朗報
「神野さん、本当に奇跡の様な話しで驚きなんですが、癌細胞が良性の腫瘍に好転しているんですよ。採血をした数値を見ても、リンパへの浸潤も認められません。本当に良かったですね」山井先生の明るい表情を見て、悦ぶべき所なんだろうけど、ボクは困惑してしまっていた。何故ならボクは、とっくに死を覚悟していたし、その為に、仕事を辞め、殺し屋にまで身を落とした人間なんだ。素直になんて悦べない。
「それで、今後なのですが、良性の腫瘍ですから手術をしてさっさと取ってしまいましょう。それも出来るだけ早く」
明るく続ける山井先生にボクは「ちょっと待って下さい。少し考えさせて貰えませんか?」と反論した。
「待つってどうして?幾ら良性だからと言っても放っておけば、再び癌細胞に変わってしまう事もあるし、病巣が広がってしまう事もあるんですよ」山井先生の言う事は至極最もなんだけど、何かがボクの中で引っ掛かっていた。「本当にスミマセン。ボクは余命宣告を受けて、仕事まで辞めたんです。今は取り敢えず少し頭を整理したいので、今日の所は帰ります。必ず近い内に連絡させてもらいますので」
病院を後にしたボクは、帰路の中、引っ掛かっている何かに付いて考えてみた。そしてある一つの仮説を立ててみた。
余命宣告を受けてから、今で約二ヶ月、そして殺した動物や人間が…んー?これは家に帰ってから整理しよう。その殺害方法が、潰すイメージじゃ無く、吸い取るイメージ。その事から導き出される答えは、ボクはターゲットの命を"本当に吸い取っていた"と言う事、吸い取って自分の命にしてしまっていたと言うものだ。だからボクの"病気が良くなった"んじゃ無く、"寿命が延びてしまった"と言う事だ。そう考えれば辻褄は一応は合う。じゃあもしかしたらゴキブリの命も?ボクは背筋を冷たいものが伝ったのが分かった。
取り敢えず家に帰って色々と調べながら、少し整理して考えよう。ボクは家路を急いだ。




