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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第二楽章 θ
47/113

恋敵で親友で3

「分かった。じゃ、シータ、何で私をお昼に誘ったの?」

 動揺しているせいもあってか、

「えっ、やっぱり迷惑だった――」

 という考えが頭をよぎる。

「いや、そういうんじゃなくて、ただ単に、どうして私なのかなって思っただけだから」

 慌ててそう付け加えるミズホ。

 その慌て振りに、私はふと我を取り戻す。

「あ、そう…なんだ。ごめん…何か大きな声出し…ちゃって」

 と、気が付くと私の口は勝手に動き出していた。

「私、前の学校であまり、というか、全然友達がいなくて」

 何を話しているんだ私は?

「今、見てて分かると思うんだけど、男子が何故か私の周りには集まってくるん…だ」

 ただ話し掛けた理由を聞かれただけじゃないか。

「そのせいなのか、女子からは嫌われてしまってたみたいなん…だ」

 話し掛けたのはミズホをFOLSに誘うため。こんな事は関係ない。

「男子はちょっと苦手で…さっきは何とか抜け出したんだけれども、それで丁度イス…じゃなくて、ミズホが一人でいるのが目に入ったから」

 そうだ。こうやって自然と話をつなげるために……

――――本当に?――――

「そっか」

 ポツリと呟くようにミズホはそう言うと、なんて言うのか、満面の笑み? を浮かべて私の方を見る。

「じゃあ、私がシータの友達第一号ね」

 やはり今までに無い反応。ミズホはどこか他の人達とは違った精神構造をしているのだろうか…。

 私は言葉を失い、

「友…達…」

 と、ミズホの言葉をただ反芻する。

 全く思いも寄らなかった反応だ……。

 否、本当にそうなのだろうか?

 この言葉を聞くために、さっきの話をしたのでは…?

「そう、友達よ」

 繰り返されたその言葉はまるで甘い蜜のように、私の心の中に染み渡って広がっていく。

 どうしてこの言葉に、こんなにも私の心は反応するのだろうか。

「さあ、お弁当、早く食べましょう。時間がなくなっちゃうよ」

「は、はいっ!」

 私は自分の気持ちを取り直すつもりで、大きくそう返事をした。


 何故か心の中がもわもわとして、はっきりと定まらない。

 弁当を食べながらもミズホと一言二言言葉を交わすが、会話が続かない。

 元々話し掛けた理由は? まだ目的を果たしていないというのに。

 確かに急ぐ必要はないけれども…。FOLSの話をしようとしても言葉が出てこない。

 気まずい空気が流れる。何か話さなければ…。何を話せばいいの?

 ふと、エンの事が頭に浮かぶ。

「あの、一つ聞いてもいい?」

 何故かエンは今日、教室からすぐに姿を消してしまう。

 もしかしたら、その理由をミズホは知っているかもしれない。

「何?」

「ミズホは、私の隣の席のエンくんの幼なじみなんだよね」

 いきなり質問するのも変なので、とりあえずそう確認する。

「えっあ、うん」

 私の口からいきなりエンの名前が出たのが予想外だったのか、ミズホは不意を突かれた様な間の抜けた返事をする。

「彼、今日、教室に全然いないでしょ? 休み時間毎に何処かに行っているみたいだけれど、何か知ってる?」

「へ? ううん、幼なじみだからって何でも知っているわけじゃあないから。普段はあんな風に居なくなったりしないんだけどね」

 そううまく事は進まず、返ってきたのは期待外れの答え。

 そこで私は考える。もしこのままエンが捕まらなかったら、わざわざクシイに頼んだ事が無駄になってしまう。

 彼も忙しい中で時間を作ってくれたはずだ。だとしたら――

「そう、なんだ」

 幼なじみのミズホなら、仮に学校でエンを捕まえる事が出来なかったとしても、家に行くなどして話すチャンスはあるはず。

「じゃあ伝えといて欲しいんだ。例の話、大丈夫だから今日の夜八時に私の家に来てって」

 偶然にも、朝、家が何処なのか話をしておいたために、わざわざ説明する必要が無くて助かった。

 と、ミズホはどこか違和感のある笑顔を浮かべ、

「あ、い、家?! う、うん、分かった」

 と答える。

 何か不都合な点でもあるのかと聞き返そうとしたその時、軽い振動が胸に伝わる。

 そして、私はすぐに内ポケットから通信機を取り出す。人前で取り出しても大丈夫なように、通信機の見た目は普通の携帯電話同じになっている。

 この通信機は会話するだけではなく、文章を送る事も出来るのだけれども、そこに映っていたのは、

『キンキュウジタイ、シキュウキタクシロ』

 何が起こったのかは分からないけれども、私はすぐに立ち上がった。

 そして、

「ごめんなさい、急用が入ったみたい。行かなくちゃ。じゃあミズホ、さっきの事お願いしま…お願いね」

 と、こっちを見上げるミズホに手を振ってそう言い残すと、私は急いで走り出す。

 何だか間が良いんだか悪いんだか分からないけれど、ミズホにエンの事を頼んだのは正解だったようだ。もしかしたら、午後の授業には出られないかもしれないからだ。

 とりあえず、校舎に入ると屋上への扉を閉め、周りに誰も居ないのを確かめる。

 そして、例の機械を取り出し、


――――家へ――――


強く念じた。


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