第40話 砂漠から帰還した男
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「マジかよ。砂に見えるがこれは間違いなくダイヤモンドだ。俺は詳しいんだ」
男は裏の仕事を請け負うことが多かったがその中には宝石を奪うという物もよくあった。そのため多少の目利きには自信があった。
「こりゃ言うならば砂ダイヤモンドってとこか。とんでもないもん見つけちまったぜ……ん?」
ダイヤモンドの砂、そう男が判断したその時、男は洞窟の壁に刻まれた文字を見つける。
『この一帯は砂漠の王が管理する至高の地なり。ここの砂を含めた資源の勝手な持ち出しは厳禁とする。もしこの警告を無視するものがいたなら、大いなる王の眷属たるスフィンクスの怒りに触れることになろうぞ』
その文字に明らかに動揺する男である。
「スフィンクスだって? 伝説の神獣じゃねぇか。そんなものがここを守っているというのか?」
もしそうだとしたら、ここのゴブリンが一掃されたのもわからなくはない。
「これが事実なら、流石にこれに手を出すのは不味いか? いやしかし――」
男は考える。よくよく考えたらこれはおかしくないか? と。もしこれが事実なら奴隷はどうなったのか?
勿論スフィンクスに食われたという可能性もあるが、だとしたらわざわざ牢の格子を何かで切るというのもおかしな話だ。
それほどまでの神獣なら牢ごと喰らってもおかしくないし、そもそも神獣がわざわざ人の言葉で壁に字を刻むというのも妙な話だ。
「さては、脅して諦めさせようという作戦か。それなら納得がいく……」
壁に刻まれた文字を眺めながら男はそう解釈した。馬鹿らしい話だが死の砂漠でしかもゴブリンが全くいない状況でこれを見れば大抵の者は震え上がって手を出そうと考えないはずだ。
だが、男は考える。俺はそこまで頭が回らない男ではないぞと。もしこの砂ダイヤモンドを見た何者かが、これを全てせしめようと思ったとしても簡単ではない。それなりの人手は必要となる。
だから奴隷を奪ったのだ。奴隷にこの貴重な砂を回収させるために。
そうであれば納得がいく。それとゴブリンだが、この異常な状況につい殲滅されたと考えたが、死体も見当たらない以上もう一つの手も考えられる。
例えば一斉に逃げたとか、もちろん普通では中々考えられないがこの壁に刻まれた文字を見るに奴隷を奪った相手はかなりの切れ者で頭がよい。
もしかしたら数多の修羅場をくぐり抜けた軍師の可能性もある。
男は一つの伝説を思い出した。かつての戦場での出来事である。とある小国が自国の五千倍もの大群を率いた大国に今まさに攻め入られようとしていた。だがその時小国は巨大な魔獣のハリボテを道中に設置し、魔獣の声真似をしただけで大軍の動揺を誘い勝利したのだ。これは今でも伝説の兵法として記されている。つまりだ、壁にこの文字を刻んだ相手は似たような手でゴブリンを追い払った可能性もあるということだ。
「ふふ、危なかった。恐ろしく長けた策略。俺でなければ見落とすところだったね」
男は一人納得し、そして考えた。
「どちらにせよ、俺一人で何とかなる話ではないな。奴隷こそみつけられなかったが逆にいいものを見つけた。それに奴隷を連れ去った奴がいるのも確かだ。これは有力な情報だぞ。きっとトヌーラ様も喜ぶことだろう」
そして男は一旦洞窟を出た。トヌーラへと報告するために――
◇◆◇
「以上が死の砂漠で得た情報だ」
「あぁご苦労」
ゴブリンの塒で情報を得た後、男はエルドラド共和国に戻り首都エルドラにやってきていた。
エルドラはエルドラドの港に面した総人口五千万を誇る巨大都市である。そして男は都市でも有名な料理店で依頼者のトヌーラとあっていた。
トヌーラは肉厚のステーキを食しながら男の話を聞いた。店には他に客はいなかった。完全予約制であり席も一席のみで個別に対応するという高級な料理店であった。
もくもくと肉を口に運んでいるトヌーラは腹の出た男であった。顔も丸く金色の髪が真ん中だけに集中していてうねりのある妙ちくりんな髪型をしていた。
「ところでお前はそれを他の誰かに話したか?」
「甘く見てもらっちゃ困るぜ。俺はプロだ他の誰かに漏らすような真似はしねぇよ」
「そうか」
男が質問に答えている間にも、トヌーラはナイフでカットしたステーキを口に含んでいた。
「ところで、これだけの情報を持ってきたんだから、少しは報酬に上乗せしちゃもらえないかい? 今後の為にもさ」
男がニヤリと口元を吊り上げて要求する。砂漠の情報は大ネタだ。場合によっちゃ巨万の富を得ることになる。ゴブリンに連れ去られた奴隷を見つける程度の報酬では納得がいかない。
「あぁ、そうだな」
平らげた皿を眺めながら口を拭きトヌーラが近くにいた黒服に目配せする。
「口止め料込みでしっかり支払ってやれ」
「わかりました」
「へへ、話がわかるね。さすがトヌーラ商会のかいちょ――」
その言葉が全て紡がれることはなかった。黒服の抜いた剣によって男の首が既に飛んでいたからだ。
「これが口止め料だ。最期にこの私の料理を食べる姿が見れたのだから満足だろう?」
床に倒れビクンビクンッと痙攣する首なし死体を見ながらトヌーラがにやぁっと醜悪な笑みを零し最後の一切れを口に含み咀嚼する。
「きゃ、きゃぁあぁああ!」
「な、こ、困りますトヌーラ様!」
その時控えていた女の給仕が悲鳴を上げ支配人と思われる男が慌てて駆けつけてきた。床に転がった死体にとても困惑している。
「気にするな。この私が来てやったんだぞ? 死体が転がろうが店の評判が上がったのだから寧ろプラスだ」
「し、しかし……」
支配人は強く出れなかった。トヌーラはいい意味でも悪い意味でも有名な男だからだ。
「後始末代なら払ってやる。それで誰も文句は言わんだろう」
「文句ならあるにゃ~」
悪びれる様子も謝罪すらないトヌーラであったがそこに一人の客が入ってきた。トヌーラが、ふん、と鼻を鳴らす。
「ふん、アリババか。礼儀のなってない野良猫が。まだ私が食事中だぞ?」
「もう予約時間が過ぎているにゃ~ここからは僕の時間にゃ~」
トヌーラが猫と呼んだ彼は見た目にはまさに猫であった。二足歩行の黒猫である。身長も人と変わらずシルクハットを被り顔には片眼鏡。燕尾服を着こなし手にはステッキを握りしめていた。
そしてその隣には狼、いやこの猫と同じように人のように二足歩行で歩く狼の姿があった。人狼である。
「ふん……全く野良猫がここで食事とは、一体何の冗談かな?」
「……少し口がすぎるにゃ~。それに僕は野良猫じゃなくてケットシーにゃ~。そこは勘違いしてほしくないですにゃ~」
空いている方の手でヒゲを擦る。アリババ――アリババ商会の商会長。それがこのケットシーのアリババであった――
ここまでだと中途半端な気がするので本日は切りよく次の話まで更新します。
ストックが少し心許なくなってきてますが切れないよう頑張ります!
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