表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転移】をやってみた《1》  作者: とり
 第4話 おおかみ
29/92

28.提案



 ・前回のあらすじです。


 『副隊長のフレデリックが隊長に意見する』





「あのー」

 小さくユノは手をげた。

 町長(ちょうちょう)のアルゴ、副隊長ふくたいちょうのフレデリック、隊長たいちょうのアドニスが、一斉(いっせい)に彼を見る。


「ボクが森のようすを見てきます。それで町の人たちだけで攻略ができそうだったら、町長さんたちの自由じゆうに……無理そうなら、あらためて計画をるっていうのは……」

「なにを悠長(ゆうちょう)な……」


 アルゴの気炎(きえん)はおさまらない――

 が、町長の反論をアドニスがさえぎった。


「それでいこう。――フレデリック、」

 副隊長に向き直り、指示しじす。

「ユノのほかに二名(にめい)ほど見つくろってくれ。調査隊(ちょうさたい)を組む。現場での指揮はお前にまかせ――」

「ボク、ひとりできます」


 ユノは声を(あら)らげた。

 町人(ちょうにん)騎士(きし)も、他の戦士たちも、【フォルクス=メルヒェンの(もり)】に近づけたくなかった。


 アドニスは角刈(かくが)りの頭を()く。

(みず)を差すなよ。せっかくまとまりそうだったのに」

「ごめんなさい」

 ユノはアドニスに懇願(こんがん)した。

「でもボク、ひとりで行きたいんです」


 アドニスはユノの提案を()に受けたのではなかった。

 彼は不毛な水掛(みずか)(ろん)――作戦会議でも町人の参戦(さんせん)は問題になったらしい――に、終止符(しゅうしふ)を打ちたかったのだ。


「こんな少年をひとりで行かせたら、ひとたまりもありませんよ」

 アルゴが(うった)える。

「アドニス殿(どの)、お忘れではないでしょうな、あそこには【魔女(まじょ)】がいるのですよ」

「ボクには【気術(きじゅつ)】があります」

 ユノは(さけ)んだ。

 町人(ちょうにん)たちがザワついたが、それはすぐにおさまった。

 ユノはさらに大口(おおぐち)をたたく。


「なんならボクが……魔物(まもの)を全部やっつけます。だからみなさん、お、おお大船(おおぶね)に乗った気持ちで待っててください……」


 頭から、背中から――全身からあせ()いた。


 ユノの脚をフレデリックがゆび差す。

「あの、ヒザがわらってますけど……」

武者震(むしゃぶる)い、ですっ!」

 ユノは自分を鼓舞(こぶ)した。

 部屋の出口(でぐち)に向かっていく。


「とにかく待っててください。ボクが帰ってくるまでは」

「おい……」

 アドニスがユノのかたをつかむ。

 (おお)きな手を振りきり、ユノは廊下にび出した。


「ようすだけを見に行くんだぞ。無茶むちゃなマネはするなよっ」

 詰所(つめしょ)を駆けていくユノの背を、アドニスの声がった。


 手を上げて、ユノは了解(りょうかい)を告げる。

 アイの元に急ぐ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ