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俺の役目って何ですか?あ、カレー作りですか。えっーと、

慈音さん、紅蓮さんの彼女達が理不尽にもどっかの世界に飛ばされたと知ったライモンさんは、まず二人に頭を下げた。

「すまない、また、巻き込んだ。」

「……まさかのユリダリア。」

大きなため息を吐く。


ユリダリアって、何者?


「何でこんなことに。」

俺は今、山道を歩いている。

騙されて連れてこられたドイツの山を下っている。

とぼとぼと歩く。

下り坂は、膝をカクカクさせるけど、疲れは感じない。

思ったことは自分が何をしにドイツくんだりまで来たのか。

何で、なんで、ナンデ。

自分の状況を整理する。


俺は廃墟が好きだった。

国内は行き尽くした。

だから、あいつの口車に乗せられてここにきた。

国内の廃墟巡りを諦めて、金を貯め、人の分も残業し金を貯め、清水の舞台から飛び降りる覚悟でドイツにやって来た。

何故?廃城をこの目で見たかったからだ。

初の海外に浮かれていたのも事実。

だから、危険に気付かなかった。

ネットの仲だったけれど、俺は親友だと思っていた男に殺された。

不思議と自分をハメタ男の名前が思い出せない。

『ほら、キリキリ歩け。』

頭に響くのは紅蓮さんの声。

『もう死んでるし、疲れ知らずでしょ。』

絶対お茶でもしながら俺の行動を見張っているに違いない慈音さんの声がする。

言われるように確かに苦痛はない。

けどね、精神的にさ、胃が痛い。

体の中の臓器はすでに機能停止しているらしい。

だから、胃の痛みを感じることはないとライモンさんに言われた。

つぅことは、何かを経口摂取する必要なしってことなんだけど、なんか淋しい。


俺は廃墟同様カレーを愛していた。


食べる必要なしと言われても今までに培ってきた嗜好を投げ捨てるつもりはない。

必要はないと言われたが食べられない訳じゃない。

ただ食べたものは、消化されず微々たるエネルギーに変換されるだけらしい。排泄もない。俺の体の内臓は、腐っていくのか?とライモンさんに尋ねたらこの世界の細胞組織ではなくなったから腐りはせず、中に存在するだけだという。

人でなくなった瞬間に俺の内臓はライモンさんの世界の細胞組織に作り変えられ一度死に不死のものとして生き返ったのだという。

出掛ける前にそう言った俺に皆がカレーを知らないと言った。

食べ歩きもだけど、作るのも好きだと熱弁した。

熱弁したのが悪かった。

『じゃあ、そのカレー作ってよ。』

慈音さんの一言。

『ついでに主に宿っているだろう力がどんなものか知りたいし。』

「ところで、どうして俺は1人で喋り続けているんですか?」

先程から俺は自分の言葉だけじゃなく、ライモンさん達の言葉も声に出している。

独り言がすげぇ変人状態だ。

『気にしない、気にしない。』

語りに表情もつられている。百面相をしているように見えるだろうな。

「カレーの材料を手に入れたら、そっちに戻ればいいですか?」

『そうだな…後は、主の憂いを取り除こう。』

足が止まる。

「憂い?」

『主が完全に主たる存在となるために。』

意味がわからないんてすけど。


眼下に町が見えてきた。

おー、文明開化の光だ。

等と考えていると、とうとう山から降りることができた。

新鮮だろう山の空気とは、ちと違う気がするけど。

『此方だ。』

自分の口から出た言葉に体が従う。

ひたすら歩いた。

歩いて広い国だと思った。

すれ違う車の数が増えて来たと思ったら郊外型のショッピングモールらしい建物とこれまた広い駐車場が見えた。

理解できないはずの看板の文字が読めた。

食糧もあるらしい。

カレーの材料はここで買おう。

でも金ないけど…。

と思ったらデニムのポケットが重くなった。

探るとお札。

いつの間に。

モールのスーパーへカートを押して進む。

じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、ひき肉、リンゴにパイン。

おー、スパイスも揃ってる。

以前のようなウキウキ感はないけども楽しい!

米は……炊けるのか?

ん、火があれば何とか。

色々頭の中で考えながらカートに入れていく。

かなり。重い。

これを持ってあの山を戻るの?

疲れない体になったとは言え、めんどくさい。

と、思ってたら、カートの中の荷物が消えた。

び、びっくりした。

空間魔法とやらで荷物は城に運ばれたらしい。

だったら、俺も此処に運んでくれたらあの道のりいらんかったんちゃうん。

『未経験値は転出来ない。』

なるほど。じゃあ、行きはダメでも帰りは?

『主にはまだしなくてはならないことがあるから、まだ転送しない。』

あ、そーですか。


何だかんだと操られて、俺は俺を殺したやつらを殺して回った。

罪悪感も何もなくなってるのには驚いた。

ライモンさんが不死に為った影響だと言った。

拳銃で撃たれたのに死なず、あまり衝撃もなかった。衝撃を受けていたのはやつらの方で、よく見れば奴等は年をとっていて俺が死んでから10年以上時が経っていた。

昔のことなどすっかり忘れて家族まで作っていた。

俺をドイツまで呼び出した男は事件のあと日本に帰ったらしい。

其にしても血塗れなんだが。

心の中で思っていると体が一瞬光って服が洗濯仕立てのようになった。

魔法って便利だなと思った。

『主、カレーは?』

面白がってジオンさんが言った。

気のない返事をして考える。

スパイスとか考えて作るのは楽しいが何だか面倒くさくなってきた。

『じゃあ、一旦帰ってきて。』

その一言で目の前にライモンさん達。

帰りは一瞬か。


あのあと気付いたら日本に飛んでいて名前を忘れたアイツの前に現れて驚かした後、アイツにはサクッと死んで貰って、何故かスッキリして。

カレーの具材を揃えて城に帰った。


カレーを作りながらライモンさん達が今後のことを話している。

時々俺にも意見を求めてくるけど、よく分からないから決めていいって告げた。


これから時空を越えて転移した彼女達を探すらしい。なんか、漫画か小説の世界みたいだ。

ライモンさんは俺のことを主と呼ぶけど、俺は傍観者になりたい。時々カレーを作って食べて古い城とか見に行けたら最高だな。

殺されて、死なない体になったけど、好きなものは変わらないし。

これからの長い人生を楽しもうと思っている。



終わり

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