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ファーストミッション

   ジャスティス様


 ご了承頂いていた案件についてのご案内です。ターゲットの氏名は"引田ひきた 藤蔵とうぞう"と言う、現在58歳の男です。続いて引田の出所ですが、K県の早田はやた刑務所から早ければ11月7日、それより3日後の10日迄には出るとの事です。時間に限っては分かりませんが、通常は早くて午前8時、遅くとも午前中には出所するのが通例です。これらの情報は当方の闇ルートより仕入れたもので、ほぼ間違い無いと思ってた頂ければ結構です。

 出所時をのがすと足取りがつかみにくくなりますので、どうかお見逃し無き様、お願い申し上げます。多少のタイムラグが有りご苦労をお掛けします。成功が確認されれば先にご指定頂いたご口座に¥1、000、000お振込致します。

 それでは無事、成功される事を願っております。


               アサシンバンク


いよいよ来たか!今日が6日で明日からの決行だな。それから10日は月曜日だから休暇を取ってる最終日の次の日か?何とかそれまでに出てもらわないとなぁ。

ボクは明日に向けて練習をする事にした。絶対に失敗は出来ない。人目を忍びたいので練習は夜中にしよう。ボクはコンビニでカップ酒を5~6本買ってガブ飲みした。余り酒が強くないボクは、3本目を飲み干した所で眠りに落ちた。


目を覚ますと時刻は2時少し前だった。まさ草木くさきねむうしどきってヤツだ。練習には丁度いい。

ボクは誰かとすれ違ったりしても怪しまれない様にダウンコートにジーンズを着用して懐中電灯を持った。これで誰かとすれ違っても懐中電灯で地面を照らしながら"ミーちゃん、どこ行った?"などとつぶやけば逃げた飼い猫でも探しているのだろうと怪しまれずに済む。


11月と言えど、夜中はやはり寒い。昼間は良く晴れていたし、今も綺麗な月が見えるからおそらく放射冷却だろう。股引ももひきでも履いて来れば良かったと思いながらすっかり冷たくなったジーンズの太腿ふともも辺りをてのひらこすっていると、懐中電灯の光が1匹の猫を照らした。首輪はつけていないので多分、野良だろう。可愛そうだが犠牲になってもらおう。

"猫ちゃん、ゴメンよ命よこっちへ来い"

すると、猫はスッと逃げてしまった。

あれ?おかしい!何が違う…?

そうか!同情だ!ターゲットの命を吸い取るんだから同情なんかしてちゃダメだ。憎しみまでは行かなくてもターゲットの命を奪うのだから同情なんかしてちゃダメなんだ。


再びボクは夜中の町を彷徨さまよった。

次は犬だ!ボクはどちらかと言えば猫派だからこっちの方がやり安い。

"ワン公!命をもらうぞ"

犬は急に苦しみ出し、地面をのた打ち回った。

そして最期に"ギャン"と鳴いて動かなくなった。

よし!上手くいったぞ。


その後もボクは彷徨い続けて、イタチ1匹と猫2匹を仕留めた。その頃、ようやく空が白み始めた。

"よし!そろそろ早田刑務所に向かうとするか"

ボクはそのまま県道まで出て、タクシーを拾って早田刑務所に向かった。到着したのは7:32だった。ボクは運転手に知り合いが出所するのでと言い、受刑者が出て来る近くで降ろしてもらった。

タクシーが行き過ぎるのを確認すると辺りを見渡した。丁度、門扉もんぴの前辺りが小高い丘の様になっていて身を隠すのに良い場所だ。

いい感じの木陰に身をひそめ、スマホで時間を確認しつつ、途中でコンビニで買ったアンパンをかじりながら門扉を凝視ぎょうしした。

なかなか出て来ないなぁ?まぁ今日と決まってる訳じゃ無いし…と思っていたら、門扉が音を立てて開いた。時刻は10:23…運営から送られプリントアウトしておいた写真と見比べた。

間違い無い!引田だ!引田藤蔵だ!

写真をダウンコートのポケットにしまうと急いで丘を下りた。そしてヤツを尾行した。しかしこの行動が悪かった。引田はボクに気付きコチラに向かって来た。

「何だ?兄ちゃん!ワシになんか用か?」

一瞬焦ったが、直ぐに冷静さを取り戻し

「なんですか!貴方こそ!ボクが行く方向にアナタが先を歩いてただけでしょ?変な因縁付けないで下さいよ」と返した。

すると引田は、ボクの言った事に合点がてんがいった様に「あぁ、スマンな!ちょっと気が立っててよ、ワリィ、ワリィ」と言って先を行ってしまった。

引田は出所したばかりで廻りに対し、より敏感になってたんだ。迂闊うかつだった。

ボクはかさず廻りを見渡し、誰もいない事を確認すると、引田に向かって念じた。

すると引田は胸を押さえて苦しみ出した。そしてそのままひざから地面に崩れ落ちうっした。

ボクの額はこの寒空にも関わらず汗でビッショリ濡れていた。ボクは高鳴った胸に手をやり、荒い呼吸をしながらその場を後にした。

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