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初依頼

"チュンチュン"と雀の鳴き声が外から聞こえて来た。ボクは目を半開きの状態で手探りでスマホを手にした。スマホの液晶の光に目を細めながら時間を確認した。


「もう9:30か…」有給を含め一週間の休暇を取っていたボクは、珍しく寝坊をした。

キッチンに行き、インスタントコーヒーで作ったカフェオレのマグカップを手にデスクの椅子に腰掛けた。そしてパソコンを立ち上げ例の闇サイトへアクセスした。

運営側からメッセージが来ている様だ。ボクがバナーをクリックすると"ジャスティス様へお薦めの案件"と言うメッセージが表れた。カフェオレを口に運びながら、メッセージをクリックすると、十数件の案件が羅列されていた。ボクは画面をスクロールしながら適当な一件をクリックした。


"彼の浮気癖が何度言っても直りません!

どうか彼を改心させる為にも少しらしめちゃって下さい"

フン!何だよこれ!このサイトの意味、分かってんのか?懲らしめるって…このサイトは暗殺者を紹介するサイトだぞ!死んだらお宅も悲しむんだろ?

ボクは画面を元に戻して他の案件に目をやった。


「おっ?これは?」気になったメッセージをクリックした。


"もう八年も前になりますが、当時小学二年生だった私の娘が、飲酒運転の車に轢かれて亡くなりました。運転していた男は当時まだ、厳罰化されていない法の元、たった懲役10年の刑で確定されました。そして、この程、仮釈放されると耳にしました。私はこの男をゆるす事が出来ません。男が死んだ所で娘がかえって来ない事は重々承知しております。でも、あの男の身勝手な行動で娘が亡くなったのにも関わらず平然と社会に戻って来るなんて私には耐えられません。どうか…どうかこの男に鉄槌を下して下さい。どうかよろしくお願い申し上げます"


こう言うヤツだよ!こう言うのを待ってたんだ。

よし!これに決めた!

ボクはメッセージをスクロールして行って下部にあった"了承"をクリックした。

しばらくして、運営から返信が来た。ボクは飲みかけのカフェオレを一気に飲み干し返信を開いた。


"ジャスティス様


 この程のご依頼の件、ご了承頂きありがとうございます。ジャスティス様は今回が初めての承諾の件ですので少し流れをご説明させて頂きます。

 まず、ご依頼者様に了承頂いたアサシンから申し入れがあった事を連絡致します。その後、ご依頼者様よりターゲットに関する情報などを入手し、貴方様にご連絡致します。

 内容をご確認の上、本当にご了承頂いた場合"確定"をクリックして下さい。

 実行日時等はアサシン様に全ておまかせする運びとなります。 尚、報酬に関しましては、貴方様に告げた金額にご依頼者様には10%を上乗せした金額を請求致します。10%分は当運営の取り分となります。 

 ジャスティス様は希望報酬額を失礼ながら非常識に低く設定されておりますが、当方と致しましては最低額¥1、000、000からの設定をお願いしております。当方もご登録頂いている他のアサシン様も慈善事業でしている訳ではありません。ジャスティス様のご事情は計り兼ねますが何卒なにとぞご理解の程よろしくお願い申し上げます。

 最後になりますが、このあと、下記のバナーをクリックしてメッセージ消去アプリをダウンロードする事をお薦め致します。登録画面にもありましたが、ここでのメッセージのやり取りは全て消去して頂かなければなりません。アプリをダウンロードして頂くと、このサイト内のメッセージがサイトを閉じてから一時間で自動消去されるものです。これによりメッセージを消去し忘れる事が無くなります。ご依頼内容等は他のメディアにコピーするなどして、呉ぐれもその管理は厳重になされる様、お願い致します。

 それでは、当方からの返信をお待ち願います。


              アサシンバンク


ボクはアプリをダウンロードしたあと、背中がビッショリと濡れている事に気が付いた。

余命幾ばくも無いとは言え、凄い世界に足を踏み入れてしまった事を実感した。

でも、覚悟は出来ている。もう後戻り出来ないし、しない!これからボクの世直しが始まるんだ。

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