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罪悪感、でもこれは違う

~罪悪感、でもこれは違う~

 さて、天使ちゃんの望みともあればどうにか叶えたくはある。


 だが、俺もあの生徒会長岡島聖とはあまり接点はない。いや、接点がある人物は目の前にいるのだが、お願いをしていいものかわからない。


「なあ、ちょっと頼みがあるんだが」


 とりあえず、赤川にそう切り出した。


「どうしたの?」

 さっきすでに図書館でどうしていいのかわからなくなったのだ。


 だからだろう。俺が切り出したので何かこの解決を思いついたのだと。


 だが、違うのだ。そんな目で見ないでくれ。


 だって、これから俺が言うことは解決じゃなく、ただ天使ちゃんの望みなのだから。もう、この赤川の目を見ていたら胸が痛む。


(恋ね、その痛みの名前は恋って言うのよ)


 いや、普通に罪悪感でしょ。


「あのな。実は天使ちゃんからお願いを言われたんだ。ほら、もし天使ちゃんが菅田ユリさんだったら、菅田さんが事故にあったのって俺のせいだろう。


 んで、俺にできることがあったら何でも言ってくれっていったんだ。そうしたら」


 俺が勇気を振り絞って話していたら赤川はなんだかもじもじしながら俺を見ている。赤川が言う。


「いいよ。覚悟できているから」


 ん?覚悟ってなんだ?まあ、確かにあの生徒会長の岡島聖を赤川は苦手としている。その覚悟か。


(違うでしょ。あっきーに抱かれる覚悟だよ)


 どうしてそういう発想になるかな。それ、ただの天使ちゃんの願望でしょう。もう、びっくりだよ。


「ああ、実は天使ちゃんから生徒会長の岡島聖を紹介してほしいって言われているんだ。赤川頼めるか?」


 そう言ったらいきなり赤川が顔を真っ赤にしてこう言ってきた。


「あっきーはやっぱりあんなのがタイプなの?」


「はい?俺はタイプじゃないぞ。できれば近づきたくない人種だ。でも天使ちゃんの望みなんだ。


 ほら、赤川はよく生徒会長に呼び出されているじゃないか。そこでちょっと俺を紹介してくれたらいいんだけど、ダメかな?」


「ダメじゃなく、イヤだよ。なんで、あっきーをなんであんな奴に紹介しないといけないんだよ」


 まあ、かたくなに嫌がっている赤川に無理は言えないな。


 というか、ほっぺたを膨らませている。こういうしぐさがまた女子っぽいんだよ。でも仕方がないか。


「じゃあ、わかった。俺が直接生徒会長に話しかけてみる。まあ、天使ちゃんが何を考えているのかわからないけれど、今回のことを相談してみるか。確か生徒会長は色んな生徒の相談を受けつける窓口を設置していたよな。生徒お悩み相談室って。あれに投稿でもしてみるか」


「もっとだめ。それだったら僕がつれていくよ」


「ああ、なんかわからないけれど、無理言ってすまんな。いつだといい?」


「じゃあ、放課後すぐかな。あんまり乗り気じゃないけれどあっきー一人で行かせられないもの」


「サンキュー」


(はあ、なんであっきーはこんなに鈍感なんだろう。もう、恋する乙女の気持ちをまったくわかってない)


 はい?なんでここでむつきんが出てくるんだ。実際アイツの気持ちはまったくわからないけれど。


(バカ。知らない。でも、甘酸っぱい展開ご馳走様とだけ言っておくわ)


 まあ、それで納得してくれるのならいいが。


(納得してないわよ。もう、もっと私に活力を。燃料が欲しいのよ。こう手に入らないものを追い求めるきゅんとくる話しとかはないの?)


 意味がわからない。というか、何に情熱を燃やしているのか教えて欲しいよ。


 いや、教わらない方がいいのかもしれない。というか、天使ちゃんは一体何者なんだろう。


 本当にこの菅田ユリが天使ちゃんなんだろうか。というか、新聞からこれ以上の個人情報が得られなかったのだから仕方がない。


 んでも、どうして生徒会長と話しをしてみたいと思ったんだろう。


(そりゃ、あんなかっこをしている人の話しって聞いてみたいじゃない。それにあっきー結構タイプみたいだから新たな恋が芽生えるかもしれないよ)


 芽生えませんから。ってか、なんで出会ってすぐに恋に落ちなきゃいけないのよ。


(投票した癖に。私あっきーとリンクしているからわかるのよ。深層心理では仲良くなりたいって思っているはず。


 本当この高校で誰かに刺されても知らないから。男子校の二大アイドルと仲良くなりたいだなんて)


 いいがかりだよ。それに俺は赤川とは友達なんだ。


(寝顔を見て興奮していた癖に)


 そう言われて俺の頭に赤川の寝顔が思い出される。


 なんだこれ、寝言で何か言っているぞ。ってか、騙されないからな。これ天使ちゃんの妄想を俺に押し付けているだけでしょう。もう。


「はい、次関原」


 そうだ。いつの間にか教室に戻り、授業中だったのだ。というか、当てられてしまった。まったく授業を聞いていない。


 教科書を手に取る。問題は解けるはずだが、その問題がどれかがわからない。これは困ったことだ。


「すみません、考え事していたので聞いていませんでした」


 ここは素直に言うのが一番だろう。そう思っていた。


 そして、普通に怒られた。やっぱり学生は勉強するのが一番だ。仕方がない。放課後までちゃんと勉強しよう。


(ちゃんと勉強しなきゃだよ)


 天使ちゃん。そりゃないよ。振り回されているのは俺だよ。もう。



 そうして放課後。


(ようやく赤川きゅんと放課後デートだね)


 いや、違うから。赤川に天使ちゃんたっての希望で生徒会長岡島聖を紹介してもらうんでしょう。


 ほら、なんか乗り気じゃないちょっとくらい顔をした赤川がこっちに来たじゃない。


「じゃあ、あっきー行こうか。とりあえず、先に行っておくよ。生徒会長の岡島先輩はちょっとそう、変わった人だから。言動とか、行動に意味はないからね」


 まあ、見た目から女子高生の恰好をしている人だから変わった人なんだとは思うけれど、念を押すことなのだろうか。


「ああ、わかったよ」


(じゃあ、手をつないで移動しましょうか)


 なぜにそうなる。そんなことしたら明日から噂になるし悪質ないじめに合うよ。


 とりあえず、頭の中で考えてみる。天使ちゃんのことをいきなり話しても信じてもらえるとは思えない。


 そうなると論点は一つだ。俺のせいで怪我をした菅田ユリを探すにはどうしたらいいのかということだ。


 これだと知恵を借りに来たということで受け入れてくれそうだ。これで行こう。そう考えながら廊下を歩く。


 やはり赤川はこの学校のアイドルということもあり、みんなが見て行く。まあ、適度な距離を取ってみんな見ている。


 時折赤川が誰かに手を振っている。まあ、人気だから仕方がない。そう思うことにしている。


 そして、重厚に感じる扉の前に来た。生徒会室と上に書かれてある。木で出来たその立札が重々しく感じる。


「じゃあ、行くよ」


 そう言って赤川が扉をノックする。


「入り給え」


「失礼します」


 そう言って赤川は扉を押して開けた。そういえば生徒会室に入ったことがなかった。「失礼します」と言って中に入るとまずカーペットが引かれてあることにびっくりした。


 次に花が活けられてあるのだ。しかも真正面に。そう、入って正面にはこちらに向かっている机がある。


 そこには生徒会長の岡島聖がいる。その横にいるのは副会長の誰だったか名前は思い出せない男性だ。


 確かこの人は二年生だったはず。テストの成績は上位。ちなみに、一位は俺なんだよね。


(こっそり自慢しないで。ってか、あの副会長もなかなかのイケメンよね。一重で目つきは悪いけれど理知的な感じがする)


 ああ、あだ名は覚えている。アンドロイドだ。疲れ知らずに仕事をするあらそうつけられている。


 あの破天荒な生徒会長がきちんとイベントを回せているのは副会長のサポートあってのことだ。


 後は書記、会計、庶務といる。庶務の一年生は確かアイドル候補と言われているやつだと聞いたことがある。


 確かにきれいな顔立ちをしている。噂通りだと思った。


(何の噂?)


 生徒会長の岡島聖は端正な顔立ちの人間をまわりに置きたがると。そして、熱心に赤川を勧誘しているのだ。


「おや、赤川くんじゃないか。君から自主的にこの生徒会室に来るという事は今年の生徒会長選挙に立候補する意思が決まったのでいいのかな?」


 岡嶋は作業の手を止めてこちらに近づいてくる。ちなみに、コの字に机が配置されていて、俺と赤川はその真ん中にいる。生徒会メンバーに囲まれて圧迫感がある。


「いえ、立候補するつもりはありません。今日は僕の友人が相談に来たいということで連れてきました。紹介します」


 赤川がそう言ってきたので俺は自己紹介をしようとした。だが、岡島が俺の顔を見てこう言ってきた。


「君は関原あきらくんだね。噂は聞いているよ。君は赤川くんの友達であり、ここ最近は少し有名な女子高生と付き合いだしたのだね。


 数件だが生徒からクレームが入っている。あの子が原因でトラウマを抱えている生徒もいるからね。それで、君は何を僕に相談したいのかな?


 全生徒の相談を受けるのがこの生徒会長の役目さ。さあ、何でも聞くがいいよ」


 そう言って岡島は俺に近づき頬を撫でてくる。とっさに後ろに下がる。扉が背中にあたる。だが、思った。


 先ほど俺はこの扉を押して入ったのだ。俺に逃げ場はない。岡島の顔が近づいてくる。


(見た目女子なのに攻めなのね。受けなあっきーもいいわ。そのままヤラれちゃって)


 おい。人がピンチなのに天使ちゃん、そりゃないよ。でも、助かったよ。俺はまっすぐに岡島を見てこう言った。


「俺が聞きたいのは、俺が事故に合った時に巻き添えになった菅田ユリという子がいるのを知った。


 この子に詫びたいのだけれどどこにいる子なのかわからない。調べるにはどうしたらいい?知恵を貸してくれ」


 俺はそう言って頭を下げた。近づいていたはずの岡島がそっと距離を開ける。俺は顔を上げた。目の前で満面の笑みを浮かべている岡島がいる。


「関原くん、合格だ。僕のプレッシャーに打ち勝ち普通に交渉をしてきた。いいだろう。褒美をあげようではないか」


 うん?意味がわからん。と思っていたらいきなり岡島が抱きついてきた。


「ちょっと岡島先輩。何をしているんですか!」


 赤川が俺と岡島の間に入ってくる。俺は一瞬頭の中が真っ白になった。周りを見る。


 副会長のアンドロイドは何もなかったかのように仕事をしているが、庶務のアイドル候補、名前は知らない、はなぜか携帯をこちらに向けている。撮られたのか。


(うん、こっそり見てきたけれど動画だったね。あの動画私も欲しいわ)


 手に入れてこい。そして地球上から抹消する。


(もったいない。いい表情していたのに。ぐへへ)


 なんか得体の知れない音が聞こえたがスルーが一番だ。


「なんだ。この僕の抱擁が褒美にならないとでもいうのかい?関原くんは健全な男子じゃないのかい。それとももっとすごいことを求めているというのかい?」


 なんでそこで蠱惑的な表情で俺を見るんですか?


(はい、求めています。いいからそのまま押し倒されちゃって)


 ってか、天使ちゃんはすごいハイテンションですね。でも、おかげで冷静になれた。ありがとうね。


「そんなものはどうでもいいです。俺は知恵を借りに来たのです。何か知恵をもらえないのなら退散します。そして、もうここには来ません」


 そう言って俺は振り返ろうとした。だが、肩をつかまれた。


「帰るにはまだ早いよ。関原くん。そんな簡単な質問でいいならすぐに答えようじゃないか。


 まず、関原くんが事故にあったことは新聞に取り上げられている。そこにその菅田ユリさんの名前もある。


 ということは、その記事を書いた記者は菅田ユリという人物のことを知っているということだ。また、普通に考えればその情報の出所は警察だろう。


 君も事故の関係者だ。となれば、君も警察に聞きに行くことだってできるだろう。これは想像だが、関原くんは事情徴収のような形で警察の人と話しをしたのではないのかい?


 それならばその警察官に聞いてみるのも一つだと思う。さて、これで答えになったかな?僕はこれでも忙しいのだよ。


 だから、君からも説得をしてくれ給え。これは等価交換だよ。この赤川くんがもうすぐ始まる生徒会選挙に出るように。


 それか、関原くん。君も出てもいいんだよ。副会長はおそらく御堂くんのままがいいだろうけれど、書記や会計などどうかな?


 二人とも私と同じ三年生だ。今年はもう出られない。庶務の桜井くんが繰り上げでもいいのだけれど、赤川くんの横には関原くんはいたいのではないのか?


 それとも他の誰かが赤川くんをサポートするのを見ていたのだろうか」


(絶対反対。赤川きゅんの横はあっきーが一番だからね。お似合いのカップルなんだから)


 勝手に付き合っている設定にしない。でも、これが赤川が辟易していたことか。


「立候補するかしないかは赤川の自由だ。でも、もし赤川が何かの事情で立候補しないといけなくなるならば、俺が全力でサポートしてやる。俺ら友達だからな」


(そこは恋人でしょ。間違っているよ)


 間違ってないから。ほら見ろ。赤川だって喜んでいるじゃないか。赤川が言う。


「岡島先輩。僕は立候補するつもりはありません。けれど、誰かが立候補して困るのなら僕が掲げるのは生徒会長もみんなと同じ制服を着るということ追加します」


(あっきーも実は見たいんじゃないの?赤川きゅんのあの制服姿)


 そう言いながら俺の頭の中にある想像が広がった。そう今岡島が着ている女子高生ヴァージョンの制服を着せた赤川だ。


 いや、天使ちゃんの想像だ。俺に押し付けているだけだ。岡島が言う。


「赤川くんは確認をしたことがあるのかい?赤川くんがこの制服を着た姿を誰が見たがっているのかを。ひょっとしたらこの関原くんも見たがっているかもしれないよ」


 そう言われて赤川が俺を見る。


「え?だから僕をサポートするって言ったの?」


「誤解だ。違う。俺はそんなこと思ってない。俺は今のままの赤川がいい」


(そのまま好きだーって叫ぶのよ)


 叫ばないからね。


「素直じゃないね。関原くんが求めていることはわかっているのだよ。嘘はよくないな」


 そう言って岡島が俺にすり寄ってくる。このままここに居てはさらにまずくなる。俺は赤川の手を取って「用件は終わりました。失礼します」と言って扉を開けて出て行った。


「ありがとう。あっきー」


 俺は赤川からそう言われて生徒会室を出たのにまだ手をつかんだままだったので手を離した。


(せっかく手をつないだのに。そのまま恋人握りに移行すれば完璧だったよ。王子様みたいで)


 王子様じゃないからね。王子様って白馬に乗ったやつでしょ。俺の中では暴れん坊将軍と似たようなものだからね。


(王子様の夢を壊さないで。まあ、私の希望は王子様の横にはお姫様より男性の付き人なんだけれどね。上司部下とかのシチュエーションとか萌えるでしょ)


 萌えないし。


「いや、毎日あんなのとやりあっていたのか。辛かったら今度から言ってくれ。俺も同席するからさ」


(どうしたの?)


 いや、少しでも天使ちゃんの罪滅ぼしになればと思ってさ。


「ありがとう」(ありがとう)


 すっごいハモった。でも、ちょっとうれしかった。とりあえず、すぐに出来る相手として俺は入院中に話しをした刑事を思い出した。


 そういえば、名刺をもらっていたなと思った。名刺を取り出す。


 狭山夏彦。少し年齢のいった男性。物腰はやわらかそうだけれどつかみどころがない人だ。


(この人もなかなか良かったよね。優しい顔だけれど、質問はするどい。こういう人が攻めだね。


 そして、あっきーは受け。あっきーって基本受けだと思うんだ。赤川きゅんがせめてくれたらいいのに。まあ、赤川きゅんは完璧な受けだから仕方ないのだけれど)


 俺はとりあえず天使ちゃんのつぶやきはスルーした。そして、この狭山夏彦さんの携帯に連絡をしたのだ。探してやるぞ。天使ちゃん。けれど、問題はさらに複雑になったのだ。




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