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うまくできなかった?

僕と氷雨は、18時を過ぎる頃までイチャイチャを繰り返していた。


(ひかる)、19時までには帰らないといけない。」


「じゃあ、服着替える」


「待って、もう少し座ってよ」


氷雨、ダメだよ。


もう、お別れしなくちゃ


涙が(こぼ)れ落ちてくる。


「星、泣かないで」


優しく涙を拭ってくれる。


その手を優しく握りしめて、僕は氷雨の指を噛んでしまった。


「食べたいの?」


ハッ、僕は口から離す。


ダメだ。


化け物に思考までも喰われ始める。


氷雨は、僕の頭を優しく撫でて口の中に手をもう一度いれようとする。


「今度は、食べていいよ」


僕は、首を横にふる。


「ちゃんと食べてよ。星が、食べたいなら、少しだけでも食べていいよ」


僕は、さらに首を横にふった。


「氷雨が、いなくなったら生きていけない」


胸を押さえながら、言った。


「わかってる。」


唇を重ねて、キスをされた。


もう限界だ。


化け物が、暴れてる。


「氷雨、帰ろう」


僕は、氷雨から離れた。


「服、着替えよう」


そう言って、スーツに着替えた。


ブザーを鳴らすと店員さんが、現れた。


「お帰りですね」


「はい、お会計は?」


「もう、いただいておりますので」


そう言われて、氷雨は鍵を渡した。


並んで歩く、コートを着てお店を出た。


「お気をつけて」


そう言って、深々と頭を下げられた。


僕と氷雨も、お辞儀をした。


手を繋いでくれる。


名残惜しいけれど、お別れをしなくちゃ…。


「氷雨、じゃあ帰るね。僕は、こっちに」


フワッて抱き締められた。


「ダメだよ。約束したよね」


「そんなの守れないよ。」


「ダメだよ。」


僕は、氷雨を引き離そうとするけど氷雨は離れてくれない。


「今日、(ひかる)を離せば二度と会えなくなる。」


「離れて」


僕は、力一杯氷雨から離れた。


ドクン苦しい。もう、駄目


「じゃあね」


そう言って、振り返って歩きだした僕を氷雨が後ろから抱き締めた。


「嫌だよ。」


「駄目、離して」


「離さない。絶対に離さない」


もう、許して


化け物を止められない。


氷雨を喰ってしまいたい。


「僕と一生一緒にいる?」


「うん、いるよ。」


「だったら、逝こうか」


「どこに行くの?」


花丘台(はなおかだい)


氷雨は、固まった。


「そっちの逝くなんだね。わかったよ。」


氷雨は、僕の手を繋いだ。


ブー、ブー


僕は、スマホを取らなかった。


(ひかる)


「えっ?」


「離せ」


氷雨の手を(るい)が離す。


「もう、逝く約束したんだよ。僕と星は」


バチン


氷雨を(るい)が、平手打ちした。


「氷雨君は、妻子がいるだろ?だから、帰れ」


「星は、どうなるんだよ。僕が傍にいてあげないと駄目なんだよ。」


「星は、大丈夫だから…。俺が何とかするから、氷雨君がいたら駄目なんだ。帰ってくれ」


「わかった。」


「ごめん」


「ううん、さよなら」


氷雨は、振り返って歩きだした。


「ワァーアー」


僕は、氷雨を求める。


「駄目だ。」


月が、力一杯僕を引っ張る。


「何で、何で、何で」


「化け物をコントロールしろよ。俺だって、ギリギリなんだよ。」


「何で、氷雨と氷雨と」


「死なさないから」


僕の目から、涙が(こぼ)れ落ちていく。


「氷雨とはな」


まで、言った瞬間。


バシン、月が僕の頬を殴った。


「花丘台にいくつもりだったか。そっから、二人で逝くつもりだったか?星、俺の目をちゃんと見ろよ。化け物に喰われてもいいけど、死なせないから…。俺は、星を楽にさせてやらないから」


「う、うわぁー」


僕は、月にしがみついて泣いた。


苦しくて、悲しくて、息ができない。


胸を押さえながら、崩れ落ちる。



「あー、あー、あー」


うまくお別れが出来なかった。


「ごめん、星。俺もそうとうギリギリだから、どれだけ星を化け物から守れるかわからない。それでも、傍にいるから」


そう言って、背中を擦ってくれる。


(あふ)れて、(あふ)れて、止まらない涙。


苦しくて、悲しくて、息ができない心


喰われてしまった、思考まで全部


僕は、どうなるの?


あの時みたいな怖さがないのが、よけいに不気味で仕方ない。


少しだけできた思考の隙間で、僕は氷雨と逝くつもりだった自分に恐怖がわいて、身体中がガタガタと震え出して止められなかった。




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