暗黒大陸探索の命令が下された。
某月某日
王都の冒険者協会会議室では定例の報告会が行われていた。
部屋は4m×5mの大きさがあり、出入口の他の小さな窓が一つない部屋だ。
白い壁には魔術の模様が描かれ何らかの効果を発揮しているように思えた。
その部屋の中央に長テーブルが置かれ、両端に五人ずつ座る。
各員の前には報告書が置かれ、何人かは報告書の中身を見ていた。
「冒険者カードについてですが、現在の所、ほぼ全ての冒険者にいきわたりました。」
冒険者協会の会長となったスカディは長テーブルの最も入口に近い位置に立つ。
スカディの後ろには元宮廷魔術師であったキュアが手に大きな巻物をもって控えている。
そして冒険者カードの配布状況について説明していた。
「それで、この冒険者カードはこの報告書に書かれている通りの性能を発揮するのかね?」
そう聞き返すのは、王国宰相のジョン・ウィッスルだ。
冒険者カードの性能が一番に気になっている様だった。
「はい。ではキュア殿、説明を。」
スカディの後ろからキュアが進み出る。
そして手に持った大きな巻物を長テーブルに広げた。
巻物は王宮の他、王都の街並み、城壁、外堀などが描かれた地図だった。
「この王都の地図は冒険者カードと連動しております。合言葉を唱えると……。」
キュアが二、三語言葉を唱えると、地図に複数の光点や黒点と文字が浮かびあがる。
「光の点が今いる位置、文字が冒険者カードに書かれた名前です。」
光点を指し示しながら、キュアが説明を続ける。
「冒険者カードは冒険者と紐づけられています。冒険者自身が持っている限り、この様に今いる位置を示すことができます。」
今度は逆に黒点を指し示す。
「逆に紐づけられている冒険者が傍にいない場合、この様に黒い点で表示されます。」
「ふむ、これで冒険者の動向を監視するわけだな。で、このことは冒険者の連中は?」
「当然、知っております。このカードの持つ利点を理解している為、所持を拒否したものは少ないと考えられるのです。」
「ああ、緊急時の連絡だな。」
「はい、命の危機などの緊急時、カードを操作すればギルドに連絡が入るようになっています。誤動作を起こさない仕様になっている為、間違った操作はあり得ません。」
「この緊急時の連絡やカードの探知はどのぐらいの距離がある?」
王国の軍にも採用するつもりでいるのか、軍務相のニール・ハートは連絡の届く距離を尋ねた。
「探知点が一カ所ならば、王国内と周辺が限度です。探知点を二個以上にすれば、それらを比較することで暗黒大陸は網羅できると考えております。」
説明を聞いていた一堂に感嘆の声が上がる。
ただその中で、財務相のジミー・リックからカードについての質問があがる。
「このカードは魔物や他の魔導士に探られる危険はないのかね?」
「魔物に影響しないのは、実験と実戦で確認済みです。また、連絡と言っても常時行っているわけではありません。ごくわずかな時間で位置を探る事はかの魔導皇帝でさえ不可能であると確信しています。」
「なるほど、よく判った。では件の冒険者のスキル訓練はどうなっている?」
「はい、彼の訓練は終了しており、基本的な攻撃呪文は全て習得済みです。ただ……。」
「ただ?」
「はい、残念なことに彼、ニコラは前衛である為か精神の値が低い為、高位呪文を使えるのはもっと先であることが推察できました。」
「そこは仕方があるまい。探索を続けていくうちに使えるようになるであろう。」
「探索を?では……。」
「うむ、本日陛下より”暗黒大陸探索”の命令が下された。」




