第十一話 登場
僕が阿黒賢一と出会ったのは今から1ヶ月前のノワールであった。
僕はその日朝から書類仕事におわれていた。
「はぁ、」
机の上に置いてある書類をみるとため息がでてしまう。
何故僕がこのような状況に置かれているのかと言うと、前回と前々回のフルランクでのゲームでたった5パーセントのレベル1を二回連続で行ってしまったためゲームを見ている観客から苦情が相次いでしまった。しかも二回連続でレベル1のゲームを行う確率なんてたったの0.25%、僕が課長になって初めておこることであった。
そもそもフルランクのゲームもだが、全てのゲームのレベルは完全なランダムで決まっている。苦情をいれられても困る。
それらの苦情の対処や上への報告書やらなんやらでこんな状況になっている。
まぁ、文句を言っても現状は変わらない。黙々と作業をするしか道はない。
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あれから何時間が経ったのだろうか、全ての書類仕事が終わった頃には外は暗闇にのまれつつまれていた。
「もうこんな時間か。」
腕時計が示している時刻は19時30分であった。僕はこの後少しの休憩を挟んだのち、ノワールに顔を出さなければならない。
何故って、それはヴレ・ノワールで戦えるギャンブラーを探し出すためさ。なんで課長がそんなことをやっているのかって、それは僕の趣味だからだよ。無理言ってやらしてもらっているんだ。
唐突だが、ここでノワールについて説明をさせてもらう。ノワールはある程度のお金があれば誰でも入れる裏カジノであり、ノワール内には3つのエリアが存在している。1つ目のエリアはノーマルエリア、ここでは一般的なギャンブル、ポーカーとかルーレットとかを行う。2つ目のエリアはオリジナルエリア、ここでは名前の通りノワールオリジナルのゲームでギャンブルしてもらう。最後に3つ目のエリア、その名もクリエイティブエリア、ここは特殊で、まぁ、オリジナルエリアも特殊だったが、それよりも特殊なエリアで、このエリアの壁際にはトランプやらなんやらのギャンブルに使えそうな道具がびっしりと並んでいる。さらに、数台のテーブルが設置してあり、テーブル一台につき一人の担当がついている。このエリアにはゲームのルールが存在せず、ここでギャンブルする二人がルールを作って合意のもとギャンブルが行われる。ギャンブルで負けた人が合意を無視してお金を払わない可能性があるため担当が設置されているんだ。
僕が阿黒賢一と出会ったのはノワールのクリエイティブエリアだった。
僕はいつも通り会社とノワールを繋いでいる裏口からノワールに入った。
その日のノワールはとても賑わっていて僕はいつものようにノーマルエリア、オリジナルエリア、クリエイティブエリアの順で見て回ることにした。
残念なことにノーマルエリアとオリジナルエリアではヴレ・ノワールで戦えそうなギャンブラーは誰一人としていなかった。僕は今日もダメかと落胆しながらも最後のエリアであるクリエイティブエリアに足を運んだんだけど、そのクリエイティブエリアの一角に人だかりができていて、異様に盛り上がっていたんだ。
これは期待できると思った僕はその盛り上がりの正体を目にするために人という人をかき分けながら進むと盛り上がりの中央にいる一人の男金髪長髪でメガネをした男に出会った。
え?この男が阿黒賢一じゃなかったのかって、違う違う。この男の名は獅子川宗隆。阿黒賢一とは別人だよ。
なんでクリエイティブエリアがこんな盛り上がっていたのか周りにいる人達に聞いたら、その獅子川宗隆とかいう男が今日だけでこのクリエイティブエリアで20連勝してるって言われたんんだよ。普通はありえないことで、相当な実力があるか、それともイカサマか、イカサマであったとしても20人全員に気づかせないほど高度なイカサマをつかうことが出来る可能性が大いにあったから、僕は獅子川宗隆をヴレ・ノワールに誘おうかどうするか考えていた。
僕が彼をヴレ・ノワールに誘おうか迷っている時に後ろから一人の黒髪、黒スーツ、赤目の男がやってきて、獅子塚宗隆に向かって言葉をはなったんだ。
「君、とても強そうだね。俺とギャンブルしない?」
唐突にやってきた見ず知らずの男が20連勝もしている獅子川宗隆にゲームを挑んできたんだ。周りに群がっている人達は目の前で獅子川宗隆の実力の高さを見せつけられていたのか、その男を必死にとめていた。「やめた方がいい。」とか「彼はすごく強いんだ。なんたって10連勝以上しているんだぞ。勝てるわけない。」とかね。
だけど彼は聞く耳を持たずに獅子川宗隆のことをじっと見つめていた。
「1000万だぞ。」
その男に向けて獅子川宗隆が口を開き、言葉をはなった。
「それって現金じゃなくてもいいのかい。」
「あぁ。現金に替えられるならなんでもいいぜ。」
「それならあるよ。」
「そうか、それならうけてやる。ただし、ルールはこっちが決めさせて貰うぜ。なぁに心配するなそっちが不利になるようなルールにはしねぇよ。それでいいか?」
「いいよ。」
獅子川宗隆が黒髪、黒スーツ、赤目の男の勝負にのってきた。周りの人達からは、あんなに止めたのにどうなっても知らねぇぞ。みたいな空気が漂ってくる。
「阿黒賢一。君の名前は?」
阿黒賢一と名乗った黒スーツの男は右手を獅子川宗隆の前まで移動させる。
「獅子川宗隆だ。」
自身の前にだされた手を勢いよく握りながら名前を口にした。
握手が終わると阿黒賢一は獅子川宗隆とテーブルを挟んで座った。
「獅子川さんね。把握した。」
僕はこの時から既に阿黒賢一が普通の人間じゃないことはわかっていたんだ。何故って、それは彼の纏う空気が常人のそれじゃなかったからだよ。
「それで、どんなゲームなのかな。」
「とても簡単なゲームだぜ。その名もフォースだ。」
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