないから。引けなくなったから」

「そこに僕の意思は介在してるのか!?」


 声を荒げるリゼットに対して、ルージュベリアは満面の笑みを見せた。

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