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ガチャる(新作エピソード)

池図女学院部室棟、あーかい部部室。


……ではなく、池図女学院からちょっと離れた、ちょっと大きめの本屋さん。


店頭にずらりと並べられたカプセルトイのブースの前に、あさぎは立っていた。




「……。」




顔をまっすぐ、目だけ動かし通行人のフリをして牛歩で商品を目視する。


ついでに周りに小さい子どもがいないかとチェックする。




「……ヨシ!」




旅行客のサンドイッチに狙いを定めた(とんび)の様に、とある一台の前へと一直線。


予め目視で確認しておいたお値段ちょうどをマシンに捩じ込み、ガチャガチャとダイヤルを回す。




「……、」




右を見て、左を見て、もう一度右を見て自分にゴーサインを出し、野球をするにはちょっと大き過ぎる半透明でまん丸なブツを回収して人目につかにくい隅っこへ素早く身を隠す。




「……ほほ〜、流石500円クオリティ。」




あさぎは満足げに頷くと、ブツをバッグにしまって何食わぬ顔で本屋へ入り、買い物を済ませ帰宅した。




「…………、さてと。」




自室に戻ったあさぎは、ベッドに背中を預け、天井の照明にブツをかざし、光の反射を愉しんだ。




「開けたいけど、開けるとゴミになっちゃうんだよなあ……。」




仰向けに寝っ転がったまま、跡が残らないよう丁寧にセロハンテープを剥がす。




「……これがカプセルトイのジレンマってやつかあ。」




クルミを割ろうと、弱い箇所を探すリスの様に両手の中でカプセルをコロコロと回す。




「開けずに取っておくのもあり、か……?」




カプセルを転がす手を止めると、中身と目が合った。




「…………、出してやるか。」




割と強めに指に力を入れ、奮闘すること10数秒。


パカっと割れたカプセルの仲間が胸元に降ってきた。




「…………う〜ん、ラッコの気持ち。」




寝返りを打ってビニールを引きちぎり、中身を組み立てる。


数分もしないうちに全長5か6センチメートルくらいの立派なハチが出来上がった。




「1番楽しいとこ、終わったなあ……。」




プラモデルのような、こういう組み立てる系の玩具は完成させてしまうと、線香花火の様にあっけなく愛着がどっかへポトリと落っこちてしまう。




「セミのように短い命だった。……ハチだけど。」




役目を終えたハチを枕の上にそっと置いて、自分は座り直し、スマホを弄る。




「……。」




手癖で起動したのはトークアプリPINEのとあるトークルームだった。






あーかい部!(4)




あさぎ:500円、儚い命だった……


白ちゃん:側溝にでも落としたの?


あさぎ:500円なら今私の隣で寝てますよ


白ちゃん:水分補給はしっかりすんのよ?


ひいろ:金は社会の血液だからな


あさぎ:あ〜、ちょっと今貧血気味かも


ひいろ:どのくらいだ?


あさぎ:500yen程


白ちゃん:血液っぽく表記すな


ひいろ:奇遇だな、ワタシも今しがた出血した所だ


あさぎ:どのくらい?


ひいろ:800yen程だな


あさぎ:重症じゃん


白ちゃん:で、2人の貴重な血肉はどこへ消えてったわけ?


ひいろ:ワタシの血肉になったぞ


あさぎ:外食良いなあ


白ちゃん:ややこしいわね……


ひいろ:あさぎの500yenは元気か?


あさぎ:組み立てるの終わったら置物になっちゃった


白ちゃん:プラモデルあるあるね


ひいろ:船か?ロボか?


あさぎ:生きとし生けるもの


ひいろ:虫とか魚とか最近のはリアルだよな


白ちゃん:懐かしいわね〜


あさぎ:白ちゃん先生ペットでも飼ってたんですか?


白ちゃん:あ、うんそんなとこ

白ちゃん:みんなはペット飼ってるの?


きはだ:部室に1匹

ひいろ:学校で

あさぎ:それがまた大食いで……


白ちゃん:おい

白ちゃん:私顧問ぞ?

白ちゃん:どっちかっつーと使役する側ぞ?


あさぎ:きはだも暇してたの?


きはだ:スマホがブンブンうるさくてねぇ


白ちゃん:そういうと、なんか生き物みたいね……


ひいろ:現代人のペットはスマホなのかもしれないな


あさぎ:もしくはその逆……


白ちゃん:闇が深いわね……


ひいろ:休日の真っ昼間なのにみんな集まっちゃったな


きはだ:暇なのぉ?


白ちゃん:その言葉、そっくりそのまま自分に突き刺さってるわよ


きはだ:きはだちゃんはカレー煮込んでる合間だから


白ちゃん:良いわねカレー


ひいろ:この前カレーパン買い占めたばっかりだろう……


きはだ:お陰様であれから毎日カレーだよぉ……


あさぎ:カレー欲がとどまるところを知らない


白ちゃん:いやいや流石に毎日は飽きるでしょ


きはだ:今日は厚切りポークをメインに据えたソース多めのヤツにしてみた


あさぎ:煮詰まってるなあ


白ちゃん:カレーだけに!

ひいろ:アレンジの跡が伺えるな


きはだ:カレー縛りもオツなもんですぜ


あさぎ:え、まさか毎日きはだが作ってるの?


きはだ:ん〜ん?昨日はお母さん


ひいろ:作ってるだけ偉いじゃないか


あさぎ:……だそうですよ?


白ちゃん:こっち見んな


きはだ:混ぜ混ぜしてくる〜


ひいろ:白ちゃんも自分で何か作ったらどうなんだ?


あさぎ:プラモとか


白ちゃん:急に戻ってきたわね


ひいろ:養護教諭だし手先は器用なんじゃないか?


白ちゃん:それは偏見よ


あさぎ:白ちゃん先生は不器用……っと。


白ちゃん:メモるなメモるな


白ちゃん:プラモってどっちかって言うと爪バッキバキに武装してるような子の方が得意なんじゃない?

白ちゃん:私はお仕事で派手なのできないし


あさぎ:あ〜、確かに行程似てるかも……?


ひいろ:そうなのか?


あさぎ:なんかすんごいプラモは塗装とか削ったりめちゃくちゃやるらしい


白ちゃん:プラモも奥が深いのね〜


ひいろ:あさぎの500円プラモは簡単なヤツなのか?


あさぎ:穴に挿れてハメるだけのヤツ


ひいろ:それはお手軽だな

白ちゃん:言い方


あさぎ:カプセルトイ産なんてそんなもんじゃない?


白ちゃん:え?今のガチャガチャってプラモなんかも売ってるの!?


ひいろ:最近のは1000円くらいのすんごいヤツも出てるぞ


白ちゃん:ガチャガチャに、千円……!?


白ちゃん:ちょっと目眩が……


ひいろ:血液足りてないんじゃないか?

あさぎ:貧血(きんけつ)ですか?


白ちゃん:うっせ

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