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琴子登場

 間違いない。セーラー服だ。紺色の上下に赤いスカーフ。髪の毛は茶色く染めて後ろで2つに結んでいる。


「えっ!?女子高生!?」


 俺は思わず声をあげる。


「えっ!?女子高生!?…じゃないわよ!何してんのよ!トンネルは!?どこにやったの?」


 女の子は甲高い声できゃんきゃんと叫び続ける。俺はたまらず耳をふさぐ。視界の片隅でひかるさんも同じように耳を塞いでいるのが見える。


「地震があったから心配になって戻ってみたら…あー!サイアク!どうしてくれるの!?てかアンタたち誰?」


…確かに。地震のせいでトンネルが崩れた可能性はあるな。


「とにかく!一度冷静になりましょう。私はひかるです。こちらは太助さん。貴女は?」


 ひかるさんがぴしゃりと言ったあと自己紹介をすると女子高生は少し黙ってから口を開く。


「私はコトコ…楽器の琴に子供の子」

 

 素直に名乗る琴子ことこ。大人しくしていると年相応の可愛らしさがある。化粧っけの無い顔もよく見れば結構整っていた。


 ここまでのお互いの経緯けいいを話し合うことになった。基本的にはひかるさんが話してくれる。

 俺とひかるさんが婚約中だと聞いても「ふぅん…」と興味無さそうだったくせして、ひかるさんが島左近の娘だと知ると「うっそ!?マジ!?」とテンションが上がる。


「じゃあ三成様に会ったことあるの!?」


…様って…


「はい。治部少輔様にはとても良くして頂いています」


 ひかるさんは頬を赤らめて頷く。


…うん?なんでそんな照れる?


「すっごーい!リアル三成様!マジ!?イケメン??めっちゃ背高い??」


…イケメンではあるが背はそんなに高くはなかったな。左近さんの方が全然でかい。


「はい。カッコいい方ですよ」


 ひかるさんはさらに顔を赤くして頷く。


…いや、マジで照れすぎですひかるさん。


「三成様に会いたくて何度もここに通ってるのに全然会えなくてツラかったのに…くそぅ…もっと早くひかるさんと知り合えていれば…」


『ぐぬぬ…』っと悔しそうな顔をする琴子。

…この子はずいぶん感情表現が豊かだ。


「琴子さんは?何故ここに?何度も来てるんですか?」



「私は米原まいばら女子じょし国際こくさい高校こうこうオカルト地質と歴史研究会会長です!通称つうしょう歴研れきけんです!」


 ひかるさんが問いかけると琴子は突然ありもしない胸をドーンと張った。


…ダメだ…ほとんど何を言ってるかわからない。


「簡単に言うと?」


 ひかるさんが真剣な表情で琴子に視線を合わせて聞く。


「えっと。オカルトと地質と歴史をトータルで研究するという部活のような物で、と言っても会員は私1人なんですが。それであの日はたまたま地質のフィールドワークに出ていて、そこであのトンネルを見つけて、知的好奇心ちてきこうきしんをくすぐられた私はそのまま吸い込まれるように中に!そこには信じられないことに昔の日本があるじゃないですか!私は自分で見ていないものは信じません。逆に言えば自分で見たものはどんなものでも信じます。そう。これはまごうことなきタイムスリップ!そして私の歴史へのくなき探究心たんきゅうしんが顔をのぞかせ、この時代をフィールドワークするためこの1年間何度も放課後にここに通っていたのです!」


 めちゃくちゃ早口でいつ息継ぎをしているのか不思議に思うほど喋り続ける琴子。

 ひかるさんは最後の方は飽きたのか空を飛ぶ鳥を見ていた。


「今日は学校お休みだから…朝から来ていて…今日こそ三成様に会えると思っていたのに…」


 琴子はさっきまでの勢いはどこへやら…急にしょんぼりとしてうつむいた。


…まぁそうだよな。いい歳した俺だってこんなに落ち込んでるんだから、琴子くらいの女の子じゃ不安で不安で仕方ないよな…。


『ぐぅ~』


…何かの鳴き声が聞こえた。

 俺は辺りを見回す。ひかるさんも警戒して辺りを伺っている。


『ぐぎゅるぅ〜』


…違う…これは。


 琴子は真っ赤な顔をして身体を折り曲げお腹を押さえている。


「腹…減ったのか?」


 俺が問いかけると『きっ』と睨みつけてくる琴子。俺は慌てて目を逸らす。普通に怖い。


「そうですね…もうそろそろ日も暮れますし、ここははじしのんで私の家に戻りましょう。この辺りも夜は野伏のぶせりたぐいが現れると言います」


 ひかるさんの提案に反対する理由も無く俺達は3人でトボトボと来た道を戻った。


「島左近と会える♪島左近と会える♡」


 さっきまでの落ち込みはどこに言ったのか琴子は鼻歌を歌いながら付いて来る。


…あの熊男とそんなに会いたいのか?女子高生の趣味はようわからん。


 ひかるさんが事情を説明してくれた結果とりあえず俺達はひかるさんの実家に置いてもらえることになった。


 ひかるさんは当然ではあるが母屋おもやで暮らすことになり、俺と琴子は門の脇にある小屋に寝起きする老人に預けられ、3人一緒に寝泊まりすることになった。


 琴子は「ひかるさんだけずるい!」と騒いでいたが仕方のないことだった。

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