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教科書

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「〜♪」




きはだは1人、教科書を読んでいた。




「きはだ早いね。……ってそれ教科書?真面目だなぁ。」




少し遅れてあさぎ入室。




「きはだちゃんはいつだって真面目だよぉ?」


「その真面目な人が、なんで小学生の国語の教科書なんて読んでるわけ?」


「ん〜、童心に帰ってる。」


「童心、ねえ……。」


「お、名シーンきたきた。」


「名シーン?」


「ごん、お前だったのか……!!」


「ごんぎつねでそこまで盛り上がれる人初めて見たよ。」


「なにおぅ、小学生の教科書だっていいお話いっぱいあるんだぞ〜!」


「いいお話、なのかなぁ……?」


「ほれほれ、たとえばこれとか。」


「あ〜、『そういう奴だったのか』のヤツ……。」


「ま、いいお話かは別として、これがわたし達あーかい部の目指すところなわけよ。」


「教科書に載りたいの?」


「どうせなら顔写真付きで。」


「大きく出たなあ……。」


「あさぎちゃんは載りたくないのぉ?」


「出たくないっていうか、私たちあーかい部のケータイ小説なんて教育によくないし、クオリティ以前の問題じゃない?」


「ひいろちゃん、お許しください……!」


「ひいろが爆散したくらいじゃ、まだ厳しいかな。」


「可哀想なひいろちゃん……。」


「教科書に載るなら偉業しないとだしなあ。」


「偉業か〜、世界征服とかぁ?」


「それ歴史の教科書じゃない?」


「国語もいいけど歴史も捨てがたい……!」


「そんなに世界征服したいの?」


「いんや?」


「ならもっと良いことで載ろうよ。」


「良いことかぁ……。ありがたいお経でも持って帰る?」


「中国のサルのヤツ……。」


「じゃあ日本らしくカニからおにぎりを……、


「ラスト袋叩きだけどいいの?」


「それはやだ……ッ!」


「だいたい、教科書に載ったって未来の子どもたちに落書きされるのがオチでしょ?」


「どうせなら面白く描いて欲しいよね。」


「それでいいのか……。」


「例えばぁ〜、




ひいろは教科書をペラペラとめくって、ごんぎつねのページを開いた。




「このキツネに……、


「撃たれて『うわぁ〜!?』ってなってるヤツ?」




きはだは挿絵にラクガキを始めた。




「これをこうして、ここをこうっ……!」




きはだは目にも止まらぬ手際で、銃に撃たれて仰け反るキツネの両手にアサルトライフルを2丁描き足した。




「応戦させるな。」


「もういっちょ、」




きはだは続けて、猟銃で発砲するお爺さんの脇腹に銃弾の軌跡を描き足した。




「差し違えるな。」


「ごん……!」


「やっほー2人とも、元気?」




白ちゃん入室。




「あ、白ちゃん先生。」

「白ちゃんだ〜。」


「2人で何して……へぇ〜?面白そうなことしてるじゃない♪」


「……怒らないんですか?」


「教科書のラクガキなんて、誰もが一度は通る道でしょ。」


「お〜、白ちゃん寛大!?」


「ラクガキでいちいち怒ってたら、保健の授業なんてできないもの。」


「「あ〜……。」」


「保健はやりやすいもんなあ……。」


「あさぎちゃん?」


「そ、それよりきはだ!その教科書、ラクガキしてよかったの?」


「これぇ?貰い物だからいいのいいの。」


「『ごんぎつね』?懐かしいわね〜。」


「白ちゃん先生も授業でやったんですか?」


「やったわよ♪私の頃とは挿絵が変わってるみたいだけど……。」


「白ちゃんはどんなラクガキしたの〜?」


「私はねぇ〜、




白ちゃんは教科書を手に取って挿絵を漁り始めた。




「……あったあっあ♪ここをこうして、




白ちゃんは、キツネが山盛りの木の実を運ぶ挿絵に1つの手榴弾を描き足した。




「こうね♪」


「なんで2人ともお爺さん殺りにいっちゃうかなあ。」


「『2人とも』?」


「見てみてぇ〜、きはだちゃんのラクガキ。」


「おお、これはお爺さんとキツネが差し違える名シーンね……!」


「お話変わっちゃったよ……。」


「そんなあさぎちゃんのラクガキはっと……、」


「あ!いつの間に!?」




きはだはいつの間にかあさぎのカバンからひったくっていたあさぎの保健の教科書をパラパラとめくり始めた。




「だめっ!帰せ……!」


「まあまあまあ♪」




教科書を取り返そうとするあさぎを白ちゃんが押さえつけた。




「お、いいのはっけ〜ん♪」




きはだが手話のページを開くと、『こんにちは』や『ありがとう』の横のスペースに印を結ぶ手と、その下には『火遁(かとん)の術』の文字が書かれていた。




「か、と、ん、の、じゅつ……www」


「あさぎちゃんなかなか良いセンスしてるわね。」


「……///」


「よぅし、次行ってみよぉ〜。」


「ちょっ!?」




きはだが薬物依存のページを開くと、頭を掻きむしりイライラする少年の挿絵には、髪に書き加えられた大量の泡と、シャワー……。そして余白にはちっちゃく




「『シャンプーが落ちない』www」


「あら可愛い♪」


「……殺してください///」




鈍い音を立てて頭をテーブルに突っ伏したあさぎに、最早(もはや)反抗する気力など残っていなかった。




「え?いやよ、こんな才能を活かさないなんてもったいないもの。」




今度は白ちゃんが保健の教科書を手に取り、柔道のページをピンポイントで開くと、




「ああ!?それだけは……!?」


「おおっと♪」


「くっ、はなせっ!」




きはだがあさぎを押さえつけている間に白ちゃんが背負い投げから上四方固めをする人の2コマの挿絵に書き足された文字を朗読した。




「『お前のことが』、『好きだったんだよ……!』」


「wwwwwwwwww」




きはだはお腹を抑え、声にならない笑いを発し転げ回った。




「 」




あさぎは放心していた。




「先生を舐めないことね♪」








あーかい部!(4)




きはだ:登校!


ひいろ:おはようございます


白ちゃん:続くわねえこのノリ


あさぎ:ちゃんと編集したよね?


ひいろ:編集?いつもしてるじゃないか


きはだ:ばっちり背負い投げまで収録しといた


あさぎ:きはだぁぁぁあああ!!!


ひいろ:とりあえず見てくるか




ひいろ:あさぎ……


きはだ:草ァ!


白ちゃん:まあ自業自得よね


ひいろ:まったくだ


きはだ:白ちゃん授業中もみんなのこと見てるんだねぇ


白ちゃん:ええ、楽しませてもらってるわ

白ちゃん:もちろん、ひいろちゃんの教科書でもね♪


ひいろ:嘘だ……ウソダ…


きはだ:草ァ!

きはだ:草ァ!


白ちゃん:きはだちゃんはラクガキしないのね?


きはだ:それが普通なんですぜ白ちゃん


白ちゃん:こんど課題のついでに教科書も提出させてみようかしら?


あさぎ:やめてください

ひいろ:やめてくれ

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