62.まじない
・前回のあらすじです。
『三人が塔の探索をはじめる』
ユノは鞄から更にアイテムを探った。
「ローランとパンドラも……」
「私は平気よ」
ローランは手を横に振った。
パンドラはコホコホ咳き込む。ユノは駆け寄って回復薬を彼女に渡した。
「さっきの敵の呪いが効いちゃったのかな?」
「……人のすがたで無理に歌ったからだわ」
薬を飲んでパンドラは活力を取りもどした。
倒したモンスターの残骸をローランが調べる。
いくつかの魔法の石を手にいれる。
「パンドラ、ちょっと」
少女のところに戻ってローランは拾ったものを差し出した。自分のベルトにさげていた巾着袋をはずし、相手の帯にくくりつける。
「どうしたの?」
「魔族の形質を抑えているあいだは、呪歌は禁止よ。負担が大きすぎる」
ローランは言って巾着からふたつの青い石を出した。それだけをパンドラのポケットに入れさせる。
「私やユノが……万が一倒れたら――このジェムで魔物をしのいで。空の見えるところに行きなさい。そこで青い石を使うこと。【テレポート】が起動して、最寄りの町に飛ばしてくれるわ」
「約束やぶるの? 霊樹の里につれてってくれるんでしょ? そこで妖精に私の擁護を交渉してくれるって」
「反故にするのは趣味じゃないけどさ……」
折っていた膝を伸ばしてローランは立ちあがった。隣りをジトーと見やる。
「ユノがカルブリヌスを遺憾なく振るってくれれば、いくらかやりやすいんだけど」
「痛いトコつくなあ……」
ユノは歯噛みした。
魔物の捌けた通路を、先頭をローラン、パンドラを真ん中にして、殿をユノがつとめて進んでいく。
壁沿いに伝う、瓦解しかけた階段をのぼっていく。