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登場!鬼島津

徳川家康はゆっくりとした進軍で尾張まで出てきた。

まるで何かを待っているような進軍だが、これも史実通りだ。


いち早く尾張に戻っていた福島正則などは切歯扼腕していることだろう。


対してこちらは琴子の献策が容れられ大津城は宇喜多さんと左近さんによって落とされた。

これは史実とは異なると琴子が言っていた。


これで大坂と関ヶ原を結ぶラインに障害は無くなったとも。


西軍の各隊が関ヶ原に集結し始める。


三成さんに従って俺と琴子、そして小次郎とすずも出陣をする。


ひかるさんが見送りに出てくれる。


俺は笑顔で手を振る。


ひかるさんも笑顔で手を振り返してくれた。


もしかしたらもう会えないかもしれない。

どんなに頑張っても歴史は変わらなくて徳川家康が勝って三成さんは負けるかもしれない。

それでも…俺はそれを見届けなければならない。俺にはそれだけの責任があるんだ。


「おぉー!すごい!壮観だなぁ」

小次郎が小高い丘に立ち辺りを見渡す。


ここは関ヶ原、笹尾山付近だ。


俺達が着陣すると既にそこには多数の将兵が陣を敷いていた。


「おい!太助!散歩に行こうぜ!散歩!」

小次郎が俺の手を引く。


「あまり遠くに行くなよ」

左近さんと三成さんは笑顔だ。


…なんか緊張感ないなぁ



俺と琴子、小次郎とすずで陣と陣の間を歩いていく。

「これが宇喜多…これは小西…これは…!」

琴子が目を瞠る。


丸に十字の紋。

…まさか


「鬼島津…」

琴子が呆然と呟く。


「ん?なんだよ。この家紋そんな珍しいのかい?」

小次郎は旗を見上げている。


「最強の部隊の証さ」

俺は知ったかぶる。


「最強…」

すずが息を呑む。


「おお!最強とは嬉しかぁ!」

薩摩なまりで後ろから声をかけてきた男がいる。

がっしりとした身体つきだ。年の頃は俺より少し上か?


「おい達のことを最強と知っちょるとは、おはんらは何もんじゃ?」


「私たちは石田三成の家中です。失礼ですがそちらは…?」


…琴子は薩摩弁もわかるのか…


「おお!失礼しもした。石田様のご家中でごわしたか!おいは島津中務少輔と申しもす」

薩摩弁の男は丁寧に腰を折る。


「島津豊久…本物…」

琴子が息を呑む。

「では島津惟新斎様の…」

琴子が呟くと島津さんは顔を綻ばせる。

「おお!叔父御のことも知っちょりもすか!?」

「はい。惟新様は生きる伝説でございます」

「おお!これは嬉しかぁ!石田様のご家中にこのように言っていただけるとはなぁ」

「豊久。何を騒いでおる…」

のそりとスキンヘッドのおじさんが現れる。

「おう!叔父御!こちら石田様のご家中の…えーっと…」

「申し遅れました。琴子と申します。これは太助、小次郎、すずです」

琴子に促され俺達はペコリと頭を下げる。


「惟新斎様にお会いできるとは…」

琴子は目を輝かせ震えている。


…そんなに嬉しいのか?まぁ確かに島津は有名だけど。


「ほう。石田殿のところの…石田殿にはいろいろ世話になっている。此度の戦も島津は石田殿のために力を尽くそう」

惟新さんはそう言うと穏やかに笑った。


「おいも!琴子のようにおい達を評価してくれる者がいる家のためなら命を捨てても惜しくはない」

島津さんもキラキラした顔で笑っていた。



散歩から戻るとそろそろ軍議がはじまるという。

俺達は端で聞かせてもらうことになった。


「太助!…すず!久しいな」

女性の声に振り返るとそこには誾千代さんがいた。


「誾千代さん!」

…相変わらず美しい方だ。


「何故ここに?」

すずが微笑みながら聞く。


「夫に付いてきた。天下分け目の大戦だ。少しでも力になりたいと思ってな」

誾千代さんもすずに微笑み返す。


…えっ!?誾千代さん結婚してたんだ…そりゃそうか…この時代だもんな…


「あ!ほら。あれが夫だ。おーい」

誾千代さんが手を振ると背の高いイケメンがそれに手を振り返す。


…めちゃくちゃお似合い夫婦じゃないか…


「…立花宗茂…」

琴子が隣で呟く。


「私たちは太閤殿下の恩を忘れない。な?」

誾千代さんが宗茂さんに問いかけると宗茂さんは力強く頷いた。


「すごい…史実では立花宗茂は関ヶ原本戦にはいなかった。けど大津を先に落としたから間に合ったんだ…」

琴子はまだぶつぶつ言っている。


「あ。おい。太助」

小次郎に肩を叩かれてそちらを見るとちょうど稲葉と平岡が入ってくるところだった。


「当主は体調を崩されておりますので私たちが変わりに…」

と言って着席する。


「あいつら…相変わらずかよ」

小次郎が歯噛みする。


いざ軍議が始まると皆我先にと意見を述べる。皆自分の存在意義を示したいのだろう。


そんな中で

「夜襲すべし」

という意見が出る。

 

その意見を出したのは島津さんと惟新さんだった。


「…その意見は却下される…」

琴子が呟くと同時に三成さんを含め大多数が反対をする。

論調としては「そんな卑怯なことをせずとも勝てる」というものであった。


…戦に卑怯も何も無いだろう!勝ったほうが正しいのだ!


と思ってみるがここではさすがに口出しできない。


「えっ?」

ふと顔をあげるとその場の全員が俺をを見ている。


「あの…また?」

隣に座るすずは下を向いて俺とは目を合わせてくれない。


「おはんわかっちょるな!」

島津さんが急に近寄ってきて肩を叩かれる。


「私も島津殿に賛成だ。今ごろ家康の軍は行軍で疲れて兵糧を使っているころでしょう。日が暮れたらすぐにでも休んで明日の戦に備えるはず。そこを夜襲すればあるいは家康の首を獲れる」

宗茂さんが立ち上がる。


「島津殿と立花殿が言うのであれば…」

と見たことのない大名たちも立ち上がる。

殆どの大名が立ち上がった。

立ち上がっていないのは三成さんと稲葉、平岡、の3人だけだ。


「よし。それでは夜襲を決行する。指揮は島津惟新斎殿。お任せしてよろしいか?」

三成さんも立ち上がる。


「おう!」

惟新さんが大きな声で返事をする。


「進退含めてすべてお任せする。頼みました」

三成さんが惟新さんに頭を下げる。

惟新さんが三成さんの肩に手を置いて頷く。


その時稲葉と平岡が不安げに顔を見合わせていたことに気付くものはいなかった。


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