表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/38

12 農家はさすが上位職業

 上位職業に転職した事でレベル1に戻った。

 しかし、能力値はそのまま。

 転職の利点だ。



 更にここからレベルを上げてまた能力値を高める事が出来る。

 ここからどれほど強くなれるのか。

 考えるだけで希望に胸が高鳴った。



 早速、鍬を持って田畑に突撃した。

 どれだけ違いが出るのだろうかと。

 結果は驚く程だった。



 作業効率が段違いに上がった。

 今まで以上に簡単に土地を耕せる。

 雑草を引き抜くことが出来る。

 単純に農民としての能力が底上げされていた。



 それだけではない。

 農作業において効率的に人を動かす方法。

 農作物を育てるだけではなく、この周辺の作業。

 農業に関わるより多くの範囲の知識や方法が頭に浮かんでくる。

 農民としての幅が広がっていく。



「すげえな、上位職業」

 転職した直後に、農家という職業のすごさを思い知る。

 しかもこれでレベル1だ。

 もっとレベルをあげたらどうなるやら。

 確かめたくて、早速経験値を稼ぎにいく。



 家を飛び出し、村を抜けて裏山に。

 経験値稼ぎのためだけに耕した斜面の一角にて、今日も鍬を突き立てていく。

 田畑でやる事がなくなると、ここに来て無駄にたがやすのがコウサクの日課になっていた。

 農作物を作る事のない、ただ耕すためだけの田畑。

 無駄としか思えないこんな場所を、コウサクはレベル上げのためだけに確保していた。



 もちろん、村の者達はうんざりした顔をする。

 仕事を放り出して、何の意味もない田畑を作ってるのだから。

 だったら、そこに何か植えろとも言った。

 しかし、

「そんな事をしたら、鍬を打ち込めなくなるだろ」

 こういってコウサクは拒んだ。



 何も植えてない畑であっても、鍬を突き立てれば経験値になる。

 野菜を植えたりしたら、これが出来なくなる。

 作物を育てれば経験値にはなるのだが。

 鍬を振るほどではない。

 なのでコウサクは何も育てない畑を作って鍬突き刺していく。

 素振りならぬ素鍬だ。



 こんな事が許されるのも、コウサクの働きが群を抜いてるからだ。

 今のコウサクなら、一人で家の畑一つを簡単に世話ができる。

 収穫量も他よりも多く出来る。

 そんなコウサクにケチをつけられる人間はいなかった。



 それでもコウサクの練習用の畑に種や苗を植える者はいる。

 こうして畑に埋め込まれた作物は、容赦なく鍬によって粉砕された。

 育てるつもりのない作物など、コウサクからすれば邪魔でしかない。



 そうして植えたものを潰されたものは、筋違いにも怒鳴りこんできたのだが。

 容赦なく拳をたたき込んで黙らせた。

「おまえらが俺の練習畑に馬鹿な事をしたのか」

 馬鹿な事をした者は、その日から行方不明になった。



 以来、コウサクに文句を言う者はいなくなった。

 急に消えた者達の後を追いたいと思う者はいない。

 村の者達はみんなコウサクのやる事を黙って見ている事にした。

 手を出さない限り、平和と平穏は保たれるのだから。



 そんなささやかな悶着もあったが。

 おかげでコウサクは誰にも邪魔をされる事なく鍬を振る事が出来るようになった。



 もちろん、田畑の世話をしながら。

 空いた時間を使って練習用の田畑で鍬を振る。

 少しでも多くの経験値を蓄えるために。



「がんばらないと」

 農民から農家になってもレベル上げは続く。

 更に上位の職業があるのも分かってる。

 ならば、その職業になるべく精進をする。

 ひたむきに黙々と鍬をふる事で。

 そこに埋めた邪魔者を土にすき込むように。



 こうして農家として新たな日々が始まった。

 やる事に大きな違いはないけども。

 その中身には確かな違いがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンク ↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/fanclubs/478732


 応援・支援に感謝を。



_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ