魔導皇帝の呪文の欠点
“もう知ったから何も問題は無い”
ミハイルのその言葉にみんなも頷いている。
「まぁ、そんな事やろうとみんなとも言ってたしな。」
「そうだな、キョウカ。そやけど収納がそう言う能力なら王都の周りのアレも説明はつくけ?」
カエデが言う王都の周りのアレと言うのは抉れた溝の事だろう。
あれは“呪文を弾いた”でも説明できると思うのだが、問題点があったのだろうか?
「そうですね。ニコラが攻撃や呪文を弾いた場合、正反対の方向へ弾きます。それだと王都の周りを綺麗な溝は出来ませんからね。」
マロリオンの説明で納得がいった。
元々から隠せていなかったのだ。
それを薄々わかって黙っていたのだ。
「……言わなかったのが馬鹿みたいに思える。」
僕はやれやれと肩をすくめそう呟いた。
「ところで、ニコラ。溝を掘ったアレはまだ使えるのか?」
マロリオンが訊ねてきた。
今回の攻略に使うつもりなのだろうか?
「ああ、使えるがいったい何に使う?」
「いや、魔導警備兵に使えないかと思ってね。」
やはり、“究極流星乃嵐”で魔導警備兵を倒そうと考えた様だ。
だが、あの呪文には欠点がある。
あまりにも威力が大きい事もあるが、それ以上の欠点がある。
「マロリオン、あれは使えない。今回の様な場合に使うことは出来ない欠点がある。」
「欠点?確かに威力が高すぎる様な気がするが、呪文ならある程度加減は出来ると思うが?」
「そうそう、魔導警備兵をかすめる感じでも良いんじゃないのか?」
ミハイルの言うように効果範囲ギリギリに入る様にすれば調整できる様に思える。
だが、それでは無理なのだ。
「あの呪文は収納した時と同じ威力だから調整は出来ない。調整できたら話は変わるのだろうが、それ以前の問題もある。あの呪文は一定量の体積を消し去る呪文なんだ。」
「体積を消し去る??」
魔導皇帝の作り上げた呪文“究極流星乃嵐”はどの様な効果でそうなるのかはわからないが、一定量の体積を消し去る。
消し去るというのは言葉通り無に帰る。
その存在が無くなるという意味だ。
しかもご丁寧に、一定の体積が必ず消える。
かすめる様に呪文を使っても接する部分の物質がこの世から消えるのだ。
「あの呪文を使うと、魔導警備兵だけでなくその下の鉱山も消し去る。」
その言葉にみんなは驚く。
どうやら、魔導皇帝の呪文は威力の高い呪文としか思っていなかったようだ。
「僕も理屈は判らないけど、あの呪文は一定量の存在自体を消し去る呪文だ。」
「……存在を消し去る……相反する呪文の組み合わせにより可能だが、あれは確か膨大な魔力が……。」
マロリオンは“究極流星乃嵐”の理論を知っている様だ。
だが今はそれよりも、鉱山の攻略が最優先だ。
「そう言う訳で、あの呪文は使えない。代わりに魔導警備兵の炎の効果を収納する。後は、鉱山に入ってからと何時鉱山に行くかだね。」
僕達は話し合いの末、次の日の朝から鉱山の攻略を開始することにした。




