第37小節目 ♫ 新たな装い
ユーリは黒のワンピースに身を包んだ。
スカートの裾部分には、ピアノの鍵盤を模したような白い生地のプリーツが施され、後ろを向くと腰に大きなリボンが結ばれている。
靴は艶々とした黒いドレスシューズ。
丸みを帯びた形は、背伸びしすぎない上品さを添えた。
また、寒さ対策として上に羽織ったコートも黒で、上半身の部分はまるでボレロを重ね着しているように見えるデザインだ。
そして、襟元には白いグログラン素材の高級そうな細長いリボンが垂れ下がっている。
よく見ると、リボンには同色で五線譜の模様が加工されており、指先でその感触を確かめるとザラリとしていた。
さらにリボンの結び目には、ト音記号をかたどった金細工が飾られており、アクセントになっている。
膝上のコートの裾からは、下に着たワンピースの鍵盤が見えた。
最後に白の薄いタイツを履いたことで、全身が白と黒で統一された。その様はまるで楽譜の一部のような装いだ。
ユーリは鏡に映る自分の姿を見ながら、どこか夢心地のような表情を浮かべた。
「こんなに良いものを私が着て良いのでしょうか…。」
「もちろん。とても良く似合っているよ。
まるで鍵盤の精霊だね。」
クロウリーは満足そうに深く頷いた。
続いて、クロウリーが身につけたのは漆黒のテールコート。
背中側が長く流れるようなシルエットが特徴的で、どこか優雅さを漂わせる一着だ。
シャツの襟元には白いタイが結ばれ、グランドピアノ州らしいクラシカルな印象が全体に調和している。
「オーケストラに出られそうです!」
クロウリーはユーリの言葉に上品な笑みを返しながら、恭しくお辞儀をしておどけてみせた。
「そんなこと言われたら、大舞台で指揮でも振りたくなるね。
でも残念ながら、ボクの得意分野はオカリナだけなんだ。」
その軽妙な返答に、ユーリは思わずくすりと笑った。
華やかな装いに身を包んだ二人は、まるで音楽の世界に溶け込むように、新たな一歩を踏み出す準備を整えたのだった。
つづく




