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魔導帝国の興亡

魔導帝国グレゴワールはその名前の通り、グレゴワールによって300年前に興された帝国である。

帝国はもともと小さな王国の集まりに過ぎなかった。

それがある国の辺境領主にすぎなかったグレゴワールによって統一されたのだ。


統一当初から今日までグレゴワールはこの世界最高かつ最強の魔導士として名を馳せていた。

だが、グレゴワールは初めから魔導士だったわけではない。


グレゴワールはある特殊なギフトの持ち主であった。


”複製”のギフト。


複製のギフトによって彼は様々なものが複製できた。

その一つが自らの複製である。

彼はそのギフトによって自らの複製を作った。

だがその複製は、当初、全く動かない生ける屍の様な物だった。


そんなある時、いくつかの王国と統合した頃、

グレゴワールは政敵によって毒殺され生涯を終えた・・・・・

地方の領主と違い、後釜を狙う者は多い。

その為、グレゴワールを毒殺し統合王国の王の地位を狙ったのだ。

グレゴワールは完全になくなったものと思われた。

しかし、複製した肉体で意識を取り戻したのだ。


ギフトの研究の為、自らの複製を置いておいた事が幸いした。

それだけではない。

彼の記憶は毒殺された時と連続していた。

どうやら記憶は魂にも記録される物らしい。


ただ、複製体に魂が移るのには移動時間の様な物があるようだ。

グレゴワールが複製体で復活した時、

毒殺しようとした相手がグレゴワールの葬儀を執り行い後継者を名乗ろうとしていた。


復活を果たしたグレゴワールは直ちに相手を糾弾、関係者もろとも葬り去った。

これ以降、グレゴワールには不死身の二つ名が付くこととなる。


そして更なる“複製”のギフトの研究の結果、能力を二重に複製することで能力強化に成功。

それを多重に複製することで人間では到達できない知性や精神を持つに至った。

以降、グレゴワールは世界最高の魔導士の道を進む。


グレゴワールは倒しても蘇る不死身の魔導士として名を馳せ、

国を統一、グレゴワール魔導帝国を建国したのだった。

その後、類を見ない強力な呪文や召喚された魔物で周囲の小国を併合し拡大、

西に一大魔導帝国を築き上げた。


―――――――――――――――――――――


「前線の様子はどうなっている!」


「目下、魔導士が連絡を取っておりますが・・・」


帝国の玉座に座る男がこめかみに手を当てた。


この男、玉座に座っているが皇帝ではない。

魔導帝国の四天王の一人、レクト・アッシュランドである。

四天王と言っても彼の能力が極めて高いわけではない。

実際、レクトの能力は魔導士としても並である。


レクトが四天王に選ばれたのはその容姿ゆえ、

グレゴワール魔導皇帝とほぼ全て、

容姿も魔力のパターンも全く同じであったからなのだ。


帝国では個人を特定する場合”魔力パターン”をつかう。

この魔力パターンは個人によって異なり、

同じパターンを持つものは極めてまれだ、


四天王に抜擢されて以来、レクトはグレゴワールの影武者を務める様になった。

その事を知っているのは皇帝自身と四天王だけである。


(ここまで連絡が無いと陛下の身に何かあったのかもしれぬ。

となると・・・。)


レクトは何かを思いついたのか玉座から立ち上がった。


「陛下!どちらまで?」


「部屋に戻る。」


レクトは玉座から立ち上がると急いで皇帝の私室へ向かった。

皇帝の私室は四天王でもレクトだけに許された部屋だ、

私室は研究所と繋がっており、そこには皇帝自身の複製体が隠されている。

レクトは、皇帝陛下が遠征先で命を落とすことがあれば戻ってきているはずと考えたのだ。


だがレクトが見た光景は信じたくない物であった。


「こ、これは!!崩れて行く!!」


レクトが見た者は崩れ行く皇帝の複製体の姿であった。

皇帝の複製体は今まで損傷することは無かった。

それが今、崩れようとしている。


これは複製体を作ったギフトの効果が無くなりつつあるのだ。


もしギフトの持ち主が生きていればギフトの効果は消える事はない。

その反面、ギフトの持ち主が死亡した場合ギフトの効果が切れる。


(陛下が死亡した?!)


レクトは崩れ行く複製体を見てそう結論付けた。


(くそ!

この帝国は陛下の力によって成り立っていた。

陛下が亡くなったら帝国が瓦解する!

私は陛下と姿が似ているだけで何の助けにもならない!!

せめて、他の四天王の一人でも生きていれば・・・)


前線からの連絡が無くなって何日過ぎただろうか?

もし生きているのならば、四天王も帰還しているはずだ。

それが無いと言う事は四天王も死亡した可能性が高い。


崩れ行く複製体を見つめレクトは仕方のない事と諦めていた。


(魔導帝国の興亡、

グレゴワールに始まりグレゴワールに終わる・・・か。)



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