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伊達さんは目立ちたがりや

「片倉小十郎にござる。拙者がお話を承る」


ここは陸奥の国、岩手沢城の一室である。

大谷さんと俺がこの部屋に通されてから暫く経って入ってきたのがこの片倉小十郎と名乗る人物であった。

それまでは俺と大谷さん。あとは俺達が部屋に通される前から平伏している伊達家の人がいるだけであった。

このずっと平伏している人は片倉さんの家来だろうか?頭を下げたまま一言も発しない。寝てるんだろうか?


ちなみにすずと小次郎は次の間で待たせてある。


「それでお話というのは?」

片倉さんは淡々と話す人だ。


大谷さんが主に話をしてくれる。

俺はそれを補足するだけだ。

俺が未来から来たことを聞いても片倉さんは顔色を変えない。


「なるほど。よくわかりました…つまり当家に大谷殿の言う「西軍」にお味方しろと言う訳ですな?」

片倉さんは表情を変えない。


「はい。損はさせませぬ。戦の趨勢がわかっている以上こちらが必ず勝ちます」

大谷さんが力強く言う。


「しかし、必ず勝つのであればわざわざここまでご足労頂かなくても勝てるのではないですか?」

片倉さんは大谷さんの顔を覗き込むように言う。


「さすがは伊達家の名宰相片倉小十郎殿。痛いところを突かれる」

大谷さんは大笑いする。


「正直に言うべきでしたな。確かに伊達家が徳川に付いたらこちらは苦しい。逆にこちらに付いてくれればこちらの勝ちは疑いない。だからこうしてお願いに参った次第」

大谷さんは笑いを収めるとそう言って反対に片倉さんを覗き込む。


「ふっ…なるほど。それで?味方に付く見返りは?」

片倉さんは小さく笑うとまた無表情に戻る。


「小十郎!つまらん話をするな!」

その時突然傍らで平伏していた家来の人が大声をあげる。

狭い部屋がビリビリと震えるほどの大声だ。


…うおお!びっくりしたぁ!


「殿…」

片倉さんが呆れたような声をあげる。


「大谷刑部よ!久しいな!」

「伊達殿!?」

顔を上げた男は片目を閉じている男だった。


…独眼竜…伊達政宗か…


「おう!大谷刑部が面白い話を持ってきたと聞いてな!いてもたってもいられず話を聞きに来た。ずっとここにおったのに気づかんとはな」

政宗さんは何が面白いのか大笑いしている。


「おいそこの!」

政宗さんが俺を片目で睨み付けてくる。


「ひゃい!」

声が裏返る。


「本当に先の世から来たのか?」

…政宗さんの迫力半端ない。


「は、はい。そうです」


「嘘ではないな?」

政宗さんが顔を近づけてくる。


「はい」

…近い近い


「なら一つ聞かせろ!」

政宗さんの顔が遠ざかる。


「伊達政宗は先の世でも有名か?」


「はっ?」

俺は思わず素っ頓狂な声をあげる。


大谷さんは呆気にとられ、片倉さんは溜息を吐いている。


「答えろ!俺は先の世でも有名なのか?」

政宗さんの顔が再び近付く。


「はい!有名です!」

俺は慌てて答える。


「具体的には!?」

政宗さんの顔が更に近付く。


「はい!銅像があります!」

「あとは」

「物語の主人公になっています」

「何の?」

「ドラマや漫画、ゲームなどです!」

「それは何だ?」

「先の世の娯楽です。茶の湯や連歌の代わりのものです!」

「ほう茶の湯や連歌の代わりに私が…ん?どういうことだ?」

政宗さんは俺から顔を離すと頷いたあと首を捻る。


「まぁいい。どうやら本当の事を言っているようだ…」

政宗さんは1人で腕を組んで納得している。


「家を残しても名を残さねば意味がない…そうは思わぬか?大谷刑部よ…」

政宗さんは突然大谷さんに話しかける。


「御意に…」

大谷さんは即座に反応して頭を下げる。


「まさか…殿…」

片倉さんが目を剥く。


「うむ」

政宗さんは笑顔で頷く。


「しかし!」

片倉さんの慌てようがすごい。普段冷静だから余計に際立つ。


「わかっている。徳川とは婚礼をあげたばかりだ…それに…服部のところのネズミも入り込んでいるから…な。だから大谷刑部よ今日のところはさっさと帰ってくれ。味方に付くと約束はせん。しかし絶対に付かんとも言わん。それでどうだ?」

政宗さんは笑顔で大谷さんに言う。


…どういうことだ?


「なるほど…いや、そのお言葉で十分。治部少輔も喜びましょう」

大谷さんはそう言うと畳に手を付いて頭を下げた。


「うん。では気を付けて帰れよ!行くぞ小十郎!」

政宗さんはそう言うと立ち上がり部屋を出て行った。

片倉さんも俺達に一度頭を下げると立ち上がり部屋を出た。


「えっ?大谷さん。今のどういうことですか?」

俺が聞くと大谷さんは微笑んでただ頷くだけだった。


城を出て暫く歩くと道の先に人が立っている。


「うふふ。太助様、お久しぶりです」

妖艶に笑うその女性は…

「紫乃さん!」

俺が手を振るとすずが明らかに不機嫌になる。


「おお!?誰だあの美人は?」

小次郎が手をひさし代わりにして紫乃さんを見る。


「あれが上杉の透破か…」

大谷さんは冷静だ。


「大谷刑部様…我が主が是非会津にお立ち寄り願えないかと…」

紫乃さんは大谷さんの前にひざまずく。


「何かあったか?」

「はい。徳川からの問責使が参りました。戦が近いと我が主が申しております」

大谷さんの問いに紫乃さんが答える。


「わかった。寄らせてもらおう。案内を頼めるか?」

「はい喜んで」


こうして俺達はその足で会津に向かうことになった。

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