76.魔王城
・前回のあらすじです。
『魔界の化け物たちが、勇者の動向についてはなす』
・・・・・・
山は高く険しかった。
空気は薄く、濁り、気持ちが悪い。
それは不思議な石でできた城の中にも及んでいて、ユノの足は重かった。
城の通路の角から飛び出すふたつの影――魔界で無念の死を遂げた人間の骸を呪術で傀儡にした物の怪、【スケルトン】が襲いかかる。
骨の戦士の、毒をぬった斬撃を大剣ではじき、返す刀でユノは骨の身体を打ち砕いた。
二体分の人骨がバラバラになって地面に落ちる。
黒い魂が揺らめき、ふたたび亡骸に宿った。
ユノは無視して城の上階を目指した。
うしろからガイコツたちの追ってくる音がする。
「ユノさま」
ひゅんっと空間が裂ける。
廊下の暗がりに、それだけ異次元の存在のように浮かぶ白皙の妖精があった。
萌黄色の長髪にスッと背筋の伸びた高い背丈。
目や髪と同じ、緑をベースにしたドレスをまとった美しい女。
「セレンさん」
ユノはセレンと距離を取った。
彼にとってセレンは敵でこそなかったが、かといって油断のできる相手でもない。
「そんな歯こぼれだらけの武器で、魔王に挑むおつもりですか」
セレンは霊樹の杖をかざした。
光が弾け、選定の剣――カルブリヌスが現われる。
暗灰色の床に、オリハルコンの刀身が音もなく突き立った。
※以下の文章を修正しました。
・旧→『光がはじけ、“カルブリヌスの剣”があらわれる。』
・改→『光が弾け、『選定の剣』――カルブリヌスがあらわれる。』