第11話:ドタバタ供養大作戦! 鎮魂鎮魂キンコンカン!(スラップスティック)
ここは東京都内の、とある古びた寺院。どこにでもありそうな小さな寺だが、住職の多聞和尚には大きな悩みがあった。
「なんでこうも次々と未成仏霊が集まってくるんだ! 休む暇がないじゃないか……!」
多聞和尚は四十代半ば、ぽっちゃり体型で、声がデカく、どこかせわしない性格。お経を唱えても霊たちはなかなか成仏せず、下手すると逆に「もっと話を聞いてほしい!」と居座られる始末。仕方なく和尚は、お経の途中でお茶を出したり、愚痴を聞いたりと、まるで世話係のような供養を続けていた。
「和尚!また新しいお客さんが来たよ!」
そう言ってひょこひょこと顔を出したのは、寺で見習い修行中の青年、健太だった。小柄でちょっとお調子者の彼は、和尚に負けず劣らずの声の大きさで叫ぶ。
「いらっしゃいませー! ただいま絶賛鎮魂供養中でーす! 新しい方はこちらでお待ちくださーい!」
見ると、玄関の方で青白い顔をした女性の幽霊がうろうろしている。どうやら昨夜、ビルの階段で転んで亡くなったらしい。
「うわーん!成仏したくないよー! まだやり残したことがいっぱいあるのにー!」
彼女は幽霊らしからぬ全力で泣きわめいている。
「おい健太、しっかり案内してやれよ!幽霊は今の世に未練を残しちゃいけないんだ。成仏の手助けをするのが俺たちの仕事だろ!」
「はいはい、和尚。でもこの幽霊さん、全然だめなんですよ」
健太がそう言うと、女性の幽霊はしゃくり上げながら叫ぶ。
「だって私、まだアイドルクルセイダーズのライブに行ってないの! 次のツアーのチケットが当たったのに、行けなかったんだからぁぁ!」
「ええっ!?そんなことで成仏できないのか?」と多聞和尚は頭を抱えた。だが、幽霊は真剣そのものだ。
「和尚さん、お願いします! アイドルクルセイダーズのライブだけは行きたかったの! あのイケメンの顔を拝まないと、私、成仏なんかできない!」
多聞和尚は溜息をついた。普通の供養では収まらない霊が多すぎる。こうなったら、特別供養コースを考えるしかない。
「よし、わかった。今日は特別サービスだ!健太、例のあれを用意しろ!」
「了解っす、和尚!」
健太は寺の奥に駆け込むと、大量のアイドルグッズが入った箱を引っ張り出してきた。彼はアイドルオタクでもあり、ライブで使う応援グッズやペンライトをこれでもかと持っているのだ。
「さあさあ、幽霊さん!まずはこのペンライトを握ってみてください!」
「ペ、ペンライト、なぜここに……?」
幽霊の女性は戸惑いながらも、健太が渡したペンライトを握る。すると、パアッと光が放たれ、彼女の顔が輝いた。
「わあ……すごい……!」
「それから、このライブ音源CDを聞いて、まるで会場にいるような気分に浸ってください! 俺が実況もしますんで!」
健太がスマホでアイドルクルセイダーズのライブ音源を流し始めた。さらに、手拍子や掛け声をつけながら、健太はノリノリで実況を始める。
「さあ、曲は『シンデレラガール』! さあ皆さん、ペンライトを振って!『好きだよ!』って叫んでください!」
幽霊の女性は一瞬戸惑ったが、健太の勢いに飲まれて、ペンライトを振り始めた。
「す、好きだよーーー!」
それを見て、多聞和尚はお経のリズムをライブ風にアレンジしながら唱え始めた。
「なーむ、アミダーブツ、なーむ、アミダーブツ!どうだ、幽霊さん、ノッてるか?」
「はい!なんだか本当にライブ会場にいるみたいです!」
幽霊の女性は涙を浮かべながらペンライトを振り続け、徐々にその姿が薄れていく。そして、満足そうに微笑むと、光とともにスッと消えていった。
「成仏した……!」
健太と多聞和尚は顔を見合わせ、ハイタッチを交わした。
「やっぱり、彼女の未練はライブだったんですね!よかったー、成仏してくれて!」
「ふう、やれやれ。まさかこんな形で鎮魂供養をすることになるとはな……」
ところが、ほっとする間もなく、今度は別の幽霊が現れた。今度はサラリーマン風の男性だ。青白い顔をしながら、頭をかきむしっている。
「すみません!どうしてもこの世を去れないんです! 来週の株の相場が気になって仕方ないんですよ!」
「……」
多聞和尚と健太は一瞬言葉を失ったが、すぐに顔を見合わせてニヤリと笑った。
「健太、次の特別供養だ!今度は株の実況中継だ!」
こうして、寺では次々と特別供養が行われるようになった。アイドルクルセイダーズライブのペンライト、株式市場の実況、さらには新作アニメのネタバレトークやスイーツ食べ比べ……。多聞和尚と健太は忙しさに追われながらも、ドタバタしつつも充実した供養を続けていった。
その結果、この寺には次第に「どんな未練も成仏させてくれる」と噂が広まり、全国から様々な未成仏霊が訪れるようになった。
「未成仏霊の皆さん、いらっしゃいませー! 当寺では、あらゆるご要望にお応えします! さあ、供養して欲しい未練があれば何でもどうぞー!」
こうして、寺はかつてない賑わいを見せ、多聞和尚と健太は今日もドタバタと供養に励むのであった。
このお話から「アイドル」を取り出して次につなげます。




