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第九十話 待ち時間と始まり

第九十話! 果たして彼らの再試験、一体どうなるのか……!

 アルトさんから急な再試験の話を持ちかけられ、あと一時間で試験が始まると聞かされた直後に強制的に転送された後。


 転移先は学園の敷地内……ではなくファイルガリア平原を模したと思われるだだっ広い草原の広がる空間だった。そこには1次試験合格者たちと思われる多くの人たちが


 アルトさんの固有スキルはこんな風に、一次試験の合格者100人を収容出来る空間を作ることもできるのか……強すぎないか? というか、それより強いフィーズさんって何者なんだ……?


 閑話休題(わすれたころにやってくる)


 そんな空間の中、僕はまずマールとリールを探してなんとか合流した。2人とも『殺戮高揚(キリング・ハイ)』が使えないのに受かるか心配してのことだったが……


「甘いよラルク! 私たちを舐めないでよね!」

「そうだよラルク! 私たち、案外強いよ?」


 普通に合格していた。なんなら話を聞く限り、僕より危なげなく合格していた。迷宮氾濫(モンスタースタンピード)の時よりレベルアップした、双子のみに発現するスキル『共振』を使って死角のない索敵を続け、出来る限り会敵することを避けていたそうだ。


「次は2次試験だね……ラルクは待ち時間何しとくの?」


「次の試験でどのクラスに入るか決まるからね……Aクラス、行けたらいいなぁ」


「僕は……ちょっと1人で居とこうかな」


 2次試験を受けないことはあまり言わない方がいいだろう……そう思って、僕はマールとリールに嘘をついた。少し罪悪感はあるが、許してくれ……!


「そうなんだ……お互い頑張ろうね、ラルク!」

「分かった! お互い頑張ろうね、ラルク!」


 そうやって笑いながら返してくる2人。僕はそれを見て、騙してしまった気分になって少し胸が痛くなったが……


「……そうだね。お互い頑張ろう」


 それは顔に出さず、笑顔を浮かべながらそう返したのだった。




 僕はマールとリールとの話を終えた後、特にやることもなかったので人が集まっているところから離れ、体力を回復するため1人で静かに過ごしていた。


「……そろそろだよ、準備できた?」


 特に何も考えず、空……といってもこの空間内の仮初の空だが……を仰向けに寝転んでぼーっとしながら見る……ということを1時間くらい続けていると、急に横から声をかけられた。その声の主は……


「いつでも大丈夫ですよ、アルトさん。準備万端です」


 アルトさんだった。試験前に呼びにくるって言っていたから……つまり、そろそろ始まるということなのだろう。そう思って、僕は立ち上がりつつアルトさんに向き直ってそう言った。


「そう。ライアも準備はできてるし……じゃあ、今から早速会場に向かおうか……と言いたいところだけど、その前に試験の説明をしないとね」


「はい、よろしくお願いします」


 僕がそう言ったのと同時に、僕の視界は暗転し……さっきライアと話を聞いた真っ暗な空間に飛ばされた。そこにはすでにライアも来ており、まさに準備万端という様子だった。


 真っ暗な空間の中に沈黙が流れ、それを断ち切るようにアルトさんが再試験の説明を始める。


「2人とも、それじゃあ再試験の説明を始めるよ。心の準備はいい?」


「「もちろんです」」


 どんな試験でもどんとこいだ。フィリアと同じSクラスに行くためなら、試験くらいクリアしてやる。


「そう……それじゃあ今から、再試験……というか君達にはもう隠す必要ないね。ということで再試験改め……Sクラス昇格試験『ダンジョンアタック』についての説明を始めるよ!」


 そう言って、アルトさんはSクラス昇格試験『ダンジョンアタック』についての説明を始めたのだった。





「つまり、2人で協力して行けるところまでダンジョンをクリアしろ……ということですね」


「そう、そういうこと」


 細かい説明は少し長かったので割愛するが……この『ダンジョンアタック』のルールは以下の通りだった。


1.僕とライアで協力して、王都の近くにある全100層の中級ダンジョン『フォーマルハウト』を行けるところまで攻略する


2.制限時間は20時間、倒したモンスターの質や量、そして攻略できた階層数と貢献度などを加味してSクラスに入れるか判断する


3.食料・飲み物は開始前に支給。必要なものをアルトさんに言ったら出してくれる(もちろん、エクストラポーションなど高すぎるものはNG)


4.アルトさんは『固有スキル』を使って僕らの状況を見るだけ。どちらかがほぼ確実に死ぬ……という状況でない限り手助けはしないし、仮に手助けすることがあったら2人とも再試験は()()()、Cクラススタートとなる



 まとめるとこんな感じだろう。しかし、この試験は協力形式なのか……そんな僕の気持ちはお見通しと言うように、アルトさんは僕たちにこう告げた。


「チームワークとかも見たいしね。1次試験に合格するよりも遥かに高い実力と幅広い能力が必要な試験だよ、これは」


 なるほど、僕は基本ソロだから忘れていたが、冒険者は基本パーティーを組むものだからな。


「……まあ、説明はこんな感じかな。何か質問は?」


「大丈夫です、ちゃんと理解できました」

「僕も特にないですね」


 説明も終わり、そろそろ試験開始が近づいてきた。


「それじゃあ、今から30分間で作戦を立ててもらって……そのあと『フォーマルハウト』まで移動するから。作戦会議、スタート』


「一緒に頑張ってSクラスに行こうね、ラルク!」


「もちろん。頑張ろう、ライア」


 そうやって、僕らのSクラス昇級試験は始まった。絶対にSクラス行って見せるぞ……!

波瀾万丈の再試験、開幕!

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