第九十二話 『ダンジョンアタック』開始
第九十二話! 果たしてラルクの選択は……?
僕のスキル『武芸百般』。このスキルはシルクさんの反応を見る限り、似たような能力がほとんど存在しない希少なスキルなんだろう。
果たしてそんなスキルを持っていることを、ライアに教えても大丈夫だろうか……?
「ラルク、大丈夫? 急に元気がなくなったけど……」
僕がどうしたものかと考えだんまりしていると、ライアがそう聞いてきた。あまり時間がないことは分かっているはずなのに、急かすでもなく僕の心配をしてきたのだ。
(……いや、この人なら多分、心配いらないな)
こんな情報だけで判断するのは間違ってるかもしれないけど……ライアはきっと悪い人じゃない。だから全部とは言わないけど……少しなら教えても大丈夫だろう。
「ううん。なんでもないよ……僕の固有スキルは『武芸百般』。ノーマルスキルを強化するスキルだよ」
「何そのスキル!? てっきりステータス強化だと思ってたのに……」
やっぱりそう思われてるよなぁ……僕だって逆の立場だったらそう考えるだろうし。
「『武芸百般』は、ノーマルスキルの効果を強化したり同時発動させたりする固有スキルなんだ。例えば『魔力操作』なら他の人よりレベルを上げる恩恵が大きいし、『分身』なら他の人より多く分身を出せる」
「うん、それって相当強くない? あと同時発動って何?」
「ノーマルスキルの能力を組み合わせて使えるんだ……たとえば、こんなのとか」
そう言って、僕は『電光石火』を発動してライアの真横を通りその背後に移動し、今度は反対側からもともと立っていた場所に戻る。浮いているはずなのに『電光石火』がつかえたのは、もうそういう空間なのだと割り切っておこう。
「……速すぎない? 目で追うのが精一杯だったんだけど?」
実演して見せると、ライアは訳がわからないという感じでそう言ってきた。というかあれを目で追える時点で相当だと思うんだけど……君の『魔具工房』も十分過ぎるほど強いでしょ。
「で、こういうのとか強化したノーマルスキルとかで戦うスタイルだよ。前衛も後衛もある程度できるから、僕が合わせるよ」
「えーっと……後衛もいけるってことは、もしかして魔法とかも使えるの?」
「上級魔法までは全属性いけるよ」
「そうなのかぁ」
なんだろう、ライアから呆れとか諦めに近い感情を感じる……きっと気のせいだろう、うん。
その後はお互いが使える技や、どういう状況でどう動くかを相談して作戦会議の時間を使った……
それは作戦会議開始から30分後。僕らがそろそろ時間かと思って準備をしていた時のこと……
「どう? そろそろ時間だけど」
そういえばいつのまにか姿を消していたアルトさんが、急に現れて僕らにそう聞いてきた。
「ボクは準備万端ですよ!」
「僕もいつでも大丈夫です」
「そう……じゃあ、早速行こうか。これ、中に持っていっていい装備ね。あと頼まれてたトランプ100束」
ライア、どれだけトランプ頼んでたんだ……というツッコミは置いておいて、僕らはアルトさんから手渡されたリュック……というかバックパックを開く。
その中には、干し肉やドライフルーツなどの食料や飲み物、魔物除けやポーションなどのダンジョンを長時間連続攻略する上で必要なものが入れられていた。
「これが装備ね。さ、はやく背負って、行くよ」
「「はい!」」
僕らはそう言ってバックパックを背負い、準備を終えた。
「それじゃ……『フォーマルハウト』の前まで行くよ……着いた」
やっぱり毎度毎度移動が速過ぎる。確か王都から『フォーマルハウト』まで歩いて1時間くらいかかるはずなのに、一瞬にして到着してしまった。
『フォーマルハウト』。中級冒険者向け……と言われているが、それはあくまで階層数のみ。中に出てくるモンスターはB〜Sランクという、上級者向けダンジョンに匹敵するダンジョンだ。
王都の近くにあるダンジョンなので冒険者が多いと思ったが……『アークトゥルス』と同じくらいの人しかいなかった。推奨ランクがAランクだから、このダンジョンを攻略できるランクの人自体あまりいないのだろう。
「じゃあ私は魔力使いすぎて疲れたからダンジョンの前で待っとくね……おやすみ」
今言った! おやすみって言った! ちゃんと試験監督してくださいよ!
「ちょ、アルトさん!?」
「冗談だよラルク。この人案外お茶目なんだ、冗談とかよく言うんだよ……分かりづらいけど」
無表情だからわかりづらいなぁ……
「ライア、正解。そんなに分かりづらかった?」
「「はい。とっても」」
「むぅ……まあいいや。それじゃあ、気を取り直して……準備は出来たね?」
さっきまでの微妙な空気を打ち消すように、急に神妙な口調になってそう聞いてくるアルトさん。
「はい……ちょっと緊張しますけど」
「準備万端! いつでもいけますよ!」
全然緊張してないわけじゃない。正直、自信満々というわけでもない。それでも、僕には受かるしかないんだ。
「そう。それじゃあ……『ダンジョンアタック』、開始!!」
その言葉と共に、僕らの試験……『ダンジョンアタック』は始まった。
アルトさんは無口なだけなんです……無愛想では無いんです……




