アリとキリギリス
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
聞き慣れた2人の賑やかな声につられ、今日も3人目の部員が来訪する。
「ちゃおっす。」
「お、来たなきはだ。」
「遅かったじゃん。」
「いやぁごめんごめん。」
「何かあったの?」
「アリさん見てたら遅れちゃったぁ。」
「アリさんって……。」
「ちょっとわかるかも。たまに目で追っちゃうよね。」
「うんうん。」
「そういうものか……?」
「ひいろはアリの行列とかあんまり見ない?」
「ワタシは日頃から下など向かないからな!」
「確かにあんまりひいろが下向いて歩いてるところは想像つかないかも。」
「損してるねぇ。」
「……そこまで言われることか?」
「案外、足下にも面白いことは転がってるもんだよぉ〜。」
「今日のアリみたいに?」
「そうそう。」
「ドキュメンタリーとかならともかく、そこら辺のアリなんて面白いのか?」
「面白いよぉ〜。さっき見たのはおっきな虫をみんなで担いで運んでたとこだねぇ。」
「アリって結構な力持ちだからな。」
「お、ひいろ詳しいじゃん。」
「いや、自分の体重の何倍もある荷物を顎の力だけで運べるのは力持ちじゃないか?」
「人間には無理だよねぇ。」
「そういうふうに興味持つと、アリとかも面白く見える……、そういうことでしょ?きはだ。」
「違うねぇ。」
「この流れで違うのか。」
「せっかく一匹で生きられるスペックあるのに、子作りも自由も放棄して社会の歯車として死ぬまで汗水垂らして働いてる所が面白いんだよぉ。」
「「うわぁ……。」」
「ん〜?」
「なんというか……きはだって、なかなかいい性格してるよな。」
「きはだちゃんはいい子だからねぇ。」
「いい子はアリをそんな目で見ないかな……。」
「働き者のアリを笑ってたら、いつか童話のキリギリスみたいな末路を辿るぞ?」
「運ばれてたのキリギリスだったなぁ。」
「冬迎えられなかったかあ。」
「働き者のアリを笑うキリギリスは働き者に食い物にされちゃうんだ……。」
「なんか、違う話になってないか……?」
「けどこっちのが現代的だよね。」
「現代の方が弱肉強食なんだな……。」
「アリさんに弱肉強食を感じるなんて、独特な感性してるねぇ。」
「きはだが始めた話だよね?」
「わたしが感じるのは同情と愉悦だよぉ?」
「ここだけ切り取ると完全に悪の総帥だな。」
「確かに悪の総帥っぽいかも。」
「勇者とかに倒されちゃう?」
「それは魔王だな。」
「マイファーザー?」
「魔王来ちゃったよ……。」
「こんなしょーもない会話してる間にもアリさんは働いてるんだよねぇ……。」
「これもきはだが始めた話だよね?」
「働いてるといえば、今日は白ちゃん来てないな。」
「白ちゃんがちゃんと働いてるなんて……!?」
「キリギリス側の人なのにね。」
「確かに白ちゃんはキリギリスだな。」
「私は人間よ?」
白ちゃん入室。
「アリとキリギリスの話ですよ。」
「あ〜、どっかの国の童話にあったわね。」
「怒らないのぉ?」
「なんで?私、誰がどう見てもキリギリス側でしょ。」
「自分で言っちゃっていいのか……!?」
「いいのいいの。童話のキリギリスが凍死したのは要領が悪かったからであって、怠け者が祟ったわけじゃないわよ。」
「言うねぇ〜。」
「現代で幅を利かせているのはアリを従えたキリギリスだし、キリギリスが凍死するとしてもそれはアリが全員凍死した後よ。」
「どんどん童話が変わっていくなあ。」
「どうせ私も教頭先生に食い物にされちゃうのよ……。」
「えっっ
「ひいろ、その『食べる』じゃない。」
あーかい部!(4)
きはだ:投稿完了〜
白ちゃん:お疲れ様
あさぎ:キリギリス多いなここ
ひいろ:っていうかキリギリスしかいなくないかここ
きはだ:それはない
あさぎ:それはない
白ちゃん:ひいろちゃんは絶対アリよ
ひいろ:そうか?
白ちゃん:ちょくちょく教頭先生のところでお手伝いしてるの知ってるのよ
あさぎ:応接室にいない日は生徒会手伝ってるよね
ひいろ:あさぎもたまに応接室にいるだろう
白ちゃん:なにそれ初耳
きはだ:もしかしてひいろちゃんのポジションを狙っていたりして……?
ひいろ:なんだと!?
あさぎ:狙ってはいない
白ちゃん:それはそうとひいろちゃんならともかく、あさぎちゃんは応接室でなにしてるのかしら?
あさぎ:可愛い可愛いひいちゃんには頼めないような雑務ってとこですかね
ひいろ:頼んでくれても良いのにな
きはだ:ひいちゃんスルーで草ァ!
ひいろ:そんなことで怒ってたらおばさんに恥じない人になれないからな!
きはだ:毎日おばさん喜ばせて誇らしくないのぉ?
ひいろ:喜んでくれてるなら良いんだけどな……
白ちゃん:私がおばさんの立場なら毎日全身が悦んでおかしくなるわね
あさぎ:白ちゃん先生、誤字ってます……
ひいろ:いや、あながちそうでもないんだ
きはだ:おおっとぉ?
白ちゃん:ひいろちゃんのこと褒めておくからおばさんにだけは……!?
あさぎ:じゃあ私達には話せますよね?
白ちゃん:嫌よ。このトークルームに誰が紛れ込んでるかわからないからね
ひいろ:まあ、そうだな……
あさぎ:あさぎの隣人でもダメぇ?
白ちゃん:ほ〜ら出てきた
きはだ:こりゃ話せんわ
あさぎ:い〜じゃんケチ
白ちゃん:ケチじゃないし!
白ちゃん:それに、あんただけとも限らないし
あさぎ:お隣さん以外にもいるんですか?
白ちゃん:前に教頭先生がひいろちゃんに化けてたことがあったのよ……
ひいろ:2人のトークルームで話してたときだけどな
きはだ:このひいろちゃんも偽物かもしれないのかぁ
ひいろ:今は本物だぞ!?
白ちゃん:もう誰も信用できないわね……
あさぎ:今こうして話している白ちゃん先生も、もしかして……
きはだ:キャー!
白ちゃん:やめろやめろ




