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第1話 あなたとおわかれをするということ。

 スノーとミストの冒険。忘れられてしまった古いおわかれの言い伝えのある美しい幻想の島での七日間の旅。


 あなたとおわかれをするということ。


 美しい幻想の島ではよく雨が降っていた。今日も朝からずっと冷たい雨が降っている。静かで美しい雨。スノーの見上げる空はそんな雨を降らせている薄暗い灰色の雲に覆われていて、それ以外の色はどこにも見えない。

「そんなところで雨を見ていたら風邪をひいてしまいますよ。スノー」

 そんなとっても優しい声が聞こえた。ミストの声だった。

 声のしたほうを見ると、そこには優しい顔で笑っている騎士のミストがいた。その手には大きなタオルを持っている。

 騎士のミストはいつものように青色の服の上に騎士の鎧を着ている。腰のところには伝説の騎士の剣を下げていて、金色の長い髪は白いりぼんでまとめて三つ編みにしている。

 ミストの澄んだ美しい大きな青色の瞳が、じっとスノーを見つめている。

 その顔は凛々しくて、美しくて、とっても優しかった。

 スノーは美しい白い花が咲いたようなスカートの服を着ていて、白い手袋をして、白い靴をはいている。

 大きな青色の瞳と小さな顔と小さな口。(綺麗な形の耳も小さかった)

 金色の長い髪は(いつもはまっすぐにしているけど、今は動きやすいように)水色のりぼんでまとめてポニーテールにしている。

 スノーはまるでお人形のように美しい顔をしていた。

 スノーはある国のお姫さまだった。

 ミストはお姫さまを守る騎士であり、スノーは騎士に守られるお姫さまだった。

 スノーは雨の降る緑色の深い森の中に立っていて、ミストはそんな雨の降る深い森の中にある『古いお城』の扉がなくなってぽっかりと穴があいたような出入り口のところの前に立っていた。

「ごめんなさい。お散歩の途中で、少しの間のつもりだったんですけど、ついこの幻想の島に降る雨の美しさに見惚れてしまって」

 とミストのいるところまで歩いていきながらスノーは言った。

「たしかに美しい雨ですね。美しい幻想の島では、空から降る雨も美しい」

 にっこりと笑って、大きなタオルをスノーに手渡しながらミストは言った。「どうもありがとう」とスノーは言って、タオルでそっと髪を拭いた。それから二人は(雨に濡れないように)古いお城の中に戻って行った。

 スノーとミストが幻想の島にやってきて、まるで二人のことを島の中に閉じ込めるみたいにして、海が荒れはじめて、幻想の島から出られなくなってから、もう三日が過ぎていた。

 七日間の旅の予定だけど、海が荒れたままでは、七日目に幻想の島を予定通りに乗ってきた船に乗って出られるのかはわからなかった。(入江のところにしっかりとロープで結んでおいたけど、この荒れた海では船が流されてしまっていても不思議ではなかった)

「幻想の島の呪い。あるいは古い言い伝え。この島にきたものは、『大切な人とおわかれをしてしまう』。私たちもおわかれをしてしまうのかな?」

 暖炉の中で燃えている炎に照らされるようにして、雨に濡れた服を乾かしているスノーは言った。

 その手には朝ごはんのパンを持っている。(もう一口だけかじってあった)

「もしかしたら、七日間の旅が終わって、大陸に戻ったら、百年くらいの時間が過ぎてしまっていて、みんなに忘れられてしまうのかもしれませんね」

 とふふっと(子どもみたいな顔で)笑ってミストが言った。

 それも悪くないな。ミストと一緒なら。とスノーは思った。

「でも、お姫さまのスノーが古いお城があるとはいえ、もう人の住んでいない幻想の島でキャンプをするみたいにして七日間も生活する旅にやってくるとは思いもしませんでした。成長しましたね」

 暖炉の中に薪を投げ入れながらミストは言った。

「まあ、ミスト。確かにわたしはお姫さまだけど、それをいうのなら、『あなただってお姫さま』でしょ?」

 と(子供あつかいされたので)少し怒った顔をしてスノーは言った。

「私はもとお姫さまですよ。もうお姫さまではありません。私は騎士ですから。お姫さまを守る騎士です」

 スノーを見ながら(少しあわてて、怒ったスノーをなだめるみたいにして)ミストは言う。

「守るだけなの? 御伽話のお姫さまと騎士のように私に百年の恋をしたりしてはくれないの?」

 と甘えた顔をして、ミストを見つめながらスノーは言った。

「私は剣に誓ったのです。大切な人を守ると。私が騎士になったのは、恋をするためではありませんよ。スノー」

 とにっこりと笑ってミストは言った。

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