32.小屋
・前回のあらすじです。
『ユノが橋を壊して、町人たちの足止めをする』
・・・・・・
「アイ!」
小屋のドアをユノは開けた。
――小さなダイニング。
奥の寝室に移動する。
飾り気のない家のなかには、誰もいない。
(爆発に巻き込まれちゃったのかな……)
ユノは屋内を見渡した。
アイが逃げていることを祈りながら、なかに踏み込む。
背中を蹴っとばされた。
「ちょっと、勝手に人の家に入らないでよ」
「アイ!」
戸口のまえに、赤い頭巾をかぶった少女が立っていた。
歓喜して、ユノは彼女の手を取る。
「よかった、無事だったんだね!」
「いちおう、ね」
アイはユノの手を叩き落とした。
ジンジンと痛む両手を引っ込めて、ユノが笑った。
アイは大樹のあったほうを向く。
「あんまり穏かにしてはいられないけど。誰かが余計なことをしてくれたせいで、封印が解けちゃった」
「封印……」
「森にかかってた【魔法】。古い土地神の石像がその装置だったけど、壊れたの。きのう、大きな爆発があって……」
ユノはギクリと動きを止めた。
「ごめん……、それ、ボク」
必死になって、ユノは弁論をはじめた。
「モンスターの群れを、退治したかったんだ。でも、あんなに威力があるとは思わなくて……」
「もう少し周辺のこと考えてよね」
アイはユノの胸を小突いた。
小屋を出て、彼女はどこへともなく移動する。
「待ってよアイ」
ユノは少女を追いかけた。
「逃げないと。町の人たちが、魔女を退治しようとしているんだ。町がモンスターに襲われるのはその人のせいだって。その人を殺すのが、信者としての務めだって」
緊張に息をのんで、ユノはつづけた。
「……彼らの言う【魔女】って、キミのことなんでしょう?」
アイは立ち止まった。
二人は小屋の裏手にいた。
丁寧に刈った芝生に、花の植わった場所。
木を組んで作った十字架が、そこにひとつ立っていた。
※いくつかの表現を修正しました。
・旧→『避難したのかな』
・改→『爆発に巻き込まれちゃったのかな……』




