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ゴスロリ・スピカ! その1 ~せめて女の子にしてください!~  作者: 首藤えりか
~せめて女の子にしてください!~編・第二部
9/30

第九話・彩花の想い?

再リメイク版と差し替え

「瀬戸彩花」さんから見た前回の別視点物語です。

 目の前では信じられない光景が広がっていました。

ゴスロリ・スピカと名乗るミニ丈ドレスの女の子が、何人もの強そうな男たちを相手に一人で戦っているんですもの。ほっそりした、とてもじゃないけど強いとは思えない女の子が。


「おい、今の見たか?」


「ピンク……いい♪」


「ピンクだね♪」


「ピンクいいね!」


周りの男子生徒が不謹慎な事を言っています。確かにあのドレスでは下着が見えて当たり前、解らなくもないけど、それを指摘するのはあまりに失礼ではないかしら?


「違うって! 俺見ちまったんだよ!」


「なにをさ?」


「パンツの前がもっこりしてたのをさ!」


同級生の一人、いつもえっちな発言の目立つ典部のりべ君が信じられない、といった態度で叫んでいます。

今、その……もっこり、って言ったわよね? それって、男の人の……?

うそ? あんなかわいらしい女の子が男性だなんて!?

でも、そういう人を私は一人だけ知っています。それは、今この場にいない留崎とめさきシオン君。確かに彼なら女の子に見えても不思議は無いけど。


「オカマだぞ、アイツ!」


「男のクセに女装なんて、変態じゃないか!」


「しかも女装してもっこりだぞ、変態丸出しだろ?」


周りのみんなは、まるで汚らしいものでも見てるかのような態度、もちろん男の身で女装なんて、というのも分からなくはないのですけど、今の彼は違うと思うの。

少なくともさっきの女の子、じゃなくて彼はほんとに真面目に戦ってた。

戦い方は確かに違和感があるけど、きっと何か事情があるはず。ふざけてるって感じもなかったし。

それに、少なくとも下心なんてちっとも見えなかったもの。

純粋に妹さんを、仲間を守ろうって気迫に溢れてた!

なのに、なのにみんなは……


さっきまでの気迫をそがれてモジモジしている黒いドレスの子、ゴスロリ・スピカ。

本当に恥ずかしそうに前を押さえ、真っ赤になって震えています。


「スピカがんばれっ!」


「負けるなスピカっ!」


ほんとに一部の生徒が声援をかけているけど、大半の生徒ははやりスピカを変態扱いしたまま。

でも私には分かるの。あの子が好きであんな格好をしてるんじゃないって。

本気で仲間を守るために、無理をしてまであんな恥ずかしい格好をしてるんだって!


「おやあ? もう降参ですか? なんとも頼りないヒーローですねぇ」


フンドシ男がつかつかとスピカに歩み寄り、眼鏡をぱっ! と取り払います。

スピカの正体、それは私の予想通り、留崎君……

いつも気弱でおどおどしていた留崎君がこんなに頑張ってたのに、私は、私たちはいったい、何をしているの?


「シオン! お前シオンなのかっ!? じゃあお前って、男の娘なのか!?」


スピカの、留崎君の顔をまじまじと見て典部君が叫んでいます。その表情は信じられないかのように固まり、口はあんぐり外れたかのように開かれています。


「え!? はうっ、ふえぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!」


ショックに打ちひしがれ、まるでこの世の終わりであるかのように泣き続ける留崎君。

やっぱり彼、すごく無理してあんな姿になってたのね。

それなのに、それなのにみんなは……!


「お兄ちゃん……!」


みんなとシエリちゃんが呆然と見ている前で、ただ号泣しているだけの留崎君。せっかく頑張ってたのに。せっかくみんなのために戦ってくれてたのに!

みんなはそれをかわいそうだと、頑張ってる姿を見てかっこいいと思わなかったの!?


「美少女と変態は根絶すべき悪だ! 食らえっ! 正義の鉄槌っ!」


号泣している留崎君に向けて、フンドシ男が見るに耐えない激しいパンチ!

派手に吹き飛び、私たちの前に倒れる留崎君。ひどいっ! 無抵抗な子にあんな暴力を振るうなんて!


「留崎君立って! みんなも仲間でしょ? 見てないで応援して上げなさいよ!」


私は思わず叫んでいました。だって、頑張ってた彼を黙って見ているなんて出来なかったもの。

手を貸してあげられなくても、私にだって応援くらいはできるもの!


(頑張って留崎君。そんな恥ずかしい思いまでして守ろうとしたもの、最期まで貫いて!)


心の中で祈り、叫ぶ私。戸惑いを見せていた周りの生徒たちも、いつしか少しだけど応援に加わり始めます。


「大丈夫かっ?」


「しっかりしろっ!」


でも……

やはり大半の生徒は彼へのあからさまな軽蔑の眼差しをやめないわけで。


「もうやだっ! 変身なんてしたくないっ! ゴスロリ・スピカなんて消えてなくなっちゃえばいいんだっ!」


「留崎君……!」


顔は痛々しく腫れ上がり、号泣をやめないまま、それでもなお、ふんどし男の前に居座り続ける留崎君。

そう、彼をあそこまで追い詰めたのは、彼の気持ちもわからないまま変態扱いしている私たちなんだ!

そのせいで、彼はせっかく振り絞った勇気もかなぐり捨て、ただ殺されるためだけにフンドシ男の前に居座り続けているのですもの。

それ、あんまりでしょ? 彼は何にも悪くないもの! ただ頑張って妹さんを、みんなを守ろうとしているだけじゃない!?


「こんなクズを殴るのに俺の拳は勿体ない、とっとと失せろ、負け犬野郎っ!」


蔑みの態度でフンドシ男は留崎君を怒鳴りつけます。でも、クズなんてひどい! 少なくとも彼は負け犬なんかじゃないもの。

悪いのは私たち、留崎君の気持ちも知らないまま、変態扱いしている私たちなのに。


フンドシ男を行かせまいと、ボロボロになりながらもなお、立ち上がろうとする留崎君。でもフンドシ男はそれを押しのけると、妹のシエリちゃんを捕まえて立ち去ろうとします。みんなはそれを、ただ指を加えて見ているだけで……


「お兄ちゃん頑張って! この前みたいにガツンとやっちゃってよ!」


「そうよ留崎君! あなたが立たないと妹さん、連れて行かれちゃうのよ!」


フンドシ男に引きずられながらも、必死に僕に助けを求めるシエリちゃん、私も負けずに応援するけど、でも……


「僕もう無理だよ、戦えないよ! だってただの女装した変態でしかないんだから! こんな情けないやつ、この世から居なくなっちゃえばいいんだっ!」


そんな……私たちが、留崎君をあそこまで追い詰めていたなんて……

助けてあげたい。何か力になってあげたい! でも、私にはそんな力なんてない……!


「お待ちなさいっ!」


いきなり間近で響くオネエ言葉、太くて強い、男性の声。


「シリウス……!?」


留崎君が意外そうに小さく呟きます。

ずざざっと引いた生徒たちの間から姿を現したのは、水色の超ミニ丈アリスメイド服を着た、長身でたくましい中年男。彼のスカートの前面は……その、もっこりと高く盛り上がってて……


「スピカ! あなたが情熱パトスを失ってどうするの!? あなた負け犬になりたいの? 妹さんはどうなってもいいのっ!?」


「やだよ、僕、変態になっちゃったからもう戦えないよっ!」


「いい加減になさいっ!」


シリウスと呼ばれた女装男性の鋭い叱咤の声、彼は泣きじゃくる留崎君につかつかと近寄ると、バシッ! といきなり頬を平手打ちして


「変態がなに? 人間ってね、きれいごとだけじゃ生きていけないのよっ! 地を這いつくばってでもしぶとく生きなきゃならない時もあるの! 女装ごときでくじけてどうするのっ!?」


「だってあいつら、力技じゃ倒せないから恥ずかしい戦い方しか出来ないし、それに僕、みんなにもっこりを見られちゃったし……!」


「何? そのために編み出した奉仕技サービス・テクでしょ? それに、あなたの言ってるのはこれのこと?」


なおも泣きじゃくる僕留崎君の目の前で、シリウスは自分の短いスカートの前を迷う事なくばさっとめくり、熱くたぎっているもっこりを納めた純白パンティを、これでもかという勢いで留崎君に見せつけます。周囲のみんなは目を背けているけど、留崎君はただ呆然と、シリウスの、それ・・を間近に見据えたまま。


「このパトスこそが私たちの活力、正義の鉄槌を下す原動力なのよ! これは正義の戦いであって変態行為なんかじゃないのっ! さあ立ちなさい! |パトス()を復活させなさい! あなたなら出来るはずよっ!」


「シリウス……」


ボロボロだった留崎君の中で、何かが変化しています。気迫に表情がシリウスの登場で引きまくっていた生徒たちも少しずつ集まってきて


「留崎君、そうよ! 立つのよっ!」


私は留崎君に手を差し伸ばし、しっかりと立たせて上げます。

何の魔法かわからないけど、あれだけボロボロだった顔も何とか見れる状態にまでおさまり、落ち着きと勇気が戻ってきたことが伺えて。

しっかりと立ち上がる留崎君、それを脇から支える数人の生徒たち。


「スピカ頑張れ!」


「シエリちゃんを取り戻そうぜ!」


「一緒に戦おう!」


「もっこりは正義だ! 勇気を出せよ!」


いつしかみんなの声援も増え、すでに大半が応援モード。


「ありがとう、ありがとうみんな! 僕頑張るよ、頑張ってシエリを取り戻すんだ!」


「「「「おおっ!」」」」


留崎君のの強い決意にみんなの歓声が応えます。そうよ、頑張って留崎君! あなたは決して一人ぼっちじゃないのよ!


遠く立ち去ろうとするフンドシ男たちを追い、留崎君が走ります。あとに続く同級生たちとシリウスが口々に「頑張れ!」を連呼しています。


「お待ちなさいっ!」


「おや? 変態の負け犬が戻ってきたぞ? また殴られたいのか? 女装趣味の変態ちゃん!」


「パトスは情熱! 変態なんかじゃない! そして……スピカは負けない! あなたを倒してシエリを取り戻すのっ!」


なぜかオネエ言葉になる留崎君、でも気迫はしっかり戻ってる。もう大丈夫よね、留崎君!


「やっちまえっ!」


「「「「がってんだいっ!」」」」


再びゴロツキたちが私たちを襲うけど、留崎君とシリウスがその隙をかいくぐって鋭く踏み込み……くすぐりとか、恥ずかしい技を受けて悶絶、次々と沈んでいきます。フンドシ男は私の周りにいる同級生たちによって行く手を塞がれ、立ち往生しています。

みんなが思うように確かに違和感あるのよね、攻撃がくすぐりと……その、えっちなこと・・・・・・だなんて。

でも、留崎君たちは真剣そのもの! 決して遊びで戦ってるんじゃないの。だから私たちもしっかり応援しないと!


「もう逃がさないわっ! 諦めてシエリを返しなさいっ!」


ずいっと踏み出し、声高らかに宣告する留崎君。

たじっ、と引きながらも強気のフンドシ男は、


「な、ならこの娘がどうなってもいいんだな? 俺は本気だぞ!」


と叫びつつシエリちゃんの首に手を回し、ぎりぎりと締め付ける。苦しそうに喘ぐ彼女に、思わずたじろぐ留崎君とシリウス。


「どうだ、手も足も出まい! 変態は変態同士、仲良くいいこと・・・・でもしてるんだなっ!」


「ひ、卑怯よっ!」


留崎君たちを嘲笑うフンドシ男、何も手が出せないでいる留崎君たち。

シリウスが留崎君の耳元に顔を寄せ、何かそっと耳打ちしてるけど。

あからさまに嫌そうな留崎君に、シリウスが強気で詰め寄っています。もしかして、今以上に恥ずかしいことでも強要しているのかしら?


意を決したかのような留崎君がおずおずとシリウスに近づき、そーっと胸に抱きつきます。

シリウスがガバっと両手を広げて留崎君をがっしりと抱きとめます。

ああっ、男同士で抱きあうなんて! ちょっとおぞましいものを見たような気もするけど、でもシリウスには何か秘策があるのだと思うの。

本気で嫌そうな留崎君にグイグイと密着してくるシリウス。その、下半身が変に留崎君に密着しているなんて、私にはとても言えないですっ!


「さあ、行くわよ! 合体奥義、「クイーンエクスタシーっ!」」


二人で叫ぶと、シリウスがさらに留崎君に密着していきます。青冷めて顔を背けている留崎君に対し、シリウスは何かとっても幸せそうに、その、ああんっ、私にはこれ以上説明出来ません!


「お前らついに目覚めた……か……え?」


なにやらフンドシ男の様子に変化が生まれ、膝をわなわなと震わし始める。それは全身に伝搬していき……


「あ、ああっ、そ、そこは……だめぇっ!」


変に上ずった声を上げるなりシエリちゃんを手放し、へなへなと崩れ落ちるフンドシ男。と、クマのお面が静かに外れ……


「な、何この人?」


シエリちゃんが呆れた顔で覗き込んでいるフンドシ男の素顔、それは……ゲジゲジ眉にタラコ唇、これじゃ絶対モテナイ! というほどにかわいそうなブサイク顔で。


「こいつらって何者……?」


「たぶん自分たちがモテなかった腹いせにイケメンや美少女たちを襲う、ただの逆恨み集団ね!」


呆れ果てた顔でシリウスに質問している留崎君。同じく呆れた顔で肩をすくめて答えるシリウス。

でも、みんな無事で済んでよかった!


「ひっでえっ! こんな奴らに俺らのシエリちゃんが奪われようとしてたなんて!」


「そうだそうだっ! シエリちゃんは僕らのものだっ!」


「ちょっと待てっ! いつからシエリがお前らのものになったんだよっ!?」


「「「「さっきから!」」」」


「そんなの僕は認めないっ! シエリは僕が守るんだっ!」


「お兄ちゃんったらっ♪」


気が緩んだのか、生徒たちがシエリちゃんを奪い合うような発言をするのに対し、留崎君が反論しています。

そうよね、今回彼は、すごく頑張ってたもの! それくらい言う権利があるわよ♪  でもね


「留崎君、こんな人たち相手にしてたら身がもたないわよ?」


留崎君の独占発言にシエリちゃんが恥ずかしそうに応じるのに続いて、私は呆れた、でもほっとした気持ちで忠告してあげます。

本当に留崎君って、妹さん思いなのね。私もあんな風に男性に思われてみたい……

留崎君なら私のことも、あんな風に大事にしてくれるのかしら。


「え……い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」


なにやら留崎君とシリウスが話し合っていたかと思うと、急に悲鳴を上げ始める留崎君。

もじもじと恥じらうように腰をくねらせているシリウスに、もう心底ゾッとした、という態度でドン引きしている留崎君がいます。

もしかしてあの技って、とんでもなく恥ずかしい技? それともおぞましい技なのかしら?

聞いてみたくもあるけど、やっぱりここは……聞かないほうが花よね?

ふと気づくと後ろでは典部君たちがみんなと何やら話し合っている。何かの順番を決めているのかしら?


「……よしっ! じゃあ会員ナンバー二〇番までこれで決まりだな!」


ドン引きしていた留崎君が、何やら興味深そうに典部君たちのところに近づいて


「みんな何やってるんだ?」


「ゴスロリ・スピカファンクラブの会員決めてた!」


「え? 僕のファンクラブ!?」


「ついでにシエリちゃんファンクラブも兼ねてるけどさ!」


「ええええええっっっ!?」


心底嫌そうな留崎君をよそに、妙に盛り上がっている典部君たち生徒一同。

私もファンクラブ、というのには抵抗があるけど、それでも私は頑張ってた留崎君には精一杯のエールを送りたいと思うの。

これからも、ずっと……ね♪


もしよかったら感想等よろしくお願いします。

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