31.橋
・前回のあらすじです。
『ユノが銀色の毛をひろう』
銀の獣毛のあった方角にユノは歩いた。
伸び放題の草を分けてしばらく行くと、川に出る。
近くに橋が架かっている。
(町の人たちが作ったものなんだろうな……)
橋は木造りで、長いあいだ放置されていた為かところどころ腐っていた。
足を置くと、ミシリ……と不安な音が鳴る。
ユノは対岸に進んだ。
渡り切る直前、板張りの足場を踏み抜いて、片足が水につっこむ。
手すりにしがみつき、かたむいた体を引き上げる。
――先を急ぐ。
(……追ってこないよね?)
ユノは橋を渡りきるなり立ち止まった。
元来た道を振り返る。
森に人影は無かった。
獣や魔鳥の鳴く声、蠢く音だけが、生き物の気配だった。
(でも、町長さんたちものすごい剣幕だったし……)
ユノは不安だった。
町の人たちの魔女討伐に対する意気込みは、それほどまでに鬼気迫るものがあった。
(一応……念のため……)
ユノは橋に手を構える。
掌に力を込め、【気術】を放つ。
白い破壊光線が、架け橋を爆砕した。
「……ごめんなさいっ」
炭化した木片が川面に落ちていく。
静かなせせらぎに流されて、橋は影も形も無くなった。
逃げるように、ユノは森の奥に走っていった。