竜のお世話係28
ルーメロスに乗って海から帰ると降り立ったのは城の広場。
いつも竜騎士たちが訓練のために飛び立つ場所だ。
さすがに、明るい中、一般人の目もあるためリズを家まで送ることはできないので、ひっそりと城へと帰るとなぜか竜騎士やお世話係が全員集まっており拍手で迎え入れられた。
何で知っているのと目を丸くするリズにセドリスは「ルーメロスに鱗が出た時に騎士達には冷やかされたし、今日竜を借りたいって言ったからそりゃわかるよ」
と言われてリズは恥ずかしさで顔を上げられなかった。
でも、感動して泣いているマーシャルや心から喜んでくれている仕事仲間たちにありがとうと伝えるとウォルフも感動して泣きながら抱き着いてきた。
複雑な顔をした父親に、リズは照れながらも首にかけたネックレスを見せると頭をこれでもかと撫でられた。
「よっし、じゃぁみんな記念撮影の準備はできてるか?」
式典に着ていく隊服に着替え、これでもかというほどの勲章をつけた団長がにんまりと笑う。
「できてまーす」
リズとセドリスを抜かした全員が手を上げて答えている。
よく見ると、皆式典用の服に着替えていた。
ウォルフなど薄く化粧をしているではないか。
「なに?どういうこと?」
驚くリズとセドリスに、団長はにんまりと笑う。
「お前らがくれた、俺の結婚記念のプレゼント”記念写真を撮れる券”をここに発動する。
せっかくの息子の記念日だ。みんなで写真を撮ろうってな」
「今日じゃなくても・・・」
呟くセドリスにお構いなしに竜騎士の先輩たちが彼の背を押して連れて行ってた。
「え?私、普段着なんだけど・・・」
「いいじゃない、特別感があって。さぁさぁ、並んで並んで」
いつもより化粧を濃い目にしたマーシャルがニヤニヤ笑いながらリズとセドリスを押してすでに並べてあった椅子に座らせる。
「今撮るの?」
「今じゃないと面白くないじゃない。今日だから意味があるのよ」
そう言うウォルフ。
「私だけ準備していないんだけど」
「それがいいんじゃないー。この瞬間の記念写真。思い出よ」
ウォルフもそう言いながら、リズの髪の毛を整えてくれる。
「確かに明日じゃつまらないわよねぇ。今さっき、プロポーズが成功したこの瞬間の写真だから面白いのよね」
にっこりと妖美に笑うエレノアもいつもよりお化粧が濃いようだ。
「はーい、並んでくださいー」
あれよあれよという間に、竜騎士たちと、お世話係が並んでいる。
写真屋さんはすでに来ており、カメラの調整をしていた。
「もちろん俺はリズの隣だ。父親なんだから」
大切な娘を奪われたとぶつぶつと呟きながらセドリスを睨んだ後、リズの隣に座るカジミール。
そわそわしている団長に、セドリスはため息を吐いて声をかけた。
「父親みたいなもんだと思ってるから俺の隣に座れば?団長」
「ちちおや・・・そう思ってくれるのか?」
今にも泣きだしそうな雰囲気の団長を面倒な顔をしながらもセドリスは頷いた。
「まぁ、そうだね。一応いろいろ世話になったし。これからも世話になるかもしれないし」
セドリスの言葉に感極まって泣き出した団長を座らせ、皆も定位置へと着く。
「これ私たちから」
ウォフルがどこから持ってきたのか小さな花束を差し出した。
ピンクと青色の可愛らしいミニブーケにリズは微笑む。
「ありがとう」
「ルーメロスを今日借りるのに団長に許可取っただけなのに、こんな大事になるんて、俺はこんなことは望んでなかったんだけど。・・・・そっとしてほしかった」
ぼそりと呟いたセドリスに、竜騎士たちが後ろでどっと笑った。
「こんな面白い話・・・じゃなかった、素敵な話を俺たちが逃すはずないじゃないか」
「それも、最年少で入ってきたお世話係と、竜騎士との結婚なんて俺たちだって親みたいなもんだよなぁ」
「そうだそうだ。お前たちの喧嘩だって見てきたし、どんだけお前たちの世話したと思ってんだよ」
「無愛想な少年の恋を見守った俺たちはお兄さんだよなぁ」
「そうだそうだ。団長がお父さんなら俺たちはお兄さんだな」
先輩たちの声にセドリスは一瞬眉をひそめて小さくため息を吐いた。
「それはどうも、お兄さん達」
「かわいいねぇ、セドリスは」
先輩たちがまた笑う。
「はーい。では撮りますよ!」
カメラマンが手を挙げて合図を送ってきたため皆、にっこりと笑みを作る。
「ほら、団長笑って笑って」
「感動して無理だ」
未だ男泣きしている団長は腕で涙を拭きながら叫んだ。
「俺の隊はいいやつばかりで素晴らしいし、息子と呼べるやつもできて俺は幸せだ」
そう叫んでまた男泣きをしている。
「もういいから撮りましょう写真」
セドリスが呆れて言うと、皆一斉に笑った。
団長以外が大笑いしている写真はとても良く撮れておりいつまでも団長室に飾られることになる。
そしてまた伝説が生まれた。
竜騎士とそのお世話係は結ばれると。




