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「皆んなの声が、聞こえてるか!」「死んだら、皆んなが許さないからね!」
「もし、もし、死んだら、ミルセ姉になんて詫びればいいんだよ」
カルラの瞳からボロボロと零れた大粒の涙が、セルアルの手に落ちた時だった。
「カ、カルラさん」「らしくない」「な、泣いてる」
するとカルラが、涙を拭いながら言った。
「馬鹿野郎」・・・と。
それから一週間後。
復帰したセルアルがスハノとクレハと共に、冒険者協会を訪れると
ディアボロスを単独撃破した、セルアルの復帰を聞きつけて
騎士団長と騎士数人、大勢の冒険者がセルアルが来るのを、待ち侘びていた。
それを、スハノとクレハは予め知っていたが、セルアルには知らされてなかった…。
そして、冒険者協会の扉を開けて足を踏み入れた途端、大歓声がセルアル達を迎え入れた。
驚嘆して、アタフタと辺りを見渡してるセルアルに、団長のケルトが手を差し出すと
「君の力を見込んで頼みがある」「騎士団に入ってくれないか!」
静かになった後、再び歓声が上がったのは、騎士になれば上流階級の仲間入りとなり
これからの暮らしも一変する。それ故に断る者など、皆無に等しかった。
とは言っても、冒険者で平民だった者が騎士となり、上流階級になった途端に
見下す者も多いのが、冒険者が騎士団嫌いの原因でもあった。
そして冒険者達が、セルアルの周りに集まってきた。
「騎士になっても、変わらないでくれよ!」
「たまには、顔を出せよな〜」
するとセルアルが、両手を上に上げて大きく左右に振った。
「ちょ、待って、待って下さい〜!」「俺は騎士になる気はないですよ」
その言葉を聞いて、ケルトがカルラに顔を向けると、カルラが思いっきり顔を背けた。
それは、カルラがケルトに、セルアルを騎士団に欲しいなら、金貨六百枚。
『そうでなければ、有望な人材を手離す事はできない。』
ミルセに渡した五百枚に、百枚上乗せしていたのだった・・・。
マズイ!そう思ったカルラが、ケルトとセルアルの仲介に入った。
「な、なあ、セルアル」「お前は今、ギルドを立ち上げたばかりだから
それを考慮してね、十日間は騎士団。十日間は思い出の場所の一員として
冒険者活動に勤しむ、って感じでもいいらしい」
「それでも騎士となるから、上流階級になって生活水準も上がる」
「私はとてもいい話だと、思うけどね〜」
「そうよね」「それなら、セルアルにとって悪い話じゃないと思う」
「え?スハノまで!」「だけど俺は上流階級とか、全く興味ないし」
「それに、カルラさんは、確かミルセ姉さんに金貨五百・・・」
言いかけた時
「ゴヒョ、ゴヒャ、ゴホッ!」「ブホ〜ッ」
カルラが妙な大声でかき消した。
「お、おい!」「今、なんか言いかけてなかったか!」
ケルトの突っ込みに、カルラは耳も貸さずに
「給金が上がれば、今まで辛い思いをしてきたミラーにも
楽な思いをさせてあげれると、思うけどね〜」
「そ、そうかもしれないけど」「そんな俺だけが、特別待遇だなんて
騎士の方々が、よく思わないと思いますけど・・・」
セルアルの懸念は的中していた。
騎士達は終始、話を聞きながら顰めっ面で、セルアルを睨んでいた。
その視線に気づかない程、セルアルは鈍感ではなかった。
騎士達の表情を見て、カルラはゆっくりと静かに近付いて立ち止まり
顔を騎士に近づけて、小声で囁く様に言った。
「おめぇら、久しぶりじゃねぇの」「なに?セルアルが気に食わない?」
「お〜このバッヂの紋章、そうか功績上げて貴族になったのか」「凄いねぇ〜」
カルラが、力を込めると『メキッ』と音がして、簡単にバッヂは砕け落ちた。
「言っとくけどね、貴族だからとかって、私にゃ〜きかねぇの知ってるはずだよね?」
「さぁ、どうする?」「快く迎え入れるか」「それとも・・・」
「い、いえ!」「す、少なくとも俺は、快く迎え入れようと思ってます!」
「も、勿論、俺たちも、同じ意見です!」
「なによ〜」「話せば分かってくれるじゃない」
「セルアル、コイツらは快く迎え入れてくれるって言ってるよ〜」
あ、あれが、話し合いか…。カルラ、やっぱり恐ろしい。
ケルトは心で呟いた。
「ま〜後はセルっち次第だけど、私もこんないい話滅多にないと思うにゃ」
クレハにもスハノと同じ様な事を言われて、セルアルは俯いた。
「少し時間を下さい」
騎士になる気はないとの即答からの進歩に、ケルトはホッとした。
「そうだね」「色良い返事を待ってるよ」
そしてセルアルは、ケルト達の後ろ姿を見送った。




