改めて乾杯
「それじゃあ改めまして、かんぱーい!」
店についてすぐ、注文を通してみんなの手に酒が渡ったところでみなみが音頭を取った。それに合わせてみんなでグラスを鳴らす。
「いやー、でも思ったよりも敵少なくて良かったっすねー」
「ですね」
グラスを傾けながら話す。
「この前の襲撃は大変でしたから」
「そんな高頻度で襲撃があるんですか?」
「前までそんなことなかったんですけど、最近は多いんですよ。全く面倒くさいったらありゃしないっす」
みなみがとても嫌そうな顔をしながら答える。
「ま、文句ばっか言ってらんないんでとりあえず飲みましょー!」
直前までの苦い顔から一変、みなみ手に持っているグラスを口元に持っていって、喉を鳴らしながら酒を嚥下する。
「そういえば初さんの携帯からあいつの声しましたけど、なんか変なの入れさせられたんすか?」
「別にそんな強制された訳じゃないけど」
「どうすっかね。あいつなら充電しようとケーブル繋いだだけでも入ってきそうっすけど」
「それは……」
初は否定しようとしたけれど、マドレならやりかねないとつい思ってしまった。
「全く失礼ですね」
そんな初の様子を見かねてかシロの持っているタブレットから声が聞こえた。それに合わせてシロはタブレットを机の端で壁に立てかけた。
「ま、日頃の行いってやつですね」
「おや、私には心当たりがございませんが」
「自分のこと客観視できないのは大変っすね」
また始まった二人の舌戦に初は目を逸らした。特に意識をして目を向けたわけではなかったが、目を逸らした先で、両手でカシオレの入ったグラスを飲んでいるいのりが目に入った。中身を知らなければジュースを飲んでいる中学生にだって見えただろう。初のその視線に気づいたのか、いのりも初の方に視線を向けて首を傾げた。
「いのりさんはあの魔法をどうやって使えるようになったんですか?」
場を取り持つ意味もあったが、実際に気になっていたことを訊いた。
「あれは私の前にいたチームで開発した魔法なんですよ」
「前にいたチーム?」
「はい。私これでも医学部出身でして、そこからトクマの医療部隊に配属になったんです」
「いのりさん医者だったんですか?」
「医師免許は取得しましたけど、まだまだですよ」
「にしてもすごいですね」
「へへ。ありがとうございます」
いのりはくすぐったそうに笑った。
「あ! 初さんずるいっす! 私もいのりちゃんに笑顔向けられたいっす!」
そう言ってさっきまでマドレと言い合いしていたみなみが割り込んできた。
「いや、邪魔だから」
「なんすか? 美少女に近づかれて照れてるんすか?」
「なわけ」
「それはそれでムカつくんですが」
そして分かりやすく不満を表すように頬を膨らませてくる。
「そういえば初さんのスマホにマドレさんが入ってるんですね」
そんなかけ合いをスルーしていのりが初に訊く。
「そうですね。なんか一緒に研究するときに」
「少し見せてもらってもいいですか? 私のところにはいないので」
「いいですよ」
大半の人のスマホの中に入ってると思っていた初はその言葉に少し疑問を抱いたが、そんなものなのかとそれ以上考えることなく自分のスマホを差し出した。
「どのアプリですか?」
「ああ、これですよ」
初はそう言ってマドレに入れさせられたアプリを指差した。
「そのままタップして起動すれば良いですか?」
「はい。それで大丈夫ですよ」
その初の言葉で見せていたスマホを元に戻して操作し始めた。その時だった。
「え……?」
少しワクワクさ加減が伺えた彼女の顔がピシッと固まったのだ。
「いのりさん。どうしましたか」
そう言ってシロが画面を覗き込む。
「……。これは……」
そしてすぐに初の方をジトっと見つめた。
「え? ど、どうしました?」
「なんかやばいのつけっぱなしにしてたとかっすか? どれどれー。……あちゃー」
ついでみなみが哀れな人を見る目で初を見た。
——なんだ。なんだ。そんなやばいのは開いていないぞ。最新の論文とか記事とかしか見てない筈だけど。
「とりあえず見せてください」
初はいのりからスマホを半ば無理やり取ってその画面を見る。
「……は?」
その画面には非常に受け入れ難いことに、マドレのマイクロビキニ姿が映し出されていた。しかもご丁寧に「初様が魅力的だと仰っていた特別ヌード写真です。ご査収ください」と写真の下に書かれていた。
初はそれを見て天井を仰いだ。
——確かに魅力的だと言ったけど……。




