星と氷雨
月が、トイレに行ってから月のお兄さんが行くのが見えた。
大丈夫かな?
「心配してる?」
華君が、気づいて僕に話しかける。
「うん、大丈夫かな」
「大丈夫だよ。化け物は、穏やかだったから…。ただ、少しチャージしたくなったんじゃない?」
「チャージ?」
「ハグしたりしてるんじゃない?」
「キスとか?」
「頬ぐらいならあるだろうけど、ないと思うよ。」
「それなら、いいや。」
「星君の彼も、星君がトイレに行ったら動き出すよ。」
そう言って華君が笑った。
「ちょっと、座っていい?」
「うん」
「足パンパンだ。」
「ギター弾くの?」
「うん、もうすぐしたら。」
「楽しみ。」
「月君と仲良くやれてるんだね」
「うん」
「アレからも、時々そうなれてるんだね。」
僕は、頬が赤くなるのを感じる。
「すごいよね。2つの愛と共存してるなんて2人とも」
「たまたまだよ。月が居たからだよ。」
「そうだと思うよ。そうじゃなかったら、どっちも化け物に食べられてたから」
「やっぱり、そうなんだね。」
「うん。うまくいったのは二人だからだよ。」
華君の言葉になんだかすごく嬉しかった。
「華、サボんな」
「じゃあ、行くね。バイバイ」
華君は、晴海君に言われて行ってしまった。
しかし、遅い。
氷雨と奥さんのラブラブを見せつけられてんのも、そろそろキツイ。
とりあえず、トイレ行こうかな
僕も…。
そう思ったら、もどってきた。
「ごめん、遅くなった。」
「華君が、相手してくれてたから」
しばらく見てたら、月のお兄さんも戻ってきた。
「なんか、あった?」
「うん、後でいう。」
「じゃあ、僕もトイレ行ってくるね」
「うん。」
涙がもう溢れてきそうだったからトイレに行った。
トイレにはいると、大粒の涙が頬を流れた。
「ハンカチ、ハンカチ」
えっ??!??
「そんな顔しちゃダメ」
抱き締められた。
「氷雨?」
「ごめん。」
僕から離れた。
「目にゴミはいっただけだから」
「嘘」
そう言って、また抱き締められた。
「離して、人来るから」
そう言ったら、氷雨は個室トイレに僕を連れていった。
「まずいよね?」
「なにが?」
「この状況」
「全然」
氷雨は、抱き締める腕を緩めた。
トイレに座った。
「どうしたの?」
「久々に二人で話したくて」
狭い個室トイレにいると、ドキドキがひどい。
「月さんと幸せそうでよかった。あの日、受け入れてもらえたんだね。」
僕は、何も言えなかった。
「僕もしてるから、言えないよ」
そう言って、立ち上がって僕の頬の涙を拭う。
「会うと触れたくなるんだ。やっぱり」
「チャージってやつ?」
「そうだね。覚えていても、また触れたいと思う。僕はね、妻を愛してないと言い切れるんだよ。」
「氷雨…。」
「親を幸せにする為だったから、僕は妻を愛する事はないよ。ただ、一緒にいるのは子供の為だから…。」
そう言って、僕の唇を指でなぞる。
「星が、僕に傷ついてるのを見たら嬉しくなった。星の一番は、やっぱり僕なんだね。」
キラキラした笑顔に、僕は頷いてしまった。
「よかった。それを知れただけでよかった。」
氷雨は、僕を抱き締めた。
あれから、連絡がとれずにいたから不安だったのだと思った。
「星を愛してるよ。」
「僕もだよ。」
そう言って、氷雨は抱き締める腕を緩めた。
僕のおでこにおでこをくっつける。
「星の中に、僕がちゃんといるのを確かめられてよかった。これからは、連絡するから。怖くて出来なかった。月さんに会うと星は、向こうにいってしまう気がしてたから…。」
「大丈夫だよ。」
僕の言葉に、氷雨は頬にチュッとしてきた。
何度も、何度もしてくる。
「愛してるよ」って笑った。
僕も氷雨の頬にキスを何度もしてしまった。
それが終わると、ずっと抱き締められた。
目を閉じるだけで、氷雨との日々が浮かんできた。
「もう、大丈夫」
氷雨が、僕から離れた。
「先に戻ってて」
そう言われて、個室トイレから出た。
僕は、月の元に戻った。




