第171話 砂漠の同士を助けに行こう
僕たちは主要なメンバーを連れてパピルサグ達が暮らす集落に向かっていた。
「陛下。一つだけご忠告を」
その途中で、元帝国騎士でもあるジャハルが僕に話しかけてきた。
「シュデルが率いているのが千鋭百鬼団であるなら、我らのようなことになることは期待しないほうがいいでしょう」
彼らのようなこと……つまり帝国から離れて味方についてくれる可能性のことか。
「ふむ、勿論妾は徹底してやるつもりだがのう。しかし、ないといい切れるのは何か理由があるのかのう?」
「はい。フィー様。千鋭百鬼団はその能力は勿論ですが、思考も含めてシュデルに近いものが選ばれています。戦いにおいても決して容赦せず人道に反する事も平気で行うような極悪非道な軍団。それが千鋭百鬼団――鬼とつくのもそのやり方があまりに常軌を逸した狂気じみた物であることからつけられたともされているのです」
それからジャハルがシュデルと千鋭百鬼団が戦場で行った行為を教えてくれたけど、聞いているだけで気分の悪くなる話だった……
「やっぱりあいつは最悪ですの……」
「どうして……そんな真似が出来るの? ホルスのお兄さんなんだよね?」
モルジアが眉を顰め、イシスは悲しげに眉を落とす。僕も兄とは思えない非情さに信じられない思いではある。
「私からすれば帝国の中で陛下や姫のような方が生まれたのが奇跡と思えます。マグレフ帝国は常に殺伐とした空気が漂ってますから」
う~ん……確かに――そう言われてみるとそうなのかもしれない。
「だからこそお兄様の存在が求められましたの。使用人たちも唯一お兄様の前では張り詰めた糸が切れたようにホッとした表情になってましたわ」
「ふふ、ホルスの優しさが皆の不安を取り除いていたんだね」
モルジアとフィーがそんな事を言う。ちょっと照れくさい――
「え? そ、そうかな? あまり実感わかないけど……」
う~ん、でも僕の周りにいたメイドさんとかは優しかったイメージがあるかな。
「王よ。今の話を聞いていると危惧すべきは既に集落が帝国に占領されていた場合と思われます」
スイムが真剣な顔で懸念すべきことを教えてくれた。
「相手は人を人とも思わない連中。パピルサグ達の扱いも決していいとは言えないでしょうし、何より戦いが始まれば人質としてや盾として利用される可能性も十分ありえます」
「確かにな……流石に今回ばかりは無血の勝利とはいかないかもしれないぜ」
ライゴウが難しい顔を見せる。アローネやサーチもだ。皆厳しい顔を見せていた。
「坊主。言っておくがこの大砲だって調整は効かねぇぞ。ぶっ放したらそれ相応の被害が出る。人質だけノーダメージというわけにはいかねぇ」
「むむむ、これは難しい局面にゃん」
「…………」
「ちょ、みんな……」
僕たちと同行してくれているパピルサグ族の彼が鎮痛な面持ちを見せた。皆が、あ? という顔を見せる。
「……いいのです。確かにそれは今考えねばいかぬこと。もうすぐ集落にも到着します。ただ、私としてはせめて族長とマイン様の命だけでも……」
諦めに近い表情で彼が言う。でも、そんなのは駄目だ……全員助けたいなんて甘い考えと思われるかもだけど、でも、仲間の犠牲ありきで挑むなんて僕には納得がいかない。
「……重要なのは集落にいるパピルサグ族をどう助けるかであるのう」
顎に手を添えフィーが考えを巡らせた。フィーも神獣だけにかなり強い。ただ加減が苦手なんだ。人質のいる状況ではやれることも限られる。
「お、おらが盾を持って突っ込むのどうだか?」
「それで全員倒せるわけでもなかろう。多少は怯むかも知れんが、人質がいる状況では得策ではあるまい」
ジャックの提案を水の竜団のバタフライが否定した。
「うぅ、やっぱりおらは頭を使うのは苦手だべ」
「いや、でもそういう風に意見を言うのは大事だよ。思いついたことはどんどん言って欲しい」
肩を落とすジャックを労う。駄目だからって萎縮するよりは自信を持って発言して欲しい。
「王よ! それであれば我とメルにいい考えがありますぞ!」
「うん! 絶対王様の役に立って見せるよ!」
するとアインとメルが前に出て張り切ってそのいい考えを教えてくれた。そして、それは確かにこの状況において理想的な作戦でもあった。あったんだけど……
「でも大丈夫? 相手はかなりの手練だよ?」
「我らをどうか信じて下さい!」
「私達だって王国は勿論味方を守るために役立ちたいもん」
アインとメルが自信を覗かせた。そして後は僕の決断――でも、そうかここは僕も仲間を信じないと。
「うん。それなら二人共お願い! 頼りにしてるよ!」
「お任せを! 必ずやこの任務成功させて見せましょうぞ!」
「蟻の戦い方を教えてあげる!」
そして作戦も決まったところで僕たちは集落に向けて進んだ。パピルサグ族の集落の入り口は隠されていたはずだけど、今は穴が開きっぱなしになっていてその前では帝国の鎧を着た騎士と兵が立ち見張っている。
さぁ、ここからが大事だ。僕たちは特に隠れることもなく堂々と帝国兵の前に姿を見せた。
「ムッ! 何だ貴様らは!」
僕達に気がついた兵士が誰何してきた。だから僕もそれに答える。
「僕はバラムドーラ王国の王ホルス。同盟を結んでいるパピルサグ族を助けるためにやってきた。先ずは兄でもあるシュデル皇子と話がしたい。ここに呼んできてくれ」
「ホルスだと? 追放された帝国の元皇子か……」
そして騎士達が言葉を交わした後、集落へと潜っていった。後はシュデルがどう出るか――




