第40話:千年の循環(SF)
時は西暦3024年。人類は「永久の生」を手に入れていた。
私の名はヨウ・シンリン。記憶保管庫の管理人として900年以上を生きてきた。永久の生を得た人類は、脳内の記憶を定期的にデジタル化して保管することで、肉体が滅びても意識の連続性を保てるようになっていた。
「また会えて嬉しいです、シンリンさん」
その日、一人の少女が記憶保管庫を訪れた。アイリスと名乗る14歳の少女は、不思議な雰囲気を漂わせていた。
「私の記憶、見つかりましたか?」
私は首を横に振った。
「申し訳ない。990年前の記憶データは、まだ見つかっていない」
アイリスは微笑んだ。
「大丈夫です。きっと見つかるはずですから」
彼女は毎週のように保管庫を訪れ、990年前の自分の記憶を探し続けていた。永久の生を得た人類にとって、記憶の喪失は致命的な問題だった。記憶なき永遠は、無意味な時間の連続でしかない。
ある日、私は古い保管庫の奥で一つのデータキューブを見つけた。それは「千年」という単位で暗号化されていた。解読に没頭する中で、私は衝撃の事実に気がついた。
このデータキューブには、人類が永久の生を得る前の記録が残されていた。そこには恐ろしい真実が刻まれていた——人類は千年に一度、必ず文明をリセットしていたのだ。
記憶を失ったアイリスは、実は990年前の大リセットの生存者だった。彼女の記憶は意図的に隠されていたのだ。なぜなら……。
「見つかりましたね」
背後から聞こえた声に振り向くと、アイリスが立っていた。しかし、その表情は今までの少女とは全く違っていた。
「千年の時が満ちました。シンリンさん、あなたは私が選んだ証人です」
アイリスの瞳が輝きを増す。
「人類は永久の生を得る度に、必ず驕りの頂点に達します。そして文明は腐敗し、崩壊の危機を迎える。だから私たちは……リセットするのです」
アイリスこそが、千年に一度の大リセットを司る存在だった。記憶保管庫に通い続けたのは、リセットの時期を見極めるためだったのだ。
そして今、新たな千年の輪廻が始まろうとしていた。
このお話から「輪廻」「リセット」を取り出して次につなげます。




