表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

336/336

第335話 剥製王へのロキの要求

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「私の城の武装に問題があるというのか」

「そうだ。俺は大砲にはちょっとうるさくてな」

「そこまで言うからには、この城の武装を強化する自信があると見ていいのだな?」

「勿論だ。俺に任せてくれるなら徹底的にやってやるよ」

「お待ちください。そのドワーフはバラムドーラで暮らしていました。やすやすと信じてよいものでしょうか」


 待ったをかけたのは執事のクレヴォであった。


 ロキは縄を解かれた腕を軽く回しながら、わざとらしく肩を竦めてみせる。


「確かに俺は坊主の下にいたが、成り行きでそうなっただけだ。俺の希望を聞いてくれるなら場所はどこでもいい」

「ほう。それで希望というのはなんだ?」

「女だ。そこにいるのでもいい。とにかくオッパイの大きな女を用意してくれ。それをしてくれるならいくらでも協力してやるよ」


 ロキはいつもの調子で言い切った。

 あまりにも欲望に忠実な要求に、ファーは「キュ~イ……」と力なく鳴き、七人のノームたちは揃って顔を覆った。まるで「また始まった」と言いたげだ。


「ハハッ、ハハハハッ! いいぞ。欲望に忠実なドワーフか。そういうのは嫌いではない」


 玉座に座るレクターが笑った。


 だが、笑っているはずなのに、その(ふくろう)のような双眸には一切の熱がなかった。獲物を観察するような、あるいは飾り棚に並べる品を見定めるような、そんな冷えた目だ。


「よかろう。クレヴォ、そのドワーフの部屋を用意してやれ。希望通りのメイドも一緒につけてな」

「――承知いたしました」


 クレヴォは一礼し、ロキたちを謁見室から連れ出した。


 長い廊下を進む間、ロキはあえて鼻歌まで混ぜて浮かれた様子を見せる。

 だが、ファーだけは気づいていた。ロキの指先が、ほんの少し強張っていることに。


「鍛冶用の作業場も準備する。でき次第、作業に移ってもらうぞ」

「わかってるさ。で、女は?」

「これで満足か」


 クレヴォが手を叩くと、ロキの希望通りのメイドが五人、部屋の中へ入ってきた。どのメイドも容姿は整っており、体つきも見事で、レクターが自慢するだけのことはある。


 ただし、その歩みは妙に揃いすぎていた。

 足音の間隔も、手の位置も、首の傾け方さえ同じ。生きた人間なら自然と生じる小さな揺らぎが、そこにはなかった。


「うひょぉおぉおお! 素晴らしいぞ! これなら俺は大満足だ!」


 ロキは大げさに叫び、真っ先にメイドへ飛びつくように近づいた。そしてその胸に顔を埋め、わざとらしいほど鼻の下を伸ばしてみせる。


「――貴様のようなドワーフがいるとはな。てっきりドワーフはもっとプライドの高い存在だと思っていたぞ」

「好きに言え」

「キュ~イ……」

「オイッスゥ……」

「――せいぜい今のうちに楽しんでおくんだな」


 クレヴォが冷ややかに言い残し、部屋を出ていく。


 扉が閉まる。

 足音が遠ざかる。

 それが完全に聞こえなくなった途端――ロキの表情が消えた。


「……冷たい。全く体温を感じないではないか」


 ロキはゆっくりとメイドから離れた。先ほどまでのだらしない笑みは、もうどこにもない。


 メイドたちは動かない。

 ただ、そこに立っている。

 肌は滑らかだった。造形は完璧だった。けれど、そこには脈も、息も、身じろぎもない。


「可哀想に――本来ならお前たちは、温かみのある最高の女だっただろうに」


 ロキの声は低かった。怒鳴るでもなく、嘆くでもなく、ただ静かに落ちた。


 ファーが「キュ~イ……」と小さく鳴く。さっきまで呆れ顔だったノームたちも、今は何も言わなかった。ロキの怒りが、本物だとわかったからだ。


「……何が理想の女だ」


 ロキが拳をぎゅっと握りしめる。


「魂の入っていない人形に何の価値がある。芸術家気取りのクソ野郎が。あいつは作品を作っているんじゃない。ただ壊しているだけだ」


 そう言って、ロキはメイドたちを見つめた。


 美しい。

 確かに、美しいのだろう。


 だが、笑わない。怒らない。照れもしない。嫌がりもしない。

 生きている女なら当然あるはずの反応が、そこには何一つなかった。


「生があってこその神秘だ。温もりがあって、鼓動があって、怒ったり笑ったりするからこそ女は美しいんだ。それを……こんなにしおって」


 ロキの声に、低い怒気が滲む。


「キュ~イ……」

「オイッスゥ……」


 ファーとノームたちが静かにロキを見上げる。いつもの呆れた目ではない。彼らもまた、目の前のメイドたちを哀れんでいるようだった。


「見ておけ。お前たちの無念と恨みを、この俺が晴らしてやるからな――」


 ロキはそう呟き、もう一度だけメイドたちを見た。


 その目には、いつもの欲望の色はなかった。

 ただ、鍛冶師として、そして生きた女を愛する男としての、静かな怒りだけが宿っていた。


明日発売の月刊コミックREX8月号に本作のコミカライズ版第21話が掲載されます!

どうぞ宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ