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お願いがいっぱい

~お願いがいっぱい~


 といっても、調べる前に俺は学生である。全校朝礼のため体育館に行く。この空模様だ。体育館での朝礼だ。


(ねえ、生徒会長ってどんな人?)


 見たら一発でわかる。もう、すべてがおかしいから。そう言って俺は列に並び正面を見る。そこに一人だけスカートを履いた黒髪ロングの女子がいる。そう、一人だけ制服が違うのだ。あれがそう。生徒会長の岡島聖だ。


(え?あの人スカート履いているわよ)


 ああ、そうだ。一人だけ制服を認めさせたんだ。俺らの制服に似ているだろう。俺は自分の服装を見た。


 紺のブレザーに灰色のズボン。赤いネクタイに白いシャツ。そして、目の前にいる生徒会長岡嶋聖は紺のブレザーに灰色のスカート。白いシャツに赤いリボンだ。まるで、この学校が共学だったらあんな感じの制服があってもおかしくない。


(でも、校則とかあるでしょう)


 ああ、あった。だが、生徒会長が校則を変えたんだ。生徒手帳を手に取る。制服の部分に但し書きがついてある。


『ただし、生徒会長は全校生徒過半数の支持を得た場合、所定の制服を着ることを許可する』


(どういうこと?)


 つまり、生徒会選挙の時に自らの公約で「自分が生徒会長になった暁には自分の制服は女子のものを着る」としたんだ。それにつられて馬鹿どもが岡島聖に投票した。


(あ、でも、記憶をさかのぼるとあっきーも岡島さんに投票しているわよ。なんだ、見たかったんだ。だから今食い入るように見ているのね)


 見てないから。ってか、勝手に記憶をねつ造するなって言っているだろう。まあ、確かに投票はしたけれど、食い入るように見ていないわ。


(でも、あの岡島さんってすごいね。体形も男子とは思えないくらい華奢だ)


 ああ、なんでもそこはすっごいトレーニングしているらしい。筋肉がつくと男子に見えるからって。ある意味そこらのアイドルより気合い入っているからな。それとあのぶっ飛び方はおかしい。もうすぐわかる。そう、岡島聖がマイクを持って檀上にあがる。


「は~い、みなさん。今日は週に一回の全校朝礼の日で~す。みんなに会いたかったよ。では、まず校長先生からのお言葉です」


(え?男性なんだよね)


 ああ、そうだ。声高いだろう。あれも相当練習したらしい。


(詳しいのね)


 いや、赤川がずっと誘われているから聞いているんだ。赤川を次期生徒会長にしたいって声が多いんだ。


(あの恰好をさせたいのね。確かに似合いそうね。あっきーも見たいとか?)


 そんなことない。


(嘘ね。でも、嘘がじゃない部分もある。見たいけれど、大勢に見せたくないって変態さんね)


 って、お~い。天使さん。天使さん。勝手に俺の気持ちをねつ造しないでください。


(いいえ、あっきーの深層心理ではそう願っている。私にはわかるは。これは純粋な愛。守りたい愛なのよ)


 違うから。ってか、もういいのか。見たかった生徒会長は。


(ええ、たっぷり。ご馳走様でした。うふふ。あの生徒会長とあっきーの組み合わせもなかなかいいわよね)


 ってか、俺と生徒会長に接点はないぞ。


(なら、今から作るのね。これから運命の出会いをする)


 しないから。


(運命には抗えないのよ。そして、恋する思いは誰にも邪魔されない)


 ってか、天使さん。こんなキャラだっけ?


(当たり前でしょ。はじめっからこんなキャラ全開だったら引かれるじゃない。猫かぶってました。てへ)


 まあ、でも、その声はマジ天使なんだよな。


(でも、ちゃんと私のこと調べてほしいの。何か考えはあるの?)


 そうだな。思いつくとしたらまず図書館で新聞とか雑誌でなんて掲載されているのかを調べることかな。実は俺自分の記事を読むのが怖くて読まなかったんだ。


(なんか推理小説っぽいね。じゃあ、もう一つお願いがあるの。その調査にはぜひとも赤川きゅんを同行させてね)


 はい?そんなに俺って頼りない?


(わかってないわ。放課後に図書館でデート。青春でしょ。そこから恋がはじまるのよ)


 始まらないから。ってか、なんで俺と赤川をくっつけたがる。でも、赤川を巻き込むなら話すしかないな。


(何を?)


 俺と天使ちゃんについてだよ。まあ、赤川なら信じてくれるだろう。俺はそう思っていた。


 昼休み。俺は赤川を誘って屋上にいった。流石に教室で不特定多数に聞かせる話しじゃない。だから二人っきりでゆっくり話せる屋上に誘ったんだ。普通のことだろう。


(ええ、外せないイベントね。屋上で二人っきり。そこで語り合う二人。そこで恋心が芽生える)


 芽生えないから。ってか、なんで事ばっかり言うんだよ。おかげでちょっと変に意識しちゃうでしょ。


 なんだか赤川がもじもじしているように見えてしまう。まるで本当に俺からの告白を待っているみたいじゃないか。


(わかってないな。待っているみたいなのじゃなく、待っているの。押し倒したら付き合えるわよ)


 なんでだよ。俺ら友達だからなね。勝手に友情ぶち壊すようなことばかり言わないの。天使ちゃんでも流石に怒るぞ。


(ごめんなさい)


 って、本気で凹んであやまらないで。なんか俺の胸が痛い。


「すごいね。最近天気予報よく当たる。午後から晴れって言っていたけど、本当に晴れたね」


 確かにずっと曇天だったはず。そういえば天気予報でそんなこと言っていたかもしれない。


「でも、まだ濡れている所が多いね。あの屋根のあるとこだと座れるよ。ちょっと狭いけど」


(そこで体を密着させる二人。お互いの体温を感じながら目と目を見つめ合う)


 おい。なんでそうなる。


(そして、赤川きゅんは二人分のお弁当を取り出して「あーん」とかするの)


 まず、赤川の弁当は一人分。そして、俺の弁当は俺が昨日つくった晩御飯の残り物だ。だいたい残り物を弁当につめられることを考えて晩御飯をつくっている。


(そうだった。あっきー無駄に家事スキル高いんだった)


 これはスルーだ。スルーをしよう。俺はそう決めた。


「んで、話しがあるんだ。ちょっと信じてもらえないことかもしれないけれど、赤川だから話すんだ。バカにしないでくれよな」


「するもんか。安心て。どんなに荒唐無稽な話しでも受け止めてあげるよ。あっきーの話すことだったらね」


(すごい。無償の愛なのね。これがアガペよ)


 ってか、アガペなんて授業以外で聞くことなんてないからね。よくそんな単語知っているね。


(常識でしょう)


 どこの常識だよ。ってか、スルーするって決めたのについ天使ちゃんに引き寄せられてしまった。仕切り直して。


「なあ、赤川。俺な事故以降変な声が頭の中で聞こえるんだ」


(あれだけ天使って言っていたのに変な声なんだ)


 そう言った方が伝わりやすいかと思っただけだ。そこ掘り返さない。だが、赤川は真剣な表情で俺を見ている。赤川が言う。


「え~と、それって病院で言った?」


「いや、言ってない」


「どうして。だって、それって分裂症とかってやつじゃないの?」


「なんだそれ?」


 分裂症ってなんだ。俺が分裂するのか?細胞分裂みたいなものか?でも、あれってアメーバ―とかじゃなかったか?俺アメーバ―の仲間だと思われているのか?


(ちょっと何バカなこと言っているの?)


 赤川がスマホで何か調べている。


「ああ、こういう事みたい。え~とね、調べたままだからあれだけれど、統合失調症っていう症状があるらしいんだ。統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患なんだって」


 ってことは、天使ちゃんの声は俺の妄想だというのか。こんな突飛もない発想が実は俺の中から生まれているのか?


(それはおかしいわ。いや、おかしくないのかも。この発想があっきーの中から生まれるのなら、あっきーは間違いなく赤川きゅんが好きなのよ)


 ないな。


「赤川。それ違うと思うんだ。もうちょっと詳しい症状わかるか?」


「いいよ。ちょっと待ってね。読み上げるから。症状には幻覚と妄想があるらしい。まず幻覚だけれど、実際にはないものが感覚として感じられるんだって。統合失調症で最も多いのが、聴覚についての幻覚、つまり誰もいないのに人の声が聞こえてくるの」


 おいおい。マジかよ。確かに声が聞こえる。まあ、天使ちゃんのかわいい声だけれど。赤川が続けて説明してくれる。


「その幻聴は、あっきー本人を批判・批評する内容だったり、命令だったり本人を監視しているような内容が代表的なんだって」


 うん、違うな。どちらかというと変な方向に導こうとする。


(変ってどういうことよ。かっこよく変身できたことも変だったことなの?)


 ごめん。それはマジで感謝している。でも、赤川と俺をくっつけようとするのはマジ勘弁してほしいよ。


「赤川。俺に聞こえる声は俺を導いてくれるんだ。基本的に天使みたいなきれいな声だし、その声に従っても悪いことは起きない。むしろテンションがあがるんだ。だから幻聴とは違って俺とは別人格の誰かの声に聞こえるんだ」


 そう言うと赤川が黙り込んでいる。そりゃ、俺のいう事なんてそう簡単に信じられないと思う。そう思っていたら赤川がこう言いだした。


「今もその声が聞こえるの?」


「ああ、聞こえる」


(うん、ばっちりだよ。あっきーの心もすごくわかる。赤川きゅんに否定されるのをぶるぶる震えているの。不安だから抱きしめてって)


 思ってないから。


(冷たいな)


「じゃあ、もし、その声が他人の意志だとするならば、あっきーが知らないことを質問して、そのあっきーが聞こえる声に従って答えたらどうだろう」


「赤川、流石だな。その手があったか」


 俺はつい赤川の手を握りしめた。そう言えば、狭いところに二人で座っていたんだ。やたらと顔が近い。なんでか赤川の頬が赤く染まっているように見える。ヤバい。むっちゃかわいい。


(そのまま押し倒しちゃえ)


 ありがとう。天使ちゃん。君のその声のおかげで正気に戻って来られました。あ~よかった。雰囲気に流されるところだったよ。


(ちぇ)


「じゃあ、質問するね。今期のアニメの最高傑作は?」


「ってか、俺アニメ見てないぞ」


「あっきーじゃなく、その声に聞いているの」


「あ、そっか。じゃあ、ちょっと聞いてみる」


 といいながら頬を膨らませている赤川は本当に女の子みたいだ。そういえば、赤川はアニメ好きだったな。


 俺が見ないから話しができないといつも言っていた。んで、天使ちゃんに聞きたいんだけれどアニメとか見ている?


(もちろん。ここ最近は結構秀逸なアニメが多いの。作画がいいものもあれば、ストーリーが神なのもあるし、通をねらいすましたものもある。今だと異世界ファンタジーのプロトコル・ファンタジーがおすすめね。私続きがみたいの)


 とりあえず、そのプロトコルなんとかがいいんだな。


(プロトコル・ファンタジーよ)


「プロトコル。ファンタジーだってよ。どうなんだ?」


 俺にはまったくわからない話しだ。赤川が言う、


「いいね。王道だね。って、絶対にあっきーは見てなさそうだ」


「当たり前だ。俺にとって夜は家事とゲームタイムだ。だから知らん。でも、これで信じてもらえるのならお願いがある。俺の中にいるこいつが誰なのかを調べたい。協力してくれるか?」


「もちろんだよ。ただ、僕からもちょっとだけお願いがあるんだ」


「ああ、俺にできることならなんだって言ってくれ」


「ありがとう」


 赤川が満面の笑みを浮かべた。こいつって本当にかわいい顔しているんだよな。だが、男だ。


(それはでも些細なことよ)


 大きな問題だよ。だが、俺は一つ大きな問題を見落としていたんだ。それが俺にこの後降りかかってくるのだった。


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