33/50
肩の高さ
転勤先のアパートは、やけにクローゼットが大きかった。
中には黒いハンガーが五本。
そのうち一本だけ、薄明かりの中で形が違って見えた。
肩から首へ続く線が、鎖骨と背骨でできているように見えたのだ。
気味が悪いと思いながらも、スーツを掛けて扉を閉めた。
翌朝、右肩が重かった。
寝違えたかと思ったが、服を脱いでも痛みは消えない。
鏡を見ると、右の肩の線がわずかに下がっていた。
その夜、ハンガーを見た。
一本だけ、肩の部分が少し膨らんでいる。
まるで中に何かが入っているように。
翌日、左肩が痛んだ。
腕を上げると、骨がこき、と鳴った。
クローゼットを開けると、ハンガーの肩が左右対称に盛り上がっていた。
触れると、温かかった。
夜、服を掛けようとして、思わず手を止めた。
ハンガーの肩の部分に、自分のほくろと同じ位置の黒い点があった。
息を呑むと、木の軋むような音がした。
風もないのに、こき、と。
今も鏡の前で、肩の高さを確かめている。
右が低い。
たぶん、あの中にある。




