第九十三話 順調な始まり
第九十三話! 『ダンジョンアタック』、スタートです!
「……はい、出来た! うわぁ、結構魔力を使っちゃったな……」
「いや、本当にすごいね『魔具工房』。まさかこんなのも作れるなんて……」
『ダンジョンアタック』開始直後。僕らは早速『フォーマルハウト』の攻略を開始……せず、まずはライアの『魔具工房』を使ってバックパックに『重量軽減』、『容量増加』を追加した。
これのおかげでポーションなどのせいで重かったバックパックの重さは5分の1程度になり、内容量も1.5倍くらいになった。これで魔石を入れるところにも困らないな……
あと、僕らの服に『疲労軽減』『体力回復』も付与しておいたらしい。これで20時間の間活動することができるだろう。本当に万能だな『魔具工房』……。
「じゃあ、今度こそ行こうか」
「ちょっと待って、ポーション飲むから……やっぱり不味い」
そう愚痴をこぼしながら、ライアは減った魔力を補うために魔力回復ポーションを飲む。ポーションは効果重視のものだと余計なもの入れないから不味くなるんだよな……ポーション、不味い……うっ、頭が。
「ラルク、顔色悪いよ? 大丈夫?」
「……何でもないよ。行こっか」
「それじゃあ改めて……出発!!」
「おーーー!」
そんな掛け声とともに、僕らは中級ダンジョン『フォーマルハウト』の攻略を開始した。まさか、あんなことが起こるとも知らずに……
「ここがダンジョンの中……不思議だな」
「ずっと廊下が続いてるね」
中級ダンジョン『フォーマルハウト』。その構造は至ってシンプルであり、各階層が長くて太い一本道となっている。
1階層から10階層までは主にキラースケルトンやシャドウレッサーリッチなど、比較的簡単に倒せる魔物が群れをなしており、数の暴力に押されないことが大切になってくる……のだが。
「ねえ、ラルク?」
「どうしたの? ライア」
「敵……全然でてこなくない?」
ライアが1階層攻略中……というか全然敵の出てこない廊下を歩いている途中に、何か違和感があるとでも言いたげな声で僕にそう聞いてきた。でも安心して欲しい。だって……
「僕が全部『不可視の奇襲』で倒してるからね」
「ああ、なるほど……もうボクは疑問を持たないよ」
この階層のレベルだと、正直今の僕なら苦戦することはない。さっさと魔力だけ先に広げて殲滅した方が早いのだ……だからそんなに呆れた顔しないでよ、ライア。
そんな話をしながら、歩くこと5分ほど。ついに一度も魔物とまともに正面戦闘することなく、ボス部屋まで到達してしまった。
「……ボク、今ダンジョン攻略をしてるんだよね?」
「なんか……ごめん」
あまりにも何もなさすぎて、思わずライアがそう言ってくるほど何もなかった。せいぜいキラースケルトンの生き残りが1、2体出てきた程度だった。
「いや、別にいいの。体力は温存しとかないといけないし……それより、ボス部屋だよ。確かここのボスはビッグボウスケルトン。一撃の威力が普通のスケルトンよりも高い上位種だよ」
「ビッグボウって……名前からして強いじゃん」
弓矢は、大きければ大きいほどタメが長くなる代わりに高威力を出せる。それを使いこなすスケルトン、弱いわけない。
「それじゃあ……行くよ」
「うん」
2人でどんな敵が出てくるのか警戒しつつ、ボス部屋の扉を開く。するとその中には、全身真っ黒な甲冑を被り、その名の通り自信の体長をゆうに越える大弓を構えているスケルトン……ビックボウスケルトンがいた。
そして、そのスケルトンと目があった(スケルトンに目はないけど)瞬間、そいつは容赦なく僕に大きな矢を撃ち込んできた! その飛んできた矢は、あまりにも……
(遅すぎる)
こんな攻撃と比べれば、ファフニールの鱗の方が数倍早かった。『思考加速』をフル使用していなくても、全然目で追えるレベルだ。僕は飛んできた弓を素手で掴み取り……
「ずいぶん派手な挨拶……ありがとな!」
そう言って大きな矢を『投擲』を使って思い切り投げ返す。すると……
「コァァァァァ!!」
その矢に甲冑を貫かれ、そのまま倒れてしまった……これ階層ボスなのか、本当に?
……いや、いい加減認めた方がいいかもしれない。今の僕の実力は、少なくともこのダンジョンの上層部の水準を遥かに凌駕している。だから、ここは僕1人で事足りたのだが……
「……ボクは今、何をしているんだろうか」
「……本当にごめんなさい」
流石に1人で色々やりすぎたな……とまあ、あまりにもあっさりと1階層を攻略してしまい少し気まずい空気にはなってしまったが……戦果だけ見れば好調と言っていいスタートを僕たちは切ることができた。
この調子で『ダンジョンアタック』に絶対受かって見せるからな……!! 待ってろ、Sクラス!!
あれ、もしかして余裕……? いやいや、まさか♪(暗黒微笑)




