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サッカーの化身

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「……♪」




きはだは1人、部室で古本を読み漁っていた。




「……そろそろかな。」




きはだは読んでいた本にしおりを挟み、ドアのすぐ外にある部室棟の軒下へと出て行った。




「〜♪」




目の前にある顔より低い壁みたいな所で腕を組み顎を乗せ、赤みを帯びていく空をぼぉ〜っと眺める。




「あれ?きはだ何してるの?」


「おぉあさぎちゃん。どうしたんだいこんな時間に。」


「水筒を取りに来ただけだよ、お昼に置き忘れたやつ。で、きはだは?」


「夕日を見てたのさ……。」




あさぎはきはだが指差した西の空を見た。




「言われてみればちょっとだけ赤い……?でも夕日にはまだ早いんじゃない?」


「これからだよぉこれから。あさぎちゃんもどうぞ〜?」


「え〜……。」


「あれぇ?文系少女なのに夕日がお好きでない……。」


「サッカー選手だって、みんながみんなボールと友達以上の関係にならないでしょ?」


「う〜ん、これはとんだ流れ弾ですなぁ。」


「サッカー選手なら捌けるでしょ。」


「スポーツ得意な人はだいたいなんでもできるもんねぇ。」


「「…………。」」




「「……けっ。」」




2人が軒下で寛(くつろ)いでいると、少し遠くに一羽のカラスが飛んできた。




「見て見てあさぎちゃん、悪態つくからサッカーの化身がお怒りだよぉ?」


「あ〜、そういえばユニフォームによくくっついてるよねカラス。」


「お〜い。」




きはだがカラスに手を振ると、カラスが首だけ回してこっちを向いた。




「お、こっち見た……!」


「見てんじゃねーーッ!!」


「うっわ理不尽……。」




カラスはきはだの牽制をものともせず、こちらを見つめ続けていた。




「きはだが失礼な態度とるから、サッカーの化身お怒りじゃん。」


「こりゃアレだね、鎮めるしかないね。」


「鎮める?」




きはだは大きく息を吸い込むと、大きな声でカラスに向かって叫んだ。




「サッカーやろうぜ!」




きはだの声に驚いたカラスは何処かへと飛び去って行った。




「あ、行っちゃった。」


「鎮まったかサッカーの化身よ……。」


「たぶん違うと思う。」


「……もう少しきはだ様を愉しませてから帰って欲しかったなぁ。」


「カラスの勝手でしょ。」


「お〜、懐かしいね?」


「夕日とカラスって言ったら、ね。」


「替え歌なんだけどねぇ……。」


「なんだっけ?オリジナルのやつ。」


「七つ子(ご)。」


「子沢山だなあ……。」


「違ったっけぇ?」


「『七つの子』だよ、今思い出した。」


「そっかぁ、あと4人足りないねぇ。」


「サッカーしないって。」


「ああそっか、だからサッカーの化身どもは足をもう一本生やしてるのかぁ。」


「八咫烏(やたがらす)は3本足だったか……って、それでも22本には1本足りなくない?」


「え〜?さんかけるななでぇ……本当だぁ!?」


「哀しいなあ……。」


「まあ量より質だよ。」


「足の本数に質とかあるの?」


「ほら、3本あったらすんごい必殺技とか撃てそうじゃない?」


「……PKされるの嫌ではあるけど。」




2人が談笑していると、さっきまでカラスがいた所にグラウンドの方からサッカーボールが跳ねてきた。




「「あ。」」




すぐに追いかけてきたユニフォームの子がボールを回収してグラウンドへと戻って行く様子を2人が見守っていると、遠くからカラスの鳴き声がこだましてきた。




「ほぉ〜らあさぎちゃん、サッカーの化身達がサッカーの匂いを嗅ぎつけてきたよぉ……!?」


「サッカーの匂いってなんなの……。」


「……さてと。そろそろ帰ろっかなぁ?」


「え、もう?まだ夕日もこれから本番って時間じゃない?」


「そうだねぇ。でも、暗くなる前に帰らないと。ちっちゃい頃に言われなかった?」


「過保護だねぇ、きはだの家。」


「そうかなぁ……。でも、暗くなったらおばけの時間なんだよぉ〜?」




きはだは胸の前で両手を垂らし声を振るわせてあさぎを揶揄った。




「お化けなんているわけないでしょ。」




あさぎの襟足がかすかに靡(なび)いた。




「……風?」


「もしかして、お〜ば〜け〜か〜もぉ〜?」




またまた声を振るわせてきはだが揶揄ってきた。




「そんなわけないでしょ。ほら、帰るんでしょ?」


「はぁ〜い♪」




この日、あさぎは水筒を回収し損ねた……。








あーかい部!(4)



きはだ:せっかくだから投稿っ!


ひいろ:今日部活なかったのにか?


白ちゃん:何か良いことでもあったのかしら


あさぎ:サッカーの化身を鎮めてました


白ちゃん:え


ひいろ:とりあえずみてくるか




白ちゃん:え、待って部室棟にお化け出るの……!?


あさぎ:脚色ですよ、ただ風が吹いただけです


ひいろ:ポルターガイストなんかも案外そんなものだったりするよな


きはだ:わからないよぉ……?


白ちゃん:脅かさないでよ


ひいろ:夕日綺麗だったか?


あさぎ:ギリギリ日中


きはだ:カラスが鳴いたら帰るんだよぉ


白ちゃん:こんど私も見てみようかしら


あさぎ:あんまり見てると引き込まれるんで気をつけてください


白ちゃん:何それ怖っ


きはだ:ボールと友達以上の関係になっちゃう……


ひいろ:ユニフォームの八咫烏っていつもボール持ってるもんな


白ちゃん:アレはああいうデザインじゃないの?


きはだ:サッカーしようぜ、お前ボールな!

あさぎ:という暗示……


ひいろ:なんか首とか取ってそうだなそのカラス


白ちゃん:ないない、八咫烏ってもともと神聖なものなんだから


ひいろ:カラスの不吉とかネガティブなニュアンスって、どっちかというと西洋のものだったな


きはだ:よく見ると可愛いお顔してるんだぜ?アイツら


白ちゃん:カラスの顔なんてマジマジと見たことなかったわね……


ひいろ:あさぎ来ないな


きはだ:ヤツめ、引き込まれたか……サッカーの化身に


あさぎ:カラスの漢字が鳥より一画少ないのは象形文字の目の部分が遠目からじゃわからないからなんだとか


ひいろ:引き込まれてなかったな


白ちゃん:画数むしろ多くない?


ひいろ:鴉じゃなくて烏の方じゃないか?


あさぎ:そうそう


白ちゃん:あ!ほんとだ一画少ない!?


きはだ:ガーと鳴くから鴉だよぉ


ひいろ:鳩はクーか


あさぎ:クックドゥードゥルドゥー


白ちゃん:トサカ見えてんぞ


あさぎ:やば……

あさぎ:え、ちょっと待って


ひいろ:どうした?


あさぎ:水筒回収するの忘れてた……!?


きはだ:トリアタマで草ァ!


あさぎ:くっくどぅーどぅるどぅ……

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