表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

第十話 出会い


「よっしゃー。」


ガッツポーズをした一人の男の雄叫びが静かな空間の中に響き渡る。


「よかったぁ。」


その男が次に口から出したのは雄叫びでは無く安堵の言葉であった。無理もない、自身の担当するギャンブラーがゲームに負けたと思い込み絶望に打ちひしがれていたところ、なんと逆転をしたのだから、いや、正確に言うと逆転では無いのかもしれないが、まぁ、逆転であろう。そのせいなのか川名の心には喜びと安堵という2つの感情が渦巻くこととなり、喜んでは安堵し、安堵しては喜んでを繰り返すことになった。


数分もの間、喜んでは安堵してを繰り返した後、ピコンという音が部屋に響き渡る。


「何だ?」


川名がポケットに入っているスマホを手に取ると、スマホのメールボックスを開く。


スマホに届いてるメールを目にした川名は自身のいる部屋をあとにすることとなった。





「君塚様が続行不可能となりましたので、今回のゲーム、ポイズンアンドホーリーの勝者は阿黒賢一様です。」


静かな空間の中、ゲームマスターである林が高らかに阿黒賢一の勝利を宣言した。


ガシャンという音をたて阿黒賢一を拘束していた拘束具が解かれていく。その後、左腕に繋がっていた管も林によってとりはずされた。


阿黒賢一が自由の身になったその時、後方に存在している大きな扉が音を立てながら開く。


ギィー。


開いた扉の先には白衣のような白い衣装を身にまとった人達が待機しているではないか、そして、扉が完全に開くやいなや阿黒賢一の方に向かって歩みを進めてくる。


「阿黒様こちらにお乗り下さい。」


阿黒賢一の真横に着くなりなんの説明もなく、先程まで持っていたタンカのようなものを広げる。


「医務室まで運びます。」


「よろしく。」


阿黒賢一の体内には致死量に近い毒が溜まっている。そのせいか、タンカのようなものに横たわることすらキツそうであった。


「それでは、運びますね。」


白衣のようなものを身にまとった二人が阿黒賢一が横たわっているタンカのようなものを持ち上げ走り去って行く。


阿黒賢一が医務室に連れて行かれる時と時刻を同じにして、赤のシートがひかれている長い廊下に隣接している扉が一つ音をたてながら開き、そこから黒スーツの川名がでてきた。そして、タンカのようなものに横たわっている阿黒賢一を見るなり、阿黒賢一の方に向かって歩みを進めた。





阿黒賢一が目を覚ますとそこには知らない天井があった。


「阿黒さま。」


唐突に横から名前を呼ばれた阿黒賢一は首を自身のことを呼んだ人の方に向ける。


「川名さんか。」


ベットに横たわっていた阿黒賢一の横には、椅子に座っている川名がいた。


「ヴレ・ノワールでの初めてのゲームはどうでしたか。」


阿黒賢一が無事なことを改めて知った川名は唐突に話し始める。


「とても楽しかったよ。」


ゲームでの出来事を思い出しながら言葉を発した。


「それは良かったです。」


そんな他愛もない話が続く。


「あの仕掛けにはびっくりしましたよ。」


阿黒賢一という同様にポイズンアンドホーリーのことを思い出しながら川名は言葉を口した。


「気付いていなかったのかい。」


川名が気付いていなかったことは知っていたが、あえて反応を示す。


「気づけませんでした。そのせいで滅茶苦茶焦りましたよ。本当、心臓に悪かったです。」


今でもあの時のことを思い出すと心臓がドキドキとする。


「でも、見ていて面白かったでしょ。」


(確かに俺はあの時、絶望したり、喜んだりしていた。確かに俺は楽しんでいた。確かに俺は面白がっていた。確かに俺は、)


「とても面白かったです。」


あのゲームを俺は心の底から楽しんでいた。面白がっていた。


「それは良かった。それで、次のゲームはいつできるかな。」


「それは後日改めてお話させていただきます。」


二人の会話はその後も続いた。しょうもない話から、ヴレ・ノワールに関する話まで。


「それでは、私はこれで、」


一通り話し終わった後、川名が医務室をあとにしようとする。


「もう帰るのかい。」


阿黒賢一が残念そうにした。


「すみません。課長が呼んでいるので、」


そう、あの時のメールは課長からである。


「それは残念。」


「すみません。」


その言葉を最後に川名は医務室をあとにした。





課長室の大きな扉の前に川名はいた。


コンコンコン。


大きな扉を三回ノックすると中から声が帰ってくる。


「入っていいよ。」


川名はその声に従い、大きな扉を開き、そして課長室に足を踏み入れた。


課長室の奥に設置してある机の上には様々な書類が置いてあり、その書類を淡々と処理している男が一人椅子に座っていた。


椅子に座って作業をしている松村課長の前まで移動した川名は早々に口を開く。


「松村課長。用件とはなんでしょうか。」


だいたい予想できるが、一応聞いておく。


「君、ゲームに勝利したじゃん。」


川名はやっぱりその話か、と心の中で呟いた。


「その事を改めて詳しく説明しておこうと思ってね。君はさ、勝利した時のボーナスとして、お金を選んだじゃん。」


そう、俺は最初の説明をうけた時からボーナスにはお金を選ぶと決めていた。なぜなら、お金がこの世の全てであると俺が考えているから、他にも休暇など色々なものがあったが、そんなものよりもお金だ。


「君はクオーターランクで一勝したから、元々の給料にプラスする形としてボーナスが支給されることになるよ。」


その後もボーナスのことについてこと細かく課長から説明された。俺は心の中でこの会社にはそういうことを説明する人がいるのになんでわざわざ課長が説明するのかという疑問がうまれたが、まぁ、俺の知らない理由があるのだろうと思い記憶の片隅にしまった。


一通りの説明が終わったのち、俺は今まで疑問に思っていたことを課長に聞く。


「一つ良いですか。」


「なんでも聞いて良いよ。」


松村課長が許可してくれたので、俺は疑問に思っていたことを聞くことにした。


「阿黒賢一って一体何者なんですか。」


そう俺は阿黒賢一に対して疑問をもっていた。阿黒賢一が対戦し、勝利した相手は君塚渉であった。君塚渉が普通の人間だったのならば良かったが、違う。君塚渉はたったの三ヶ月で四連勝し、更にはその四戦全て君塚渉の思い通りにゲームが進んでいた。この実力はハーフランクにも、いや、ここから更に経験をつめばフルランクにすら匹敵しうるかもしれない。そんな相手に勝利したのだ。ギリギリで勝つのならまだわかるが、阿黒賢一は圧勝したのだ。もう一度言うが、そんな相手に圧勝したのだ。阿黒賢一のことを疑問に思っても何ら不思議ではないだろう。


その疑問を聞いた松村課長はやっぱりその事かと心のなかで思いながらも答える。


「君は彼の担当なので、知っておいて損は無いでしょう。ですが、僕も彼の全ては知りませんよ。」


そして松村課長は語り出した。阿黒賢一と出会った日のことを、そして、阿黒賢一についてを。

読んでいただきありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ