表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

335/335

第334話 剥製王の城

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 バラムドーラからレクター・コレクトの居城まで連れてこられたロキ。縄を引かれ、足取りもままならないまま辿り着いた先は、やけに静かな謁見室だった。

 広い。天井が高い。壁は重厚な石造り――のはずなのに、空気が薄い。音が吸い込まれるようで、足音すら自分の耳に届くまで一拍遅れる気がした。

 そして正面、玉座に一人の男が鎮座していた。


「――アマネトは連れてこられなかったか」


 抑揚のない声でレクターが言った。梟を思わせる相貌。茶色い中分けの髪に顎髭。体格はどっしりとしていて、全身を覆うマントがその輪郭をさらに重く見せる。


 だが一番目を引くのは、やはり双眸だった。フクロウのそれを連想させる瞳は、こちらを見ているのに“見ていない”。血の通わない硝子のような冷たさだけが宿り、感情の所在が読み取れない。


「今回は偵察がメインと聞いていたからな。代わりにドワーフを一匹捕まえて来たから、それで納得してくれよ」

「俺を動物みたいに言うな!」


 ギルの物言いにロキが声を荒げた。

 そのロキを観察するように、レクターの視線がゆっくり動く。視線だけが動き、表情は微動だにしない。


「ドワーフか。確かに珍しいな」

「はい、旦那様。しかもこの漢、北のニルヘイムからやってきたとのこと。ドワーフの中でもかなり珍しいタイプですな」


 淡々と語るクレヴォを、ギルが横目で見ていた。いつの間にそこまで調べたんだ、と感心しているようでもある。執事ってのはどこまでも抜け目がない。


「ふむ。確かに珍しいのかもしれんが、容姿がな。むさ苦しい」

「勝手に連れてきて随分な言い草だな」

「キュ~イ……」

「オイッスゥ……」


 目を窄めながらロキが文句を言う。ノームたちとファーは不安そうに身を寄せ合った。

 謁見室の空気は静かなのに、視線の圧だけが重い。まるで壁も床も天井も、全部がこちらを眺めているみたいだった。


 するとレクターが指を鳴らした。乾いた音が一つ。

 それだけで、背後に控えていたメイドたちがすっと前に出て、玉座の横にずらりと並ぶ。歩幅も、姿勢も、首の角度すら揃っている。整いすぎていて、逆に息苦しい。


「これが私の自慢の剥製たちだ。美しかろう?」


 レクターは笑ってみせた。だが顔が笑っていても瞳はまったく笑っていない。笑顔の内側に、言いようのない淀みがある。

 

――美しいものを眺めているはずなのに、そこに“温度”がない。


 そんなレクターとメイドを見たロキはというと――


「うっひょぉぉおぉおお! 素晴らしいではないか!」


 声を張り上げ、ロキはなんとメイドへ飛びかかろうとした。

 それを察したクレヴォの動きは速い。床を滑るように詰め、ロキの腕を捻り、体重を預けて一息で組み伏せる。縄があるのに、それでもなお確実に抑えるのが腹立たしいほど上手い。


「え~い! 何をする、離さんか!」

「黙れ。旦那様に手を出そうというなら容赦はしない」

「旦那様? 何を勘違いしている! 俺はあのメイドを近くで見たいだけだ! 最高のスタイルと美しさを兼ね備えた素晴らしいメイドをな!」


 組み伏せられながらもロキは叫ぶ。ノームたちは揃って頭を抱え、ファーは仰向けにひっくり返って、もうどうにでもしてくれと言わんばかりに「キュ~イ……」と情けない声を漏らした。


「ほう――」


 そこで別の反応を見せたのはレクターだった。

 声が少しだけ“上がった”。それだけで、この男の興味が動いたのがわかる。


「お前、この私のコレクションの美しさがわかるのか?」

「勿論だ。素晴らしい趣味ではないか。是非とも近くで見たいぞ」


 レクターが視線で合図した。

 クレヴォの拘束が解かれ、ロキは弾かれたように立ち上がると、すぐさまメイドの前へ。顔を近づけ、角度を変え、首筋、指先、頬のラインまでまじまじと眺めた。


 その姿を、レクターは飽きもせず見下ろしている。嬉しそうでもないのに、目だけがじっと“所有物を確かめる”ように動いていた。


「どうだ、我が作品は――」

「素晴らしい。確かにメイドの出来は最高だ。これだけの剥製を作るとは感服するぞ。だが――この城のつくりはなってないな」


 言い切った瞬間、謁見室の空気が一段落ちた。

 ノームたちが固まり、ファーがぱちぱちと瞬きする。ギルが面白そうに口角を上げ、クレヴォは眉ひとつ動かさない。


「何? 何か不満があるのか」

「俺は鍛冶師だからな。これでも物を見る目はある。特に気になったのは大砲だ! あれは全くなっとらん!」

「ほう」


 先程までとは打って代わり、レクターはロキに興味を抱いたようだった。

 無機質な瞳が、初めて“獲物”ではなく“素材”としてロキを見始めた――そんな気配が、ひやりと背筋を撫でる。

明日発売の月刊コミックREX7月号にて本作のコミカライズ版20話が掲載されます!

コミック単行本1~3巻も好評発売中です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ