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調べることは難しい

~調べることは難しい~


 プロトコル・ファンタジー。


 俺ははじめ普通によくあるRPGものみたいな魔王が居て勇者が倒す物語だと思っていた。


 確かにある意味間違っていない。けれど、何かがおかしいんだ。まず、タイトルにあるプロトコルだ。


 これって通信とかでよく聞く単語だろう。確か意味って規程とか規約だったような気がする。よく知らないけれど。


 このプロトコル・ファンタジーでは約束事がすごく大事なんだ。誰とどういう約束をするのか。守ると言ったら絶対なのだ。


 その約束を反故することは社会的な死を与えられる。そう、約束をやぶったとして顔に入れ墨を入れられる。


 そんな中主人公は横に連れている狐と契約をしている。主人公の能力は低い。


 だが、他人に残る自分の記憶を消し去ることで能力を得る。彼が能力を使い誰かを助けても、助けられた人は主人公のことを覚えていない。


 そんな主人公に何度も「はじめまして」を繰り返して旅のともをする従者ライがいる。そういう話しだ。


(絶対ライは主人公のリュウガに恋をしているわ。そうじゃなきゃついて行かないもの)


 ってか、天使ちゃん。ライもリュウガも男ですよ。しかもライはまだ子供。


 不安だし、周りにしっている大人がいないからリュウガについて行くことしかできないからね。


 そう、このプロトコル・ファンタジーを見ていて思ったことはこのライがかなりかわいそうなのだ。


 毎回ライがトラブルの種を拾ってきてリュウガがそれを助ける。だが、村人はリュウガに紐づく記憶としてライの記憶もなくしている。どこかの孤児としか思ってもらえないのだ。


(あんなに毎回つらい思いをするリュウガもライを助けるの。絶対相思相愛よね。ただ、ライはリュウガのことを毎回忘れる。だからリュウガの切ない表情が胸に突き刺さるのよ)


 まあ、恋なのかはわからないが、リュウガにとってライの存在が特別なのはわかる。どれだけ記憶を失っても「僕、あの人についていきます」と言ってついて行くんだからな。


(そうなのよ。そして、リュウガがどうして旅をしているのか、その敵役もわかってきた。


 リュウガが契約をせざるを得なかったのは故郷が襲われたため。


 そして、その故郷の宝を今も持っている相手はそれを追いかけているの。


 このちょっとしか出てこない敵役もまたかっこいいの。ザンガって言うんだけれど、敵なのにたまにリュウガを助けたりするの。あれって絶対ツンデレだよね)


 まあ、この辺りで聞くのを止めないとエンドレスになっちまう。というか、相手をしなければいいんだ。


「いや、このアニメいいでしょ。この切ない感じがまた」


 ああ、そうだ。赤川もいたんだ。


(だよね。わかっているわ。赤川きゅん。って、ちゃんと私の思いを伝えてよ)


 もう、カオスだ。とりあえず諦める。色んなことを諦めて思ったことは、明日は事故の状況を調べる。それだけだ。俺がこうちょっと距離を取っていたからか赤川がこう言ってきた。


「新聞を調べるくらいなら学校の図書館でもできるよ。明日の昼休み一緒に調べようよ」


 なんだって。盲点だった。学校の図書館なんて行くことあまりないからな。


(これで、できなかった図書館デートできるね。あっきー的にはこれで恋愛フラグが立ったってことでいんだよね)


 いや、フラグは立ちませんから。ってか、アニメだったり赤川だったり天使ちゃんは忙しいよ。


「じゃあ、明日昼休みな」


 そうだ。明日もあの連絡ラッシュがあるのかと思い携帯を見た。すでに携帯はすごいことになっている。


 というか、少し触ったら電源が落ちた。電源が落ちるくらいの連絡ってちょっと考えようよ。


(やっぱり間違いでしたって早く別れることね。そこにあっきーの幸せはありません)


 もう、言いきらないでよ。ってか、自分でもどうしていいかわからないんだから。


 悩んでいやって、人は眠るし、朝もやってくる。昨日と違って今日は、晴天。気持ちいい朝。そのはずなんだ。


 まあ、ちょっとの違いと言えば昨日アニメを全部見させられたおかげで赤川が泊まっていったのだ。


(なんで押し倒さないの。ヘタれなの。寝顔見てドキっとしていたのに)


 そこ、勝手にねつ造しない。いや、確かに赤川の寝顔はマジで危ない。暗闇で見たら間違いを起こしそうになる。だが、それも何度か経験をすれば問題ない。


(何度も経験したの?どんな経験。教えてよ)


 ちょっと天使ちゃん。朝からテンションおかしくないですか?


 まあ、俺は今日赤川の分の弁当も作らないといけないからいつもより早起きなんだ。料理ってさ、作る以上おいしく食べてほしいじゃない。だから今日はいつもより早く起きたんだ。


(手料理で胃袋をつかむのね。お嫁さん向きだよね。あっきーが受けだと赤川きゅんが攻め?それもそれでありかも。ぐふふ)


 まあ、何か変な効果音が聞こえたけど聞こえなかったふりをして下に降りるか。いつもより早いからか父親が居た。というかもう玄関で出かけようとしている。


「あ、仕事早いね」


「ああ、行ってくる。気を付けるんだぞ」


 それだけの会話だ。父親と会話をした記憶がいつなのかわからない。顔だけは見ているからわかる。子供のころはその顔すら覚えていなかったのだ。


 でも、仕方がない。父親は小さいながら会社を経営している。経営者だ。


(よかった。ブラック企業に勤めているのかと思ったよ)


 気にするとこそこ?びっくりだよ。ちなみに母親もその会社の手伝い。だから二人して帰りは遅い。家の事は俺がやる。


 そう決めたのは妹が遠足で持って行ったお弁当を周りから見て凹んだことが原因だ。


 コンビニで買ったサンドイッチだったんだ。凹んだ妹を見ていて決めたんだ。凹まないようなお弁当を作ってやるって。


 まあ、晩御飯の流用なんだけれどな。というか晩御飯の一品を翌日の弁当に使うことを考えて料理をする。


 それもまた楽しいんだ。だが、今日はもうちょっとだけ手間をかける。そう赤川の分もあるからだ。


(ふ~ん、やっぱり気にしているじゃん)


 いや、これは天使ちゃんが言うのとはちょっと違うからね。


 といいながら料理を作る。玉子焼き、唐揚げ、冷凍食品を使いながら彩りを考える。プチトマトは必須だ。赤色はプチトマトか赤パプリカを使うことが多い。


(ってか、パプリカって使うの?)


 肉厚があっていいんだぞ。韓国産が多いけれど、国産もあるんだ。


(そうなんだ。オランダのイメージが強いんだけれど韓国産なんだ)


 そうだよ。大体日本に流通している7割以上は韓国産だね。国産は1割以下。ちなみに、今日はパプリカは使わないから。今度パプリカを使った炒め物を作るよ。


(まあ、私食べられないんだけれどね。でも、味はあっきーの味覚が伝わるからわかるけれどね)

 そうなんだ。そこもリンクしているんだ。


「あ、おはよう。今日早いね」


 そう言って、妹のちあきが降りてきた。


「ああ、昨日赤川が泊まったから、赤川の分もつくっている」


「ちょっと、そういうの早く行ってよ。部屋でご飯食べる」


 赤川が来るといつもこうなんだよな。違うやつだとこうでもないんだけれど。


(そうなの?)


 ああ、中学時代の友達なんかだと、全然気にしないのに、赤川だけはダメみたいなんだ。あいつ赤川のこと好きなのかな?


(あら、意外なとこに伏兵が。あっきーうかうかしていたら赤川きゅん取られちゃうよ)


 別に妹と二人で三角関係するつもりないからね。


「あ、おはよう。僕のも作ってくれたんだ。ありがとう」


 そうやって降りてきた赤川はすでに制服を着ている。だが、なんでか色っぽいんだ。


(女の子より女の子っぽいよね)


 そうなんだよ。だから困る。勘違いしてしまいそうになる。しないけどね。


「ああ、弁当もつくったから。後で一緒に食べよう。今日は昼休み図書館だしな」


「ありがとう」


(この甘酸っぱいのを求めていたのよ。青春って感じじゃない)


 マテ、甘酸っぱいって何。


「もうそろそろ、学校に行ったほうがいいんじゃない?」


 赤川はそう言ってきた。時計を見る。まだ7時35分だ。少し早い。というか、この時間は妹が出る時間だ。


「じゃあ、お兄ちゃん。私行くからね」


「一緒に行こうか。ちあきちゃん」


 そう言って赤川は妹のちあきに声をかける。ちあきは顔を赤らめて「大丈夫です」とだけ言って出て行った。やっぱり、ちあきは赤川の事が好きなのかもしれない。


(ライバル出現。その状況を見てあっきーは動くのであった)


 動かないから。ってか、学校には行くけれどね。ちょっと早いけれどまあ、駅で待てばいいか。


「じゃあ、行こうか。早めに学校に行こうよ」


 だから赤川。お願いだからそこで満面の笑みで俺を見るなよ。ドキッとするだろう。え?したのか。


(うん、してたね。完璧に)


 俺は頭を振ってとりあえず無心で駅に向かった。そう、ちゃんと今家を出たよってLineをむつきんに送った。


 速攻で返事が来る。一体どういう生活をしていたらこうなるんだ。歩きながらでも考えていたことは事故の事だ。


 と言っても自分自身記憶がほとんどない。小学生のあの子。名前なんだったかな。


(もう、忘れたの。高梨こづえちゃんよ)


 そうそう、こづえちゃんだ。


 あの子を助けるのに必死だったんだ。後、見ていたのはむつきんくらいだ。何も覚えていない。


 いや、確か俺は自分に向かってくる自動車を見ていたはずだ。それを見てこづえちゃんを押したんだ。何色の車だったのか。


 思い出せ。


 俺は目を閉じる。ざらついたアスファルト。起き上がろうとして目の前に来た車。


 ああ、ダメだと思ったのは白いバンタイプだったからだ。でかいと思った。


 それに、もう一つ。何かの作業をしているのか結構傷が多かった。そうだ。あんな感じの車だから止まってくれると思えなかったんだ。


 だが、俺の意識の中に天使ちゃんのような女の子はいない。ということは俺の事故と天使ちゃんは関係ないのだろうか。


 でも、普通何かがあるから俺の中に入ってきたのだと思う。一体あの事故に何があったというんだ。


「おはよう。あきらん」


 俺は顔を上げた。そこにはむつきんが立っていた。そして、そっと赤川は俺と距離をあけて歩いていく。


この辺りの対応は流石だと思った。


「ねえ、来ちゃった。最寄駅昨日知ったからね。うれしい?うれしいよね。うれしいって言ってよ」


 だから、最後はなぜに低くなる。


「うん、うれしいよ。朝からむつきんに会えるんだから」


 落ち着いているむつきんはかわいい。外見はかなりかわいいのだ。黒い前髪、元気いっぱいの笑顔。俺が好きになったむつきんだ。


 ただ、暴走することがある。その暴走が怖い。


 俺って猛獣使いになりたんだっけとか思った。


(だから、赤川きゅんにすればいいのに)


 いや、その赤川は空気を読んで先に行っているよ。


 そう、俺は今日からむつきんと一緒に登下校することが決まったのだ。まあ、いい。お昼休みは図書館で調べ物だ。


(うん、図書館デートね)


 勝手に俺の記憶に変な上書きをしないの。


 まあ、そこで何かが見つかればと思っていたのだ。だが、見つかったけれど、どうしようもないことを知ったのだ。そう、あっさりと分かったのだ。


 多分、これだろうって。


 簡単に言うとこういう事だ。


 俺は白いバンタイプの車に跳ねられた。その車はその後も走り出し、他にも巻き添えを受けた人物がいる。


 女子高生。


 むつきんと同じ学校の生徒だ。


 名前は菅田ユリ。


 その子は俺と違って重傷だということだ。


(私も事故にあっていたということなのかな?)


 どうなんだ。菅田ユリって言われて何か感じることはないのか?


 思い出したことがあるとか。自分の名前だったとしたら。


(ごめん。何もひっかからない。でも、私がこの菅田ユリだったらわかりやすいのかも)


「じゃあ、この菅田ユリって子がそのあっきーの頭の中の声の人かどうかがわかればいいんだよね。じゃあ、菅田ユリについて調べよう」


 そこで気が付いたんだ。この菅田ユリって子はどこに住んでいる子で、何を調べれば天使ちゃんが菅田ユリだって確証が持てるんだ。


 そう、手掛かりと思っていたものは実は手掛かりでもなんでもなかったのだ。ただ、思ったことがある。


 俺の自分勝手な行動でけが人が出ているのだ。探し出して謝りたい。


(そんな。私は気にしてないよ。ってか、私がその菅田ユリかどうかわからないんだけれどね)


 優しくそう言ってくれた天使ちゃんの声だけが唯一の救いだった。


(でも、そうね。もしも罪悪感があるのなら一つお願いしたいことがあるの)


 いいよ。俺に出来ることならなんでも。


(じゃあ、あの生徒会長と仲良くなって)


 なんで。意味がわからないんですけれど。だが、その選択はある意味正しくて、ある意味大きく間違っていたんだ。



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