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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第336話 アインの誓い

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます。

 ロキが連れ去られてから、城を中心に砂漠も調査してみたけど、結局見つけることは出来なかった。


 やっぱりサーチの言う通り、ロキは城に侵入してきた連中に攫われたと見て間違いないだろう。


 怪鳥に乗って飛び立ったという話だし、既に砂漠から出ていった可能性も高い。


「僕のせいだ……」


 玉座に座りながら、僕は俯いていた。


「僕がもっとしっかりしていれば……敵の侵入を許すことも、ロキが連れていかれることもなかったのに」

「スゥ~……」


 肩の上に乗っているスーが、慰めるように僕の頬を小さな手で撫でてくれる。


 その優しさが嬉しい。

 だけど、それでも頭から離れない。

 僕はこの国の王だ。


 皆を守る立場なのに、逆に皆に守られてばかりじゃないか。


 アインは僕を守ろうとして大怪我を負った。

 ロキは僕たちの為に協力してくれていたのに、敵に攫われた。


 そんな状況で僕が玉座に座っていていいのだろうか。


 この場所は、本当に僕に相応しいのだろうか。


「そう自分を責めるでない」

「でも――」

「陛下。あの男、悪運だけは良い。きっと無事だと思うぞ」

「うちもルガールの言う通りだと思うにゃ。それにあの助平ドワーフが、ただ黙って攫われたとは思えないにゃん」


 フィー、ルガール、ペルシアの三人が励ましてくれているのはわかる。


 でも、どうしても自分を責める気持ちは消えなかった。


「ホルス。まずは寝ないと駄目です。休むことも王の務めですよ」

「そうですわお兄様。あれからろくに寝ていないではありませんか」

『ケケッ。女の相手で寝不足ならまだわかるけどな』

「カセは少し黙っていてくださいですの」


 茶化すカセをモルジアが叱りつける。

 寝ていない……か。

 ロキの捜索。

 今後、同じような襲撃を許さないための対策。


 色々考えていたら眠る時間なんてなかった。

 でも、それも言い訳なのかもしれない。


 皆が思っている以上に、僕の心は弱い。

 王として、もっと強くならないといけないのに――。


「陛下。少しよろしいでしょうか」


 謁見室の扉を開けて入ってきたのはメルだった。


 いつも笑顔を絶やさないメルだけど、今日はいつもより笑顔が少ない。


 その瞳は真剣そのものだった。


「メル。何か進展が?」

「いえ。ただ、陛下に一緒に来て見てもらいたいものがあるのです」

「見る?」


 一体何だろう。

 メルに促され、僕は彼女についていくことにした。

 向かった先は、騎士たちが訓練に使っている場所だった。


 そこにいたのは――アインとフェルだった。


「アイン!」


 僕は思わず声を上げる。


 アインは襲撃者を食い止めようとして大怪我を負った。


 幸い、イシスの生命魔法やケアの薬によって命に別状はなかったけど、まだ無理をしていい状態ではないはずだ。


「王よ。アインはここでずっとライと修行を積んでいる。こやつが望んだことなのでな」


 フェルがそう答える。


「アイン、休んでなくていいの?」

「主殿。我は――」


 アインを見る。

 そこで僕は気がついた。

 アインは目隠しをしていた。


 それだけではない。


 耳には耳栓がされ、頭部は触角ごと包帯で巻かれている。


「視覚も……聴覚も……それに触角まで?」

「はい」


 アインが頷く。


「我は奴に遅れを取りました。自分の弱さを痛感したのです」


 アインは拳を握る。


「力不足だったことも悔しい。ですが、それ以上に悔しかったのは――一瞬でも奴の言葉に惑わされたことです」

「アイン……」

「故に、フェル殿に頼み修行をつけてもらっているのです」

「ふむ。だが、今のそれは何のためだ?」


 フィーが疑問を口にする。


 確かに視界も聴力も奪い、さらに触角まで制限した状態では、まともに戦えるとは思えない。


「アインは自ら鼓膜を破り、相手の言葉を届かなくした。しかしその結果、戦いに必要な感覚の一部を失い、技の精度を落とした」


 フェルが静かに語る。


「だからこそ、敢えて重要な感覚を封じているのだ」

「感覚を封じた状態でも、これまでと変わらない……いや、それ以上に戦えるようになれば」


 アインが槍を握り直す。


「我はもう、奴に遅れを取ることはありません」


 その言葉には迷いがなかった。


「ライもかつては剣であった」


 突然、フェルが口を開く。


「動くことも、己の意思を示すこともできぬ。ただの武器だった」


 フェルは自分の手を見る。


「だが、イシス様より命を与えられ、今こうして戦うことができている」

「フェル……」

「アインよ。己を嘆く暇があるなら、その命を得た意味を示せばいい。それがお主の望むことなのだろう?」

「――そのとおりである!」


 アインは力強く答えた。


「我が主に誓おう」


 そして僕へと体を向ける。


「このアイン――次に奴と戦う時は必ず勝利して見せると。王の騎士として必ず!」


 その言葉と共に、アインは再びフェルとの訓練へ戻っていった。


「主様。アインは負けず嫌いなんです」


 メルが優しく微笑む。


「だから一度負けても、すぐに前を向く。主様の為となれば、なおさらです。だからこそアイアンアントたちもアインを慕い、ついていくのでしょうね」


 その言葉を聞いて、僕は改めてアインを見る。


「主よ。気づいておるか?」


 フィーが口を開いた。


「あやつは感覚を封じておるにも関わらず、先ほどからずっと主様の方を向いて話していた」

「あ……」


 言われてみればそうだった。


「五感を封じた状態で、あそこまで動ける者などそうはいないでしょう」


 ルガールの言葉にフィーが頷く。


「それだけ必死に修行を積んでいるということでもある。いや……もしかすると五感で探しているのではないのかもしれぬな」

「どういうこと?」

「あやつにとって主様という存在は、それほどまでに大きいということよ」

「感動だわ。これも愛よね愛!」

「ス~」

「ンゴンゴ」


 フィーの言葉に、スーとラク、そしてアイも頷いている。


 アインは僕がいつまでも悩んでいる間も、前を向いて進んでいた。


 それなのに、僕がこんなところで立ち止まってどうする。


 ロキのことは心配だ。

 でも、僕には王としてやるべきことがある。


「皆。引き続きロキの捜索は続ける」


 僕は立ち上がる。


「だけど、まだまだやるべきことは沢山ある。僕もいつまでもくよくよしていられない。次の襲撃に備えて、皆の力を貸してほしい」

「ふふっ。勿論であるぞ」

「任せてホルス。でも、貴方は少しでも寝ること!」

「愛ゆえにね!」

「そうですわ。いざという時にお兄様が動けなくては意味がありませんの」

「ス~」


 皆の言葉を、今度は素直に受け止めることができた。


 だから僕は、このあと少しだけ仮眠を取ることにした。


 この国を守る為に――。

本日発売の月刊コミックREX9月号に本作のコミカライズ版最新の第22話が掲載されてます。

そしてコミック単行本最新第4巻の発売日が9月26日に決定!どうぞ宜しくお願い致します!

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