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戻る箸
長年使っていた箸が、ついに折れた。
手になじんだ木の箸で、塗りも剥げていたが、気に入っていた。
それでも、もう限界だと思い、半分に折ってゴミ袋に入れた。
その夜、新しい箸を買って帰った。
翌朝、流し台の横に箸立てがあった。
何気なく見ると、そこに古い箸が立っていた。
折ったはずなのに、継ぎ目も見当たらない。
まるで最初から折れてなどいなかったかのようだった。
気味が悪くなって、もう一度捨てた。
今度は折って、袋の奥に押し込み、口を縛った。
けれど次の日、また箸立てに戻っていた。
新しい箸の隣で、静かに立っている。
どう見ても、昨日より少し短い。
三度目には、捨てずに別の部屋に置いた。
誰かがすり替えたのかと思ったが、そんな人もいない。
夜になると、木がこすれるような音がした。
気のせいだとわかっていながら、耳が勝手に探してしまう。
翌朝、箸立てを見た。
古い箸があった。
短く、焦げたように黒ずんでいる。
それでも、なぜか手が伸びた。
指に馴染む感触は、前と同じだった。
持つと、手の中で少し震えた。




