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俺のマスターは吸血姫~無双の戦鬼は跪く!~  作者: 黎明煌
第十章 「無双の戦鬼と、二度目の夏」
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669 「右ストレートでブッ飛ばす」



「それよりも先輩、ついにジンジンとエッチしたんですか……それも学園のトイレでって、いったいどういう……」

「んん~? ナ・イ・ショ♪ お子ちゃまに話すにはまだ早いかにゃあ~♪」

『──薄壁一枚。他の男さえ出入りする男子トイレの中、その薄壁だけを頼りに、あたし達はしめやかに快楽を貪り合った……』

「ごくり……ど、どう、でしたか?」

「まー、及第点? ヘタクソとまでは言わないけど、ちょっと独りよがりだったかにゃ~。しゃあけど? 日本一可愛いアイドル相手なんだから、そこは優しく受け流してあげんのが良い女の見せ所っていうか?」

『──腰をガッシリと固定されて、後ろから突かれるのホントダメ。ねっとりとしたストロークもマジでダメ。喘ぎ声をディープキスで塞がれるのもダメダメのダメ。そんなのされたら……ダーリンのことしか考えられなくなるくらい、頭がトロトロになっちゃうから……ほんと、ダメ……♡ あんなの、耐えられる女いない……♡』

「はぁ……! はぁ……!♡ そ、それで!?」

「それでもなにも。フィニッシュさせてあげて、ガーネットちゃんは『まぁまぁだ』っつってクールに去ったよ。アスファルトをタイヤで切りつけながら暗闇を走り抜けてね」

『──最後の瞬間まで密着してぎゅう~~~♡ ってされながら、余韻と共に優しくキス……これ。これね! この時にはもう頭ん中『しゅきぃ……♡』、『ぜったいぜったい結婚すゅ♡』、『産みたい♡』しかなかったわ。だってあたしだけよ? 最後まで繋がって、ダーリンの全部を受け止めてあげたのは。このハジメテだけはコイツの女として譲れなかったね。とんでもねぇ充実感と優越感だったぜ……ソッコーで他の女にマウント取りに行ったわ。ブライダルフェアの時の誓いのキスもあたしが最初だったみたいだしな~、その場にいねぇのに! 同棲って環境に甘えてるから、離れて暮らすアイドルに美味しいところ全部食われちまうんだよぁ! こ、こんなことが許されていいのか……こんなに食って許されるのは、あたしかカ○ビィかブ○ロの潔○一くらいなもんだろ……』

「先輩って、実は付き合ったらすっごく尽くしてくれる女の子ですよね……というか複数の女の子と付き合ってるの本当だったんだ。それでもジンジンのこと、すっごく好きなんですね~……♡」

「フツーだよ、フツー。かにかまの次くらいには好き」

『──以上の記述をもって、あたしがダーリンのことを一番愛してる女として証明するものとする。ぜってぇ負けねぇ。ぽっと出のバチカンの酔っ払いには尚更負けねぇ。いやリゼットちゃんとあたししか処女が残ってない段階で、なんか急にティアたんが同棲し始めて焦って今回のコトに及んだとかそんなんじゃないよ?』

「今後の抱負を教えてください」

「次はテメーのケツアナを開発する。尻を洗って待ってな、無双の戦鬼!!」

『──次もまたナカに出していいよ♪ うぅん、出してねダーリン♡』


 パァン──!!


「ひぇ……」

「カノンちゃんさぁ……ひどいよ」


 乾いた発砲音の後、煙を燻らせる銃口。部屋を満たす火薬の香り。


「なんで全部暴露しちゃうの? 悲しいじゃん」


 頬を掠めた銃弾に河合カノンが小さな悲鳴を漏らす中、ガーネットは俺の力を汲み上げて造った本物の銃……その銃口を向ける。笑顔で。笑顔の魔法使いは、常に笑顔を忘れないのだな。


「最初の一回でやめとけば、あたしも見逃すつもりだったのによぉ? 魔法の扱いは難しいもんな?」

「せ、先輩……」

「なのに、なんでこんな真似すんの? 知っててやられちゃったら、君のこと助けてやれないよ……」


 そうして貼り付けた笑顔のまま、撃鉄を再び起こす。


「──もう殺すしかなくなっちゃったよ。でもいいよな? 二人一緒に殺してあげるから」

「ジンジン助けてぇ!」

「俺も勘定に入っているのか……おっと」


 いつの間にか握られていた二丁拳銃。そこから放たれる二発の凶弾を、素手で掴んで止めた。妙な術技が込められているな……記憶だけを殺す魔弾か。誰かが放ったのを見たのか、それとも撃たれたのだろうか。撃たれたのだろうな。


「アタシ オマエラ コロス」

「怒りでカタコトに!? ごめんなさい先輩! でも止め方が分からないんです!」

「スマホ型の魔具出しといて『止め方分からん』はないやろがい! 普通に電源落とせや!!」

「……も、もうちょっとだけ……」

『──右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす右ストレートでブッ飛ばす』

「読心術師を殺すためだけの思考やめてくださいぃ~!!」


 右拳を振り上げてジリジリと迫るガーネットに、泣きながら後退る河合カノン。心が読めたところで、真正面からの暴力には無力なのだ……。


「あ、あっ! ジンジン! ジンジンは!? 先輩のことどれくらい好き!?」

「──っ」


 先輩からのパワハラから脱するべく、河合カノンはその矛先をこちらに向けた。思惑通り、ガーネットはピクリと耳をそばだてて動きを止めている。いや、むしろ河合カノンにコソコソと歩み寄り、耳打ちさえしているぞ。


「こしょこしょ……」

「え? 『誰とのエッチが一番気持ち良かったかも聞け』?」

「っ!」

「いったーい!?」


 頭をシバかれる河合カノンだが、耳打ちしている時点でガーネットがこちらに聞きたいことがあることなどバレバレである。


「いたた……え、えっと、聞こえてた?」

「ああ」

「それで……ど、どう?」

「うむ」


 上目遣いでワクワクする河合カノンと、恥ずかしそうに目を逸らすガーネット。恋バナに華を咲かせる、どちらも乙女よなぁ。

 そんな乙女達を前にしながら、俺は和服の袖を巻き込んで腕を組み頷いた。


「無論、俺は我が王達を平等に愛している(無論、俺は我が王達を平等に愛している)」

「おぉ……」

「性交については、一概に比べられるものではない。それぞれの少女に、それぞれの良さがあるがゆえにな(性交については、比べられるものではない。それぞれの少女に、それぞれの良さがあるがゆえにな)」

「とりあえず、先輩は頭の回転が速いから心の中でよく喋って、ジンジンは裏表がない男の子なんだなぁっていうのがよく分かったよ」

「それコイツが頭悪いって言ってる? 合ってるけど」

「強いて言えば……アイドルとして日々鍛練を続けているためか、その締まりは大変によい具合で我が童子切安綱を快楽へと導いてくれた……(強いて言えば……アイドルとして日々鍛練を続けているためか、その締まりは大変によい具合で我が童子切安綱を快楽へと導いてくれた……)」

「喜んでいいのかよく分かんねぇ情報ドーモ」

『きゃあ~~~♡♡♡ 嬉しい♡ 嬉しいっ♡♡♡』

「めっちゃはしゃいでるじゃないですか」

「テメー、いい加減にしねぇとこの場でおっ始めてその拗れた恋愛脳を二度と戻らねぇようにトマトペーストみてーにグチャグチャにすんぞ? おぉ?」

「…………ごくり」

『……ど、どうぞっ。お構いなく!』

「コイツ怖ぇよぉ~~~……」


 ガーネットが恐怖で泣いた……。


「刀花ちゃんによくない目で見られるサヤちゃんの気持ち分かっちゃったぁ……」


 可愛い後輩を持てたようでなによりだ。


「しくしく……あ、ごめん着信。もしもし? あ、ボス? はよ来てこのモンスター引き取ってくんね? そんで暇してる師匠枠の魔術師メンツにいつも通り押しつけたまえよ。うん、うん……そう、あたしの後輩……はぁ!? あたし!? いやいやいや! 確かに一級で資格はあるけども! でも今その恐怖を植え付けられたトコなんだってばよ! この子と二人きりは……え? ダーリンも一緒に? なお悪い!!」


 電話口でやいのやいの言うガーネットだが、どうやら同業のよしみで師匠を任されそうになっているようだな。

 それを察してか、河合カノンがヒョコっとこちらに小さい肩を寄せる。


「もしかして、先輩が魔法を教えてくれるのかな? ジンジンも一緒に? なんならジンジンが師匠になってくれてもいいよ?」

「悪いが俺は、殺しの魔術と紅茶を淹れる魔術しか知らん」

「すごい二択だね。じゃあ先輩の下で、ジンジンも一緒に魔法を勉強しよう!」

「……やぶさかではない。魔術は可能性の塊だからな。加えて言えば、ガーネットにとっても秘密を共有する同業者ができるのは、決して悪いことではないだろう」

「どこまでも先輩のことを考えるジンジン素敵……♡」


 俺はこの者のツボがよく分からん……単に俺のことが好きなのか、ガーネットのことが好きな俺のことを好きなのか。どうなっている……。


「うす……うっす……ちっ……あの経産婦め」

「終わったか、ガーネット」

「よろしくお願いしますね先輩! いえ、師匠!」

「決定事項みたいに言うんじゃあないよ。ったく~」


 帽子越しにピンクの頭をガリガリとかき、ガーネットはため息をつく。その姿から既に、なんだかんだ言いつつ河合カノンを預かることが窺い知れた。


「……言っとくが。あたしは厳しいし、更に言えば感覚派魔法使いだから教え方のタチも悪いぞ」

「頑張りますっ! ね、ジンジン♪」

「ほどほどで頼む」

「うるせぇ~~~。『受けた恩は倍にして返す。受けた屈辱は何百倍にもして返す』それが吉良坂流魔術教室が伝授する最初の教えよ。覚悟しとけよテメーら」

「肝に銘じます!!」


 闇の魔法使いを輩出する教育機関か?


「オメーも返事! いくらあたしのダーリンだからって、そこは公私混同しねぇからなっ!!」

「承知した」

『嘘だよ♡ ホントは実技オンリー夜のドキドキ魔術教室を期待してるよ♡ 楽しみだねダーリ──』

「『シュガー・メイプル・シナモンロール! ”バキバキに硬くなった(オニイチャン・)巨根を(ハ・)女の子に生やす魔術(オシマイ)”!!』」

「なんという魔術を……」

「あたしが開発したオリジナルスペルだお☆」

「これ消えるんですよね!? これ消えるんですよね!? ね!?」

「ちなみに、なぜそのような魔術名なのだ?」

「──『尻を洗って待ってな』っつったろ?」


 なるほど……ベッドの上でお兄ちゃん(おれ)おしまい(おんなのこ)にする魔術というわけか……女の子にされてしまう──!!


「しくしく……違和感すごいよぉ……しくしく……」

「魔術、魔法は恐ろしいものだとまずは理解しなちゃい」

「充分すぎるほど分かりましたぁ……」


 まずはその教えを、身体に叩き込まれる河合カノンであった……。

 ……それにしても。


「ククク……」


 股間を押さえてうずくまる河合カノンと、その横で仁王立ちするガーネット。

 そんな新たな師弟関係の姿を前に、俺はクツクツと肩を震わせた。


「なにわろ。え、実は開発されたかったのん?」


 そんなわけがあるか。


「ただ……いや、そうだな」

「あン?」


 河合カノンの手にあるスマホ型魔具を顎でしゃくれば、そこから俺の声が響く。


『──出会った頃には、己の中に眠る魔法に右往左往していたというのに。今ではこうして、同じような境遇の者に手を差し伸べようというのだ。お前の隣に立つ者として、成長したその姿を誇らしく、そして嬉しく思わずにいられるものか。俺のアイドルは、魔法使いは……やはり最高の女だ、吉良坂ガーネット』

「……恥ずかしい長文垂れ流してんじゃねぇよ。ばか」


 ……照れ臭そうに叩かれた肩の痛みは、何百倍ほどには到底届かぬほどの優しい痛みであった。

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