第八十五話 第一試験『トレジャーハンティング』
第八十五話! 一次試験、開幕!!
「うわぁぁぁあ!?」
僕はほんの一瞬前まで地面に立っていたはず……それなのに、なんで今落ちているんだ!?
急に地面にできた大穴に飲まれ、真っ暗な空間を落ちている……何が起こっているか分かっているのだがそれでも理解が追いつかず、驚きのあまり出てきた叫び声があたりに響く。
叫びながら落ち続けること数秒。下のほうから光が差し込んできた。出口に向かって落ちていたのか……って、着地しないと! 僕は咄嗟に『受け身』『鋼の肉体』の発動準備をする。その光はだんだん近づいてきて、あたりを眩い光が包み……
「……え?」
特に着地をする必要もなく……気づいたら高級そうな家具や装飾の立ち並んだ部屋の中にいた。たしかに僕はさっきまで、速い勢いで落下していたはず……いや、今はそれを考える時じゃない。試験の突破が優先だ。
とりあえず状況を把握しようとあたりを見渡す。皮のソファーに大きな絵、アンティークっぽい時計など……全体的に高級感があるところ以外は特になんの変哲もない部屋だ。確か、赤色の宝玉を探せば良いんだよな……この部屋にあると良いけど。
(見つかるかな……『索敵』『魔力操作』!!)
僕はコンシールカメレオンを探すときに使ったノーマルスキルの組み合わせを使い、近くに宝玉がないか探そうと試みる。すると……
(なんか変な反応がある……?)
なんだこれ? 一部分だけ索敵出来なくなってている? そこに何かあるかもと思い、僕はその場所……皮のソファーの脚の下を覗き込む。するとそこには、薄く光る赤い宝玉があった!
「見つけた! よいしょ……っと」
僕はその薄い光を出している宝玉に手を伸ばす。そしてそれに手が届き、宝玉をしっかりと掴んだ……その瞬間、その宝玉はさっきまでと比にならないくらいにまばゆい光を放ち始めた!
「うわっ!?」
目が潰れてしまいそうなまでの眩しい光。僕はそれを至近距離で直視してしまい、一瞬目の前が真っ暗になったと思ったらその直後にチカチカする感覚に襲われ……思わずその宝玉から手を離す。すると発せられた光は収まり、それはただの赤色の宝玉になった。
「受験生が触ったら光る仕組みなのかな……?」
僕は一旦、今の現象に対して仮説を立てる。しかしこの仮説が正解だとしたらこの試験、相当性格が悪い。
もしのこのことあの宝玉を持ったまま歩き、あんな光を撒き散らしていれば、沢山のライバルたちの目につく。そして宝玉を我が物にせんと近づいてきた人たちにリンチされる……ということだ。
だからフィーズさんは説明の時、『奪ってもよし』なんてわざわざ言ってたのか…….難しすぎないか、この試験。
しかしかと言って、このまま何もしないでいると不合格まっしぐらだ。こんな状況で、一体どうやってクリアすればいいんだ……あれ、ちょっと待てよ。
もしこの宝玉が受験生が触った時のみに光るものだとしたら……なんで『索敵』で見つけたときに光っていた?
まさかとは思うがこの宝玉……魔力に反応して光っているのか!? もしそうだとしたらいくらでもやりようはある。僕は『魔力操作』で少しだけ自分の魔力を宝玉に向けて飛ばす。すると……
「光った……!」
宝玉が薄く光を発した。やはり、この宝玉は魔力に反応して光っているんだ! これなら『魔力操作』で手に魔力を行かせないようにすれば安全に運ぶことができる!
(そうと決まったら……出口を探そう!)
僕は『魔力操作』をしつつ、その部屋を後にして出口を探しに向かうのだった。
部屋の扉を開けると、またあの空間……ということはなく、白色に塗られたお城のような廊下へと繋がっていた。結構遠くまで廊下は続いており、無数のドアが壁にある。いくつか既に開かれているものもあり、誰かが探索したのだろう……。
というかこの廊下……長すぎないか? 僕の目は結構良い自信があるのだが、全然突き当たりが見えない……。やはり、何かがおかしい。
まあそれは置いといて、出口を探そう……そう思って歩き始めたとき、目の前のドアが勢いよく開いて中から人が飛び出してきた!
「うわっ!?」
「出られた……って、他の受験者かよ! あーー、えーーっと……なあアンタ、赤い宝玉は持ってるか?」
驚く僕のリアクションを差し置いて、その子は僕に宝玉を持っているか聞いてきた。
(『高速思考』……! さて、どうしようかな……)
ここで僕に与えられた選択肢は二つ。
一つは本当のことを言うこと。もしも目の前の人が宝玉を持っているなら、お互い協力関係を築くことができる……が、持っていなければ襲われる。
もう一つは嘘をつくこと。正直、これが一番安全だが……
(念のため、協力者が欲しいな)
1人より2人の方が試験に受かりやすくなるだろう。仮に嘘をついても僕じゃあうまく騙せる気がしないし、1対1なら僕も結構戦える。だからここは本当のことを言っておこう……
「持ってるよ。君は……?」
さて、吉と出るか凶と出るか……
「お前もか! 実は俺も持ってるんだ、宝玉! なぁ……2人で組まないか?」
良かった……どうやらこの子も持っていたようだ。しかも、協力まで持ちかけてくれるなんて……この子と一緒に行動することにしよう。
「君が良いなら! 僕はラルク……君の名前は?」
「俺の名前はダリオ! よろしくな、ラルク!」
そう言って笑顔と共に手を差し出してくるダリオ君。僕はその手を握って……そのまま投げ飛ばされた。
「掛かったァ!!」
豹変するダリオ君。まわる視界と浮く体。これから考えるに、もしかして僕……騙された────!?
ラルクは対人経験があまりありませんが、果たして勝てるのか……!




